前編
我は神だ。最初の記憶は、少女の声だった。
「・・・女神様、お願い。弟を助けて、もう、一週間、うなされています。どうか。神様、いえ、こうなったら、邪神でもいいわ」
ボン!
少女の前に、煙とともに、赤髪、緋色の少女が現われた。服は赤黒いドレスである。
「キャア、貴方様は?」
「我は神だ。さあ、願いを叶えてやろう」
・・・・
「赤髪のお姉ちゃん。有難う」
「有難うございます。弟は回復しました。貴方様は、女神様にしては、年少ですね。お名前は?」
「うむ。名はない。名をつけるがよい」
「では、皆を幸せにするから、ハピア様で如何でしょうか?」
「気に入った。しかし、タメ語でいいぞ!」
我は少女の家で楽しく暮らした。
やがて、我の評判を聞いて、村人が願いを叶えて欲しいとやってくるようになった。
「クワがもう使い物にならねえだ。中古でいいのでほしいだ」
「ほお、ささやかだのう。新品のクワをやろう」
ポン!
「有難うごぜえますだ」
やがてのう。
村人たちが、ワシのために立派な祠をたててのう。
「ハピア様を独占するなんて、許せない!村で管理するだ!」
「ハピアちゃん!」
「赤髪のお姉ちゃん!」
少女と弟と引き離された。
「よい。よい。狭い村だ。毎日会えよう」
やがて、数ヶ月経ってな。
村人たちは少女の一家をのぞいて、誰も働かなくなった。
「ヒヒヒヒ、ハピア様、村一番の器量よしのマリアさんと結ばれたい。願いを叶えて下さい」
「よし、わかっ・【やめて!】」
少女が割って入った。
「はあ、はあ、はあ、弟は助かったけど、子ヤギのメイちゃんが、その日に亡くなったのって・・・」
「ああ、そうじゃ。生命力を弟殿に分けてやったのだ。幸せとは他者の犠牲によって成り立つものだ」
「それじゃ、もし、サムさんの願いを叶えるとしたら」
「ああ、マリア殿の婚約者を殺して、気持ちを操作する」
「いらない・・・ハピアちゃん。村から出て行って!」
「そうか。その願いは、犠牲無しですむぞ。分った」
ボン!
「「ヒィ」」
「ハピアちゃんは、もしかして・・」
「今まで、世話になったな。元気でな」
我は空を飛び。人の多そうな場所を探した。領都と言うところは人が多そうだ。
・・・・・
そして、そういう理由で、不幸なお前のところに来た。
「願いを叶えてやろう。さあ、欲望を言うが良い」
「・・・あ、そう。じゃあ、お芋の皮をむいて」
「うむ。任せろ」
・・・この子、おかしい。7.8歳くらいなのに、年齢は6ヶ月と言う。目は緋色で、髪は赤髪?目立つ。
赤黒いドレス?全体に赤!の印象が強い格好をしているけど、う~む。あたしもピンク髪のド派手だから人のことを言えないじゃない!
「あんたお手伝いをしたから、お芋をあげるのだからね!」
「おお、供物か。これも素朴で良いな。普通に食べてみるか」
モグモグ
「うむ。美味じゃ。ところで、食事はこれだけか?貧しいのう」
「ピキー、一言多いわよ!」
「さて、本題じゃ。お前の父は行方知れず。母親も男を作って出て行ったとな。お前は12歳なのに一人だ。
ロクな教育も受けておらんが、容姿は優れている。今のまま・・・イタい!」
コン!とハピアの頭に拳骨が炸裂した。
「お前じゃない。サリーよ。サリー、これから、仕事に行くのだからね。あんた付いてきなさい。取り分は、働きを見て決めるからね」
☆☆☆市場、催し物スペース
ポロン♪ポロン♪
「やあ、素敵な令嬢たち、会えて嬉しいよ」
「「「「キャアアアアア、イケメン吟遊詩人6人衆よ!!」」」
「はあ、はあ、はあ、ハンス君――――こっち向いて!」
・・・・
「なあ、サリーよ。ここは全然人が来ないな。大人しく孤児院に行っては・・・すまん」
そうか。孤児院は・・・
「フン!始めるからね!その器を持って立っていてね。投げ銭が来たら打ち合わせ通りだからね!」
「ふむ。『ナイス投げ銭!』というのだな」
「は~い。サリーの異世界語りを始めるからね!あたしは前世の記憶がある!あたしは前世では平民学校の学生だった!」
ふむ。異世界人の設定か。悪くないが、ありふれているのう。
たまに銅貨一枚(100円)が入るが、
お、今度は大銅貨(1000円)か。ゴッツイのう。
チャリン!
「ナイス投げ銭じゃ!」
「キャア、素敵なマダム、有難うだからね!」
「あら、どういたしまして、姉妹かしら、可愛いわね。フフフフフ」
我は一生懸命に働いた。
話の対価というよりも、募金みたいじゃのう。
しかし、繁盛してないのう。こやつの話もありきたりだ。
鉄の鳥が飛ぶとか、もっと、ひねりが欲しい。
「ヒヒヒヒ、お嬢ちゃん。遊ばない?」
「遊ばないからね!仕事中だからね」
あまり、客層が良くない時間帯になった。マダムの買物は終わって、仕事終りの労働者たちが遊ぶ時間だな。
お、金持ちそうな男が伴を引き連れてやって来たのう。
「これ、娘、異世界人だそうだな」
「そうだからね!」
「この時間で帰らないのは親無しか?孤児だな。何故、孤児院に入らない」
「フン、経費節減でご飯が少なくなって、一番、年長の私は出て行ったのだからね。この領主は、王都の有名な聖女様が建てた孤児院には寄付して、自分の領地の孤児院の予算は削る。頭おかしいのだからね」
「何を、他の領に寄付すると、このナギル領の評判が上がる。そして、回り回って、領が潤うのだ。自分のことばかり考えてはいけないぞ」
「フン、有能な貴族は、自領を発展させてから、寄付をするのだからね。税金をあげて、他の領地に金をばらまくなんて、頭がおかしいのだからね!」
「・・・不敬罪だ!引っ立てろ!」
我とサリーは、館まで、連行されたのじゃ。
最後までお読み頂き有難うございました。