3日目03 理解
「いやああああああああああああああああ!!」
すずは、ぽけーっとしていた。
(あ、あれ??)
想定外。
私も、面食らっていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁやめてやめてやめてやめて
やめてやめてやめてやめてやめて!!」
発狂したのは
由衣だった。
「えーと、どういうことかな、さくらちゃん?」
「ええと…
しねって言ったら泣くのがこいつだと思ってたんだけど…」
っておい!!
「なるほど。しねという単語に過剰反応するのが由衣ちゃんなんだね。
そして、それはなぜだい、さくらちゃん?」
「あんた、自分の言ってることがわかってるの?
それがどういう結果になるか」
「言い出しっぺはきみだよ、さくらちゃん」
「うっ」
これは不幸な事故だ。
だが、確かに私のせいなのは間違いない。
「昨日のことも言い出しっぺは君だよ、さくらちゃん。
きみは人殺しが好きなんだね」
(…)
こいつ、まさか私のことを知っている?
それとも、ただのブラフ?
まぁいい。分からないことは気にしない。
「残念だけどこれ以上は言わないわ」
「じゃあ、この場の始末をどうつけるつもりだい?」
…本当に嫌な奴だ。
「…私から説明するわ」
「由衣!」
「いいの、さくら。もとよりあのNGワードを出された時点で
生き残れるなんて思ってはいなかった。
私はね、小学3年生の時に、小学6年生の盛りのついたクソガキにレイプされたの」
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痛かった。
辛かった。
泣き叫ぶことしかできなかった。
悔しかった。
自分が汚されたんだ、ってわかったのは、レイプされたあと、
ほかの女の子が私を見つけた時だった。
そのときね、王子様に出会ったの。
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「…なるほど。それがあの王子様、というわけか」
健二が口にした。
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あなたは…?
わたしは、あなたをおまもりします。
わたしは、もう…。
いいですか?あなたの受けた傷は、あなたの受けた傷ではありません。
わたしの受けた傷です。
もういちど言いますよ?あなたの受けた傷は、あなたの受けた傷ではありません。
わたしの受けた傷です。
…。
あなたは汚れていません。汚れたのは、わたしです。
何度でも言いますよ。あなたは汚れていません。汚れたのはわたしです。
…そうだったんだ。
さぁ、復讐の時間です。
復讐。
わたしが、わたしを汚した人間に罰を与えます。
罰。
そしてわたしが傷つきます。あなたは傷つきません。
ありがとう。
礼は言わないでください。わたしはあなたのために生まれたのだから。
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「わたしは私の中にもう一人の存在を作ったの」
由衣が続ける。
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死にたいって思った。
死ぬ前に、殺そうって思った。
それで、殺した。
しねしねしねしねしねしねしね、何度も言って、殺した。
王子様が殺した。
殺してくれた。
…はずだった。
でもね、殺してるうちに、王子様じゃなくて、私になっていたの。
わかるかな?
私が結局殺したの。
そりゃそうだよね。ほんとに汚されたのは、わたしなんだから。
そして、わたしは罰を背負うことになる。
しねっていう、自分の声が、自分に向かってくる感覚が残ったの。
わかるかな?
私がしねって思ってた対象は、相手もだけど、自分もだったの。
そして、相手が死んだあと、すべての死ねって言葉が
自分に突き刺さるようになったんだ。
わたしは人前に出ることができなくなり、
すべてのことを王子様が引き受けてくれた。
でも、しね、そういわれるとわたしは、我慢できなくなってしまうの。
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「由衣、ごめんなさい、わたしそんなつもりで…」
「いいの、さくらは悪くない」
「悪いのは、私なんだよ。全部私のせいなんだ」
由衣はそう言った。
「そんなことない!」
「さくら?」
「由衣は何も悪くなんかない!
悪いのはそのレイプした男じゃない!」
「ちがうよ、私が悪いのよ、
小学3年生の時に色気づいた格好していた私が…」
「由衣は…」
「そういうことにさせてよ。
そういうことにしないと、わたし、この現実を受け入れられなかったんだから」
「…」
「わたし、ここで死ぬと思う。
でも、すべて、わたしのすべて、分かってもらえて、幸せだった。
ありがとう」
「由衣…」
涙が出てきた。
「さくら、あなたは勝つわ。
なんとなくだけど、そんな気がする。
だから生き残って。
私の分まで生き残って…」
そして、由衣は血を吐いて、その場にうずくまった。
「由衣!!
由衣!!
いやあああああああああああ!!」
由衣は、でも、すごく澄んだ表情をしていたように思えた。
「そしてこのゲームのミソ、3つめ。
敗者は、死と引き換えに、『理解してもらえる』という、
この上ないメリットを味わえる」
…。
この状況で冷静に解説するコイツに非常に腹が立った。
コイツ殺そう。
決めた。




