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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
二章 先人の後に続くもの
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馬酔木 4

 クルックスらと合流したアカツキたちは警報が鳴り響く船内を移動していた。

 退艦の指示が出ており我先に宇宙服へと着替えようと格納庫へと向かうものたちの中を進む。


「なんだ、今度は何だ!?」

「聞いてなかったのか戦艦級だと、格納庫へ向かえって。作業艇で近くのコロニーに逃げるんだよ」


 デブリが衝突し艦内が激しく揺れ艦内に金属の軋む音が響き渡った。

 もとより艦内に疑似重力は存在しないが壁や椅子などに触れていたら突き上げるようなその衝撃を受ける。

 通路や部屋の壁は固いながらも衝撃吸収のマットや粘土のような柔らかさを持っているもので作られているため頭をぶつけてもさほどダメージはない。


「この揺れ、攻撃を受けたのか」

「それ以外で船が揺れる要素が無いだろ。わからないが、もう木星コロニーのそばだろ」


 一向に進まない通路を見ていた壁に寄りかかっていたダンゴが頭をさすりながらクルックスのそばにやってくる。

 避難中の皆が騒めきより急いで避難しようと押し合いへし合いの騒ぎが起きた。


「沈むのか? 通路の隔壁が開いているから通路のどこかが破損したらみんな外に吸い出されないか?」


 艦内の異常にスワも慌てて逃げようとその騒ぎの中へと混ざろうとする。


「何枚かある装甲板を貫かれなければ大丈夫なはず。艦内放送が流れないってことは大丈夫なんだろう」

「でも攻撃受けたのならどっかしら壊れたよな」


「まぁ、隔壁は降ろしていた方が安全だけどどのみち装甲が貫通されたら助からない」

「今また小さく揺れたな、通路の隔壁降ろしたとしても船体ばっきり折れたら助からないな」


 唐突に通路の明かりが消える。

 赤色の非常灯のみが点灯し手元が見える程度の暗い赤い光の中を無数の黒い影がうごめく。


「電気が消えた、戦闘態勢か? 明るい場所から急に暗いとこ行くと目が慣れるまでに時間かかるんだよな」

「通路の奥は明かりがついてる、ここだけ消えたみたいだ。故障だな」


「おいおい大丈夫かよ」

「シリウスは何十年以上もデブリ飛び交う宇宙で活躍してきた貨物船だ、その設計を信じるしかないだろ」


 揺れと照明が消えたことで多少のパニック状態が生まれ、人の波に押し流されながらも何とか宇宙服を着て格納庫へと入る。

 その間にも艦内は揺れ、積み荷や作業艇が小刻みに揺れていた。


『とりあえず乗れるだけ乗れってさ、脱出ポットじゃなくて空のコンテナ牽引させるからそこに避難者詰め込めって』

『俺たちが操縦か、艦首コイルガンじゃなくて物資搬入口からの脱出だよな』


『運が悪かったけど、バラバラにならなかったしいいか。スワに任せれば大丈夫だろ』

『というわけで操縦任せていいかスワ』


 頷くスワに作業艇の操縦桿を任せアカツキたちも作業艇に乗り込む。

 宇宙服の足裏にあるマグネットでコンテナに飴に群がる蟻ように人を乗せ、準備のできた作業艇から格納庫から直接艦後部の搬入口から外に出ていく。


『俺たちも準備できた出発だスワ』


 作業艇のアームを操作しコンテナをしっかりと固定しアカツキたちの乗る作業艇は空母を後にする。

 無数の艦船の残骸が散らばっており、その中を縫うように木星へと向かって逃げていく複数の作業艇が見て取れる。


『木星だ、何でこんなとこで戦艦級と出くわしているんだ』

『舌を噛むぞ、ダンゴ』


 シリウスから飛び出たとたんに白い閃光が巨船の横を通り過ぎていき、アカツキたちの先を進んでいた作業艇が蒸発した。


『シリウスを盾にして進め進め、影から出ちまったら今みたいになる。あとは他の船を盾に、ほらそこの艦種しかないやつとか盾に使えそう』

『みんなで乗るとすこし狭いな身動き取れない、後ろのコンテナに人が乗っているから急制動できない慎重に行くぞ』


 ダンゴが逃げる先を見つけクルックスがスワにそれを伝える、アカツキは作業艇のアームがコンテナから外れないよう確認しその背後に見える遠ざかっていくシリウスを見る。


 フトと乗るシリウスとは別の艦に戦艦級の攻撃が命中し静かに爆ぜ、そしてデブリが増えた。

 戦艦級との距離が近づいており白い砲撃の命中率が上がり、被弾するシリウスがバランスを崩して回転させられる。


『向こうのシリウスがやられた、ここからじゃ戦艦級が見えないけどなんかちっとも離れてる気配ないな。俺ら追われてたのか?』

『もともと、もうすぐ帰港するところだったんだ、減速してて、多分戦艦級が早いんじゃないのか。デブリの中を、好んで進んでいるとも思えないし、進路が、被ったとか後ろから、高速で追いついてきた、とかか?』


 作業艇はカノープスの艦首と思われる残骸の裏に隠れた。


『ふぅここまでは何とか、次は向こうの装甲版とかか? あんまり大きい残骸がないな。考えるのは後でいいだろ、まずは生き残らないと』

『あの向こうに見える砲塔は、おそらく箱のカノープスの主砲だろうけどあれなら装甲化もされていて流れ弾をしのげるかも』


『だな、スワ向こうだ、今度はあの大砲に向かえ』


 話している間も戦艦級の砲撃が視界のどこかを横切る。


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