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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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戦いをもたらすもの 4

 脱出ポットを回収し引き返すカストルの行く先に白く大きなリング状の構造物が漂っており、二隻はその輪をくぐる。


 長距離を移動できる巨大なゲートをくぐると目の前には人が住めるようにテラフォーミングされた星、火星が眼前に広がった。

 カストルは星には向かわずその周りに浮かぶコロニーへと向かう。


 無事救助されたポットの一つの中にいたアカツキたちは、火星周辺のコロニーへと到着しポットが作業艇の手によって船舶の搭乗口へと連結させられハッチが開く。

 冥王星のコロニーと同じ無重力の宇宙港、しかし外観はおおよそ同じでも所有する国ごとにデザインは異なっている。


「ようやく、ついたか。同じ姿勢で座りっぱなしで体痛くなったな、どこだここ?」

「マーズアメリカ、火星のラグランジュコロニーだね。向こうに名前が書いてある」


 港を見回し壁にある広告や人の往来を眺めてカゼユキは言う。

 冥王星コロニーでは細い通路を手すりをつかんで進んでいたが、このコロニーの通路は広く移動手段は大きく床からバーの生えたエスカレーターがどこまでも下へと延びている。


 港はガラス張りに部屋が区切られており、透明な壁の向こうで事故の取材にやってきたマスコミや負傷者を搬送する救急隊員が行きかい、警備員のいる規制線の向こうは騒然としていた。


「このまま火星に降りれなさそうだな」

「浮いているのはどうもなれないね、早く地に足を付けたいよ」


 アカツキと母の会話、その隣でフトが眠っているアセビを抱えて騒がしい報道陣のほうを見ている。

 港に人が増えてきたことで報道陣は警備員たちによって追い払われていく。

 荷物をアカツキに任せカゼユキは人数分の飲み物を買いに向かった。


「事情聴取とかあるだろうし火星に降りるには軌道エレベーターのある火星の港に行かないといけないね、まぁ何日かはこのコロニーに滞在することになるでしょう」

「さて、入国申請してないから港からは出られないね。今日は野宿か、この年で野宿することになるとはね」

「あ、そうでした。アセビのおむつとかどうしよう! 宇宙港にデパートか入ってるかな?」


 次のカストル砲艦も戻ってきたこともありさらに避難者たちであふれかえるロビー、アナウンスがエレベーターを下し下へと降りることを推奨している。

 少しして買い物袋を持ったカゼユキが戻ってきた。


「みんな、とりあえずのどが渇いたでしょ。飲み物と売店で軽い軽食買ってきた。ほかの人たちも買いに来てて種類は選べなかった」

「お帰りカゼユキ、とりあえず下に降りるか? 港からは出られないけど人口重力はあったほうが落ち着くだろ」


「そうだね、ご飯を食べるにしろトイレ行くにしろ重力はあったほうがいいからね。移動しようか、母さんたちもそれでいいよね」


 四人は動くバーにつかまりエスカレーターを下りながら、アカツキはスクロールデバイスを広げる。

 ニュースは新しいものが次々と更新されておりそのほとんどは戦線後退と冥王星コロニーの避難の様子、そしてアカツキたちが体験した民間事故の報道。


『星軍からの発表です。彗星は太陽系内に入ってなおも減速を続けていると、しかし代わりに戦艦級と命名された一千メートルクラスの小惑星群を生み出しているとのこと。またの一部が戦線を突破し今回の民間船マケマケ223デブリ衝突事故を引き起こしたものと思われます。……』

『えー、現在私はマーズアメリカコロニーへと来ております。見てください、宇宙港の入り口は複数の星とコロニーの報道陣で埋め尽くされ生存者のインタビューを行っております。えー、今回の事件の発端となる戦艦級と呼ばれる小惑星の戦線の突破には、コロニーに置かれた司令部への定時連絡を傍受されたものと認め、緊急会見を本日……』

『……それで、こちらに見える行列はキャンセル待ちを待つ人々の行列です。先の事故の影響で冥王星ラグランジュコロニーでは、またいつ戦線を抜けて彗星の一部が飛来するかという恐怖により、どこも我先にほかの星に移住しようと宇宙港、移住不動産、財産の売却窓口へのアクセスが集中しており……』


 エスカレーターに乗り次第に重力が生まれ始め浮いていた足を床に着ける。

 下っていくにつれだんだんと強くなってくる重力、無重力に慣れていて戻ってくる自分の体重に少し気怠く感じながらアカツキは同じく重さを取り戻していく旅行用かばんを二つ握りなおす。


「陽気な音楽だね、お祭りかい?」


 宇宙港にまで響いてくる音楽。

 ある程度まで下りてくると天井がガラス張りへと変わり、工場の並ぶ街並みが見えてきた。

 港から何重量と連結されたコンテナとタンクを積んだ列車が走っていくのが見える。


「はぁ、大きい建物が多いね」

「この国は投資額が大きいからね。一部は星の首都くらいには発展もしてるはず。星に近いコロニーは鉱石の加工、部品やパーツを作って星やほかのコロニーに卸すんだ。まだ砲艦に改造されていない貨物船のカストルやシリウスもここらへんでは動いていたはず」


「ここで戦艦を作っているのかい?」

「いいや。プリント造船はアステロイドベルトとカイパーベルトの造船所で組み立てているよ。ここらへんは本当に星やコロニーに卸す民生品だけだよ」


 エスカレーターを降りたところで大量の救急車が待ち構えており緊急に借り上げられた医療テントの張られているホテルの敷地へと誘導された。

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