エピローグ
得意先回りと陣営回りは似ている。
違うのは、その数だ。
べつにこの私【乗村清三】が候補として選ばれなくてもよい。
政治に興味ない市民が、少しでも興味を持ってくれればそれで十分だ。
「社会を動かすためには政治を動かすしかないのです!
そのために、どうか投票することで、あなたの一票で政治を少しずつ動かしましょう!」
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わたしは主婦をしながらパートで食いつないでいる。
SNSで知り合った、ちょっと気の弱いけど優しい男の人と結婚して。
ちょっと家事は苦手だけど、
ちょっと職場ではまわりにいろいろ押し付けられて泣いてる弱い人だけど、
ちょっと趣味のアニメには無駄遣い癖があるけど、
…わたしがレイプされたことを受け止めてくれる人だったから、
わたしには、それだけで十分だった。
私【白戸由衣】はこの人のために必死になって生きていく。
やがて子供ができたら、男の子ならこう言おう。
「女の子にやさしくできる子になってね」
女の子なら…
ううん、それは心にしまっておこう。
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『正論』はこの世界では歓迎されない。
分かりきったことなので、上司には言わない。
「例のプロジェクトだけど、宋史くん、どう思う」
「はい。反対派が動く前に、いかに説得力のあるスピーチで
周辺住民を味方につけれるかが勝負です」
そんなプロジェクト最初の時点から破綻しているのだからやるなというのが正論だが、
それは言わない。
なぜなら、社会人だから。
【佐々木宋史】は社会に適応して生きていく。
つまり、自分の意見と社会の意見との相違を、肯定して生きていく。
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「あなた、洗濯物干してきて~」
「ハイハイ、世話が焼けるな」
「それが終わったら料理作って~。私仕事で疲れてもう限界だから」
「わかってる、わかってる」
「ほんとあなたには感謝してるわ~。あなたいないと私生きれないもの」
「はいはい」
俺は【永代弘樹】。
金と暴力とセックスがこの世のすべてだと信じる男。
「愛してるわよ、弘樹」
「はいはい、おれも愛してるよ」
ただし、
愛と言うよくわからない概念の前ですべてどうでもよくなる、そんな単純な男だ。
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超能力であろうと、マジックであろうと、
見ている人からすれば同じだ。
自分には分からない不思議な事。
それを起こせる人。
ただ、マジシャンになるためには努力が必要だ。
その代わりに、報われる。
評価してくれる、そんな世界がある。
わたしは超能力者にはなれなかった。
でも、努力して人の気持ちを考えることはできる。
わたしはそれでいい。
わたし【早坂幸恵】はすべてをテレパシーすることはできないが、
人の痛み、それはきっとテレパシーできる。
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愛と言うものは言葉にすればそれはたやすい。
が、現実になると私たちはいろいろな所で縛られて生きている。
誰かを思えば、誰かを縛ることになり、
誰かに思われれば、誰かに縛られることになる。
だから私はほかに誰もいない山の奥で、この人と二人暮らしている。
ぐるぐるにぐるぐるに。二人の糸を巻いて巻いて巻いてほどけないように。
私、【鏡原千里】はきっとそうして生きていく。
今までも、そしてこれからも。
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俺の名は【後藤健二】。
取り立てて語ることもなく、普通に生きている。
ただ、あえて言うならば、
あのゲームの後、他人に少し優しくなったかもしれない。
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「すず~次はどこ行く?」
「あわわ、このままでは全部回り切れないのです!
せっかく貴重な時間を使って、旅行に来たというのに!」
私は寂しがりだ。
「でも、あんたは行動的よね」
「行動しない限り何もおきないのです!それがマイ持論ってやつなのです!」
私は空元気だ。
「変わってるわよね、あんた。
でも、そういうところ、私好きよ」
「あう、そんなこと言われると照れるけどうれしいのです!」
私は人に飢えている。
優しくされることに飢えている。
だから、私、【国枝すず】は、今日も人と一緒にいる。
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すべてがタイムリープして、幸せになれる世界線。
そんなものがあるとすれば、何を望むだろう?
やっぱり、私は普通の暮らしかな。
いや、まぁ、私は普通なんだけどね。
普通に起きて普通に朝食食べて。
普通の男の人と普通に暮らして。
普通に子供産んで。普通に働いて。
そんな、普通の人生。
どこにでもありそうで、どこにもないもの。
それを手に入れた私こそが、このゲームの王者。
そう、私はゲームマスター。
いまだに人を殺し続けている、ヴィクトリアの王女。




