2日目-04 夜
(日が進むほど、与えられる情報はより強烈で、鮮明なものになっていく)
「…で」
「なんで今日も私の部屋にいる」
「環境は基本的には変えないほうがいいんだ」
「すずは寂しいです。怖いです。一人でも多くの人と一緒にいたいです」
「私たちは殺し合いをしているのよ」
「…でも、わかりあえるかもしれません。その時まですずはあきらめません」
「zzz」
しばらく時間がたち、すずの小さないびきの音が聞こえてきた。
「ところで」
宋史が話しかけてくる。
「なによ」
「人を殺したって言ってたわりに、ずいぶんさばさばとした就寝だね、
って思って」
「…」
「深い意味はないけど、なんとなく思ったことを口に出す癖があるんだ」
「その癖は早く治した方がいいわ」
「…」
「…」
「…頭を使いたくないの。これ以上するんだったら本当に出て行ってもらうわよ」
「…ごめん。疲れてるんだね」
「疲れてるわよ」
「申し訳ないけど、これからもっと疲れることが続くと思うよ」
「…ね、少しでも生き残るために誰もが誰もの境界に踏み込まないことにするルールを
私たちの中で作ってしまえばどう?
それでゲームマスターを見つけ出して…」
「…個人情報が毎日どんどん漏れていくよ。しかも生年月日のようなどうでもいい情報じゃなくて、より厳正に扱わないといけないレベルの個人情報がね」
「…あっ」
「漏れる情報のレベルは日に応じて強くなっていく。それに、果たしてみんな耐えられるかな?」
「…」
「決着が早く着くに越したことはないんだ。僕にだって恥ずかしい過去はある。
それを他人に見られたくないという思いだって、君たちと同じさ」
「…そう」
「…これから、どうなるんですかね…」
すずが寝言を言っている。
「どうなるのかしら…」
「まぁ、一つ言えることは、無駄なことを考えても無駄だということさ。
それでも、人間は考えすぎてしまう生き物だけどね」
「…」
「どうなるのか。言うのはたやすい。これまでよりももっと大きなレベルでの問題が生じて、それは自分にも被害の及ぶレベルになるということさ」
「…」
「でも、そうなったときに考えるしかない。予定調和に物事は運ばないんだから、
アドリブで、考えるしかない」
「…うん」
「あと、もう生きて元の生活に戻ることはできないかもしれないよ」
「…うん」
「悲劇的な声をあげたりしないんだね」
「…失うものはないから」
「…それは僕もきっと同じだ」
「寝るわ」
「そうだね。おやすみ」