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孤高の戦艦 4

 モニターに映る光点を見てエノグは指示を出す。


「推進器停止、艦首反転、敵に艦首を向けて」


 カノープスがゆっくりと船体を回し同じように第二世代が反転する。


『十五分後に索敵レーダーで観測できる攻撃範囲内』

「大丈夫、ゆっくり落ち着いて対処しましょう」


 実弾兵器であるレールガンの方が戦艦級の砲撃より圧倒的に射程は長い。

 しかし敵を補足するのも狙いをつけるのもレーダーだよりなので、レーダーの範囲のから出てしまうとあてずっぽうな砲撃になってしまう。


『実態弾に射程の限界はないのに待っているだけなんてもどかしいですね』

「観測衛星等で射程の補強はできるけど、数も少なく着弾までに時間がかかるから。もし撃って別の船と同じものを狙っていた、砲撃して倒したと思っていたが実は破壊しきれなかったとかおきちゃうから、戦艦級より射程が長ければそれでいいとなったんでしょうね」


 戦艦級を射程に収めるとすぐに攻撃指示を出す。


「砲撃型は」

『いないようです』


「そうなら近づいてくるものから順に倒していけば問題ないのね」


 戦艦級を冷静にひとつづつ破壊していき被害を出さずに戦闘を終わらせる。

 チューブ飲料を手にし肩の力を抜こうとしたところにオペレータから新たな敵発見の報告がきた。


『高エネルギー反応!』


 白い光の束が船体を横切りメラクとその影で守られていたシリウスが破壊された。


『メラク2970、シリウス0078の反応が消えました!!』


 大きく抉れるように装甲版がめくりあがり大破した二隻が艦隊を離れていく。

 光学カメラの映像を移すモニターが白く瞬き目がちかちかとしながらエノグは状況を確認する。


「何今の……。何が起きた!」

『レーダに新たな反応、接近中の物体あり! 大きい!』


 メラクごと巨艦であるシリウスが破壊されたことでエノグだけでなく指揮室内にも動揺が広がった。

 光学モニターでも小さくだがとらえることができた、形を整えられたような五角形の塊の影。


「何あれ、新型? ニンニク……う~ん? どちらかというと剥いたミカンみたいね、ふざけた形。他の戦艦級は?」

『破壊しました。あの大きなものだけです』


「撃って当たる?」

『レーダー範囲外、ですがあのサイズなら狙って当てるのも無理ではないようですが』


 巨岩の表面にははびこった菌糸が血管のように浮き出ている。


「ただ大きな戦艦級が五つ集まったってだけじゃないよね。割れた時に新型が生まれたと考えるべきなのかしらね。射撃管制室に直接狙って撃たせて!」

『了解です』


 指示を出していると迫ってくる巨岩に動きがある。


『高エネルギー反応!』

「また撃ってくる……あのサイズは防御陣形では防げないかも、いそいで散開! とにかくまとまってはダメ、離れなさい。艦隊に伝えて!」


 巨岩が内側から何かに押し出されるように膨らむ。

 その膨らんだ岩の隙間に巨大な瘤が見えた。


「巨大な砲塔!」


 放たれた白い光に飲まれてボルックスが蒸発する。

散開していたため巻き込まれたのは第二世代一隻だけだったが白い柱の通り過ぎた後に艦艇の姿はなかった。


『ボルックス1177反応ロスト』


 砲撃後は瘤がしぼんだことでまた種のような形へと戻り、砲撃を行った反動で巨岩は減速し艦隊との距離が離れる。


「またこの船じゃなかったか……いいえ喜んではいけない。この船が攻撃されていない原因は?」

『なんとも。憶測ですが、こちらのそれより強い艦隊通信用の広範囲の電波をキャッチしているのでは』


「そういうことなのね、すぐ無線封鎖を! これ以上……被害は出せない」


 エノグの頭の中に他艦を囮にする戦法がよぎったがその考えは黙って飲み込んだ。


『それでも索敵レーダーや射撃管制レーダーで補足している以上、相手に位置はばれてしまいます』

「正確な狙いができなくなったことだけを祈りながら戦いましょう」


 エノグが覚悟を決めた時、別のオペレーターから歓喜混じった声で報告が入る。


『囮となりに離れた第三世代帰ってきました!』

「よかった、すごく良いタイミング!」


 戻ってきた第三世代のレーダー等の電波を感じ取ったのかエノグ達を追っていた巨岩は方向を変えた。


「いけない、こちらの射程外から攻撃してくるから注意せよと、すぐに情報を共有! まとまっていてはいけない!」


 情報を受け第三世代たちは陣形を解き分散し砲撃を行い、集中砲火で巨岩を破壊しにかかる。

 他に戦艦級がいなかったこともあり巨岩のサイズ感がわかっていなかった。


「……思っているより何倍も大きいわね」

『宇宙基地とほぼ同じくらいの大きさです』


 砲撃のために膨らむが岩の隙間から膨らむ胞子嚢に攻撃を行い砲塔を潰そうとする。

 しかし強引に膨らみ続け放たれた砲撃でカノープスを一隻大破させた。


 少しずつ岩石を砕いていき割れた個所からの一斉砲撃を食らわせ、いくつかの砲撃で被害を出しながらも巨岩を排除する。


『カノープス三隻、アルタイル三隻がやられました』

「うぅん」


 巨岩との戦闘が終わりエノグは通信をカゼユキにつなぐ。


「すぐ戻ってきてくれて助かったカゼユキ君」

『前線からの報告だ、他の艦隊は大半が壊滅に近い大損害を受けている。アルテミス艦隊とサジタリウス艦隊は第一次攻撃時に半数以下まで減らされた』


「そうなの……フトとアカツキ君は無事かしらね……。ともあれ何度も言うように生きて帰らないと確認しようがない、今は乗り切るしかできないの。ゲートまであと少し、頑張りましょう」


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