後編
☆☆☆半年後
ワシは有能だ。王都の社交界から、引っ張りだこ。寄付や投資の話を受けたが、
「さすがに、金貨80万枚でも、底が見えてきた。領地に行くか」
しかし、護衛騎士達と、領地に向かうと、トンデモない物が見えてきた。
ワシの肖像画だ!
「ヒィ」
「ナギル男爵様に一礼!」
皆、ワシの肖像画に礼をしている。
急いで、屋敷に向かった。
何だ。家紋の旗の隣に、赤旗もあげているな。
「サリーよ!一体、どうしたことだ!」
「はい、まず。領内の下らない商会を潰したのだからね!領内へ留学生を受け入れるための商会なんて、不正が生じるだけじゃない!」
「何だと、伯父上の商会を潰したのか?」
我が一族が領内で主要な商業を独占していた・・・
潰したリストを見たが、全て、一族の者が、領政府から、仕事を請け負って、行っていたものだ。
「ということは、市民議会は?」
議員は、男爵家の一族の長老たちで構成されていたから、当然に、
「会議中、いびきを立てて寝ている老害ばかりだったからね。機能してなかったからね。潰したからね!代わりに、サリー集中制にしたのだからね!」
サリー集中制!
つまり、サリーが独裁政治(集中制)をすることである。
「あああ、なんて言うことをしてくれたのだ!」
「いや、しかし、お金はどうしたのだ?」
「今は無税状態だからね。執事が男爵の白紙委任状持っていたから、市民の財産を供出させて、代わりに株券をあげたからね。
利益が出れば配当が出るからね!」
「しかし、どんな事業をしているか」
「この領、唯一のゴーレム工房に全資産を一点集中したからね!安く製品が作れて、王国寡占状態だからね!」
意味が分らないが、いいだろう。金さえあればな。
「サリーよ。滞在費が不足している。もっと、お金を出せ!」
「無理だからね。サリー会議の結果、1年で金貨80万枚だからね。これ以上、出せないからね!」
何だよ。サリー会議って、
「男爵命令だ!」
「フン、無理だからね」
「分った。護衛騎士たち、サリーを拘束しろ!」
「「「畏まりました!」」」
「抜かったな。護衛も無しとは、貴族は最終的にこれが出来るのだ。ウハハハハハハ!」
ドカン!
その時、屋敷の天井が、割れ。赤い邪竜が姿を現した。
「フン!追放と言えば、素直に追放されるのだからね!ハピアちゃん。行くのだからね」
「分ったぞ。その願いを叶えよう」
「「「ヒィィィィィィ」」」
サリーはドラゴンの背中に乗って、去って行った。
「サリーよ。いいのかのう?」
「大丈夫だからね。孤児院は、聖王国に引受けてもらったからね。上納金と一緒にだからね。私は守りたい者以外は興味ないからね!」
「もったいなくないか?我の使い方、間違っておらんか?」
「フン、投資って、誰かが損をする人がいるから、成り立つじゃない!ハピアのやり方と同じじゃない!」
「そうか、誰かが不幸になるから成功する人もいるのだな。ところで、この領は、いつまで、もつ?」
「何にもしなければ、1年じゃない」
そして、
サリーとハピアは、ナギル刑務所に降り立った。
独裁政治には、政治犯はつきものだ。
急な改革に反対した執事セバンも収容されていた。
刑務所と言っても、破棄した農村に柵で囲って、住まわせているだけである。
「「「ヒィ、ドラゴン」」」
「「「処刑される!」」」
「ええ、審議の結果、皆様は、無罪と判明したじゃない?だから、補償金と、ナギル領民の生活支援金をまとめて払うじゃない!
この手形を受け取るじゃない。
換金は早めにするじゃない!」
「書記長、いったい何故?」
「フン、もうすぐ、バブルが弾けるじゃない!そのお金を、貯金しようが、博打に使おうが、どうでもいいのだからね!」
サリーは、政治犯を釈放すると、
ドラゴンと化したハピアとともに、去って行った。
・・・我は、邪神だったのじゃな。思い出した。『邪神でもいいわ』
「ゴッツイのう~」
「独裁制をやるには、社会主義が最も、効率がいいのだからね。資本主義の、部分社会としてしか社会主義は成立しないのだからね」
「何じゃそりゃ」
「フン、市場経済が導入された独裁国家を真似たのだからね!」
「まあ、いいわ。次はどこに行くのじゃ」
「これから、経済成長をする辺境に行くのだからね!」
サリーと、ハピアは、共に去って行った。
☆☆☆数日後、王宮
「殿下、書簡が届きました。ナギル領、赤い同志よりです」
「ふむ。開けてみろ」
「メルダ。君は、この案をどう思う?」
「ええ、バブルが弾ける。ナギル領は蜃気楼・・・乗るべきだと思います。引き続き。黒幕を探しましょう」
「赤い同志とは、黒幕だな。先日、帳簿付けが一人クビになったと、カゲからの報告があったが、違うだろう」
これで、王国の闇を一掃できる。
最も、闇を払っても、また、闇は湧き出てくるが、一時の平和か。
「よし。陛下に意見具申と、ナギル男爵を誘導しよう」
・・・・
☆☆☆王都裏組織オスカー商会
男爵に、裏組織が接触してきた。
王国のカゲにより誘導された。
男爵はことの重大性に気が付かない。
「ヒヒヒヒ、ナギル男爵、裏組織の資金を、投資させて下さい」
「ああ、良いぞ。金利は~え~と、まあ、10%じゃな」
・・・まあ、市場税と同じでいいか?
「ほお、そんなに・・・それで結構です」
マネーロンダリングをするぜ。しかし、1%が相場だが、大丈夫か?
☆☆☆王宮
「やあ、ナギル男爵、この救貧院に、寄付をお願いしたい」
「これは、王太子殿下、娘は、王都に不慣れです。案内をお願いしたいですな」
「ああ、勿論!」
「ナギル男爵、この孤児院に」
「ナギル男爵、この貧民救済事業に」
度重なる王太子の寄付の要請に、男爵は、官位を要求するが、
「あの、ワシの役職は、どうなりましたか?」
「ああ、協議中だ。すまない。待たせるお詫びに勲章をあげよう」
「10個目ですが、まあ、良いでしょう。早くお願いしたい。ワシのような有能は者に官職に就けないとは、王国の損失ですぞ」
ペコ「申訳ない」
・・・フフフ、今や、王太子でも頭を下げるワシの権勢よ。
まあ、良い。お金は沸いてくる。
しかし、1年後、
「何だと、収益がない!マイナスだと!」
「おお、そうじゃ。大変みたいだな」
「伯父上、しっかりして下さい。折角、あの異世界人を追い出して、役職に就けたのに」
ライバル商会が現われ、
土木工事用ゴーレムが発売された。
操縦席もあり、快適で、一台あれば、ナギル産のゴーレムはいらなくなる。
「何だと、外国製の安いゴーレムのアームも入って来だと、誰も対策を取らなかったのか?
誰かサリーを呼び戻せ!」
収益があるが、少ない。
役員報酬や、領民に支払う生活支援金が払えない。
支出が圧倒的に多い。
こうなれば、
「王太子殿下、少々、業績が悪化しました。融資の口添えを・・・」
プイッ
「あれ?」
「無礼者。上位者に話しかけるとは!」
バチン!
騎士に殴打された。
「ウググゥ~」
「次からは、気を付けられよ!」
おかしい。そう言えば、息子と娘の縁談も一向に進まなかった。
飛ぶ鳥を落すナギル領なのに、
子爵の出戻りや、準男爵家の道楽息子しか来なかった。
もしかして、こうなることが分っていたか・・・
やがて、夢の楽園と言われたナギル領は、無政府状態になり。
王太子率いる騎士団により。制圧された。
裏組織の資金も、全て溶けた。
異世界で内政チートが立て続けに起るが、すぐに消える。
中世国家において、資本主義が未成熟なため。大混乱が生じると予想されるから。王国によって消されているからかもしれない。
最後までお読み頂き有難うございました。