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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
幕間3 デイブレイクジェミニ
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デイブレイクジェミニ 1

 一つ目の彗星の破壊から数か月。

 残り二つの彗星の破壊するための準備が進められる中、戦争に巻き込まれる市民の避難もまた星軍の重要な仕事として進められていた。


 火力と速力を重視した第三世代ボルックス4444の指揮室内。

 モニターには小惑星表面に作られた卵型のコロニーが二つ見える。


『カストル4444より通信、お嬢にです』

「なんだ?」


 他の船と交信を行っていたオペレーターがやや困惑した様子で、スクロールデバイスで週刊雑誌の記事を読む若い艦長へと通信の内容を読み上げる。


『ニギメとも呼ばれる海藻の名前は? カタカナ三文字だそうです』

「ワカメと言ってやれ」


『は?』

「ワ、カ、メだ」


『こちらボルックス4444、ワカメ』


 ふぅと息を吐く。


「でワカメが何なのさ」

『再びカストル4444から、次、縦の三番、ハナガサクラゲから作られる耐酸性で緑色の蛍光タンパク質の略称は? カタカナ四文字』


「知らん、聞いたこともないクラゲですわ。ってかこれパパ今何している? クロスワードパズル?」

『次、横の五番、生きた化石のオウムガイのラテン語での名前は』


「間違いないな、これから仕事なのに何してるんだ通信を切ってくださいまし、いま関係ないでしょう。こういう無駄な通信、物静かな副艦長さんは止めないの?」


 チューブ飲料を飲みゴミをポケットに詰め込むと艦長キーラー・リングレットは艦長席に座る。


『カストルk4444、k0444、ボルックスb4440出港準備完了』

「セレスとマケマケは?」


『客船プラネットホース、ムーンフェネクス、連絡船タキオンスピード02、ゴールドゼウス、四隻とも避難民を乗せ出港準備完了です』

「では避難を始めましょうか。わたくしの至らない指揮では頼りにならないでしょうからすべて副艦長の指示に従ってくださいな。というかもうすぐ出航時間なのに副艦長はどこですの、射撃管制室の方にでも行っているの?」


 話していると副艦長が戻ってくるが、ボルックスb4444の副艦長ではなくカストルk4444の副艦長だったため彼女を見てキーラーは驚く。


「え、あれ?」

「でもまぁ、我々ができることは戦艦級が出てきたときに敵を引き付けることくらいですけどねお嬢」


「あなたどうして? パパの船に乗っていなくていいの?」

「出航直前ですが人事異動がありまして、私が副官として第二世代ボルックスに乗船します。よろしくお願いしますお嬢」


 ぺこりと一礼すると副艦長はキーラーの隣の自分の席に座る。


「あなたうちの従業員じゃないから、わたくしをお嬢と呼ばなくていいのですよ」

「いいえ、面白いのでこのまま呼ばさせてもらいます」


「そう、勝手にしてください。面白いって何よ」

「あなたのパパ上様から、新米艦長であるキーラー様の手助けをしろと。そろそろ出航の時間です、民間船の護衛をいたしましょう」


「船はたくさんあるはずなのに民間船を駆り出さないといけない状態なんてね」

「彗星との戦争が始まって旅行産業が大ダメージで船と人手が余っているです」


「神出鬼没な戦艦級のせいで星軍の護衛なしでの移動は危険で、船が余っているのは知っていたけど。さて、ボルックス出航」


 コロニーに接岸していた民間船が港が離れていくのを見てキーラーは追いかけるように出航の指示を出す。


『ボルックスb4444出航、これより避難民避難船の護衛の任務に就きます』


 点々と小惑星が浮かぶアステロイドベルト。

 小惑星を採掘し貴金属や水、その他鉱石や結晶を掘り出すための採掘会社が家族と従業員とともに過ごしていた。

 それも彗星接近のため、その進路上に来るとみられる場所の住人の避難を行っている。


『他個所でも問題なく出航したようです』


 別の艦隊からの通信を受け予定通りに事が進んでいることを確認しキーラーは満足そうにうなずく。


「問題なさそうですね」

「ゲートまで二十時間ほど、ゆっくり行きましょう」


「これが初航海だというのに落ち着いていますね」

「前線ではなくパパのお手伝いで救助任務であること、戦闘の可能性も少ないですもの。ただ船を動かすだけの仕事で緊張する予定はありませんわ」


 徴用され改装と再塗装されていた軍艦らと違い、救助のために集められた民間船は会社ごとのロゴや塗装がそのまま残されていて最後尾を進むボルックスのモニターには明るい色の船が一列に並んでいる姿が映っている。


「こうみると民間船は足が遅いのね」

「あまり速度をつけすぎると減速にも時間がかかりますから、コストパフォーマンスが悪く速度が早ければいいというものでもないんです。速度が出ない代わりに燃費が良く大量生産されていて部品も多く整備費も安い小型の推進器を複数付けることで、もしも推進器のトラブルになったときでも航行不能になるような事態を下げ安定した経営を……」


「わかっているわ、リングレットグループは数隻のセレスを使って運送業を行っていたんですもの」

「そうでしたね。リングレットグル-プは迅速かつ安全な物資輸送を行っていた会社でしたね。エンケラドゥス級輸送船を星軍に徴用されセレス級汎用民間船で社員を守ってきた」


「とはいえ、長年の戦闘で経営は傾き続けかわいい一人娘であるわたくしですらついに星軍として働き戦場へ。本当なら順風満帆な人生を送っていたのに何もかも戦争に乱された。彗星は何なの」

「さぁ、分類的には宇宙生物、金属の体を持つ菌類によく似た生き物、もしかしたら宇宙人なのかもという話です。天空教では神の使者とあがめ、その管理下に置かれるのが正しいと布教しているようです」


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