6日目02-理解
「さて、どうしたものかしらね」
「姉さま、ひとつすずに言わせてください」
「いや」
「言わせてください」
「なによ」
「あのですね、すずは考えていたのです。
わかりあえる方法を」
「わかりあう?」
「そうです。すずは争い事が嫌いなのです」
「うん」
知ってる。
「さくら姉さまにわかってもらうことはできると思うのですが、
残念ながら、すず、さくら姉さまのことがわからないのです」
「そうでしょうね」
「これはポンコツ知能のすずが悪いのです。
なので、すずは、この手を選ぶのです」
「何するつもり?」
「すずはすべての人が幸せになれる世界を目指しているのです。
だからこそ、自分が傷つき、自分が馬鹿である道を選んでいるのです。
それもうまく見せないようにカモフラージュしているつもりでした。
でも、姉さまにはきっと、見破られているです」
やばい。
焦った。
「あんた、何するつもりよ!」
つい、口調がきつくなる。
そんなの。
そんなの、つまらないじゃない。
「すずは誰とも争いたくないのです。
平和主義者なのです。
全ての人がハッピーになれるような未来がすずの理想なのです」
「こら!
そんなの卑怯よ!
なんで自ら死を選ぶのよ!私が殺してあげるって言ってるのに!」
「姉さま、涙出てるですよ」
言われて、気づく。
「姉さま、意見交換の後、なんで戸惑ったです?
なんで即座にすずを殺そうとしなかったです?
すずが死ぬことが、姉さまにとってつらいことだからじゃないですか?」
「そんなわけない!」
叫んでいた。
悔しいぐらい、読まれていた。
「姉さまはサイコパスなのに、泣くですか?」
「サイコパスだったら泣いちゃいけないの?」
そもそも、サイコパスというのは、まわりがそうつけているだけのレッテルだ。
「すずはうれしいのです。
姉さまが涙してくれたこと、それがうれしいのです。
きっとあの夜の思いも、今の涙も、ほんとうの感情なのです」
すずも泣いていた。嬉しそうに。
「ふざけないでよ!私に殺させてよ!」
「嫌なのです。
姉さまにはすずは永遠に殺せないのです。
永遠に、すずは生き続けるのです。姉さまの中で」
「いやいやいやいやいやいやいや!!
やめて!!」
「姉さま、先ほどこう言いました。
勝っても負けても、恨みっこなしだと」
「ずるい、そんなのずるいよ…」
こんなところで論破されてしまうなんて。悔しい。
「姉さまに最後の言葉なのです。
すずの分も、苦しんで生きてほしいのです。
それが、姉さまに与えられた罰なのです」
すずは、そう言い残して息絶えた。
「…ふざけないでよ」
そして、残るのは私ひとり。
「こんな結末だっていうの!?
デスゲームだから最後に残るのは一人だって、わかってたけど、
こんな感情で終わりにしろって言うの!?」
誰にでもなく、叫んでいた。
しかし、叫ぶことは空しいだけだとわかり、
私は、私は、
ただ、ただ小さく言葉を紡ぎ出すことしかできないでいた。
「…私は、分かってほしかっただけなのに」
私が存在していることを。
私と言う人間がいることを分かってほしかった、ただそれだけなのに。
もう、私を理解する人すらいない。
よろめきながら、私は呟いた。
「…ヴィクトリアの財宝」
そうだ。
何でも願いが叶う財宝。
それはもう、私の手の中にある。
なら、それを使おう。




