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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
二章 先人の後に続くもの
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馬酔木 1

 大きく揺さぶられ指示をする者の居なくなった船は淡々と最後の指示である飛来物をよけるための船体下部のスラスターを吹かし続け艦隊から離れていく。

 飛来物と艦隊との間に戦艦級が一ついたため、それを盾に隠れようとした二隻が飛ばしてきた瘤のついた飛来物に接触し制御を失った。


「巨大な船に穴をあける威力を放つ粒子砲の砲塔部分。今までは距離により収束した粒子が散り威力減衰が起きていたがじかの衝突は直射に等しい。相手の攻撃をそもそもが第一世代が耐えられるものではない」


 モニターを眺めていた艦長がぼやくようにつぶやき隣に座るフトが肯定する。


「ですね、ですがあの攻撃。第二世代も危うい可能性があります、基地へと帰還したらすぐにでも報告書をまとめて……いや、たまたまここで初遭遇したわけ、あれが現れているのはここだけでもないか。ほかの艦隊は無事だろうか」


 戦闘は終了し引き続き連絡を取るも返事はなく数分後に見切りをつけ,、大破によって自動で救難信号を放ち離れていく二隻を見送った。


「救助活動は、どうしますか?」

「艦内のどこからも救難信号が出ていないのなら無駄でしょう」


「あの衝撃で通路や隔壁が割れて船内は無酸素状態かもしれない、無事な部屋に隠れている人がいるかもしれません」

「救助にかかる時間は、その間にまたよくわからない動きをする戦艦級や新たな自爆型と遭遇してしまったら? あきらめましょう」


 無数に飛び散った自爆した戦艦級の細かな破片が通り過ぎる。

 デブリ排除用のレーザー兵器クリアランスのいくつかが損傷し装甲版を叩き、わずかな振動として船内に響く。

 戦闘での損傷や艦隊との通信でしばらく報告が続き最終報告がフトに届いた。


「損傷軽微、航行に問題なし」

「六時と七時側のクリアランスに損傷、電源も消失しています」

「索敵レーダーに敵反応なし」

「無事な艦隊からの安否報告来ました、全艦航行には支障なし。落後艦二」


 静かに艦隊から離れていく二隻はまだモニターに映っており、それをもの悲しく見送る。

 反転し船体が加速を始めると離れていく二隻は後方へと小さくなっていく。


「レーダーを使っているついでのカノープスの信号は、救難信号でもいい、なにかない?」

「いえ、ありません……」


「そう……。戦闘終了、艦隊に伝えてください。艦首反転、ゲートを目指します。無線封鎖する前にゲートに指向性の救難信号を放っておいてください」

「了解」


「終わったらまた電波を発しないようレーダーの類を切ってください。その後はなるべく熱を放たないよう微速前進」


 加速し続けることによる艦尾へとわずかに引っ張られる、救助もせず置いてきた二隻に対する後ろ髪を引かれる様な感覚のまま揺られる船体は。

 彗星からは大きく離れてもまたいつ飛び散った破片から戦艦級が現れるかわからないため、新たな戦艦級が現れないか手の空いたオペレーターたちがモニターをくまなく確認し戦艦級をさがす。

 戦艦級を引き付けないよう電波を放つレーダーを使わずカメラの目視だけで探しているとオペレーターが明るい声で声を上げた。


「正面二時にシンギュラリティゲート! よかった、帰れる」

「正面より友軍接近! おそらくはゲート防衛隊! カストル七隻、コールサックに十隻、メラク五隻、ベテルギウス二隻!」

「増援部隊のカストルk4444が通信を求めています」


 どんよりと暗く重かった指揮室の空気が一気に晴れていく。


「よかった、逃げ切れたようですね。退路もあっていて間違えることなく戻れた。すぐにゲートへと進路を。救援艦隊に通信を、戦線はどうなっていますほかの艦隊の無事は、撤収後予定通りの集合場所に集まるので間違いはないのかを訪ねてください」

「了解、戦況、状況、指令の更新を聞いてみます」


「速度は……十分そうですね。推進器停止、このまま慣性でゲートへ向かいます」

「了解」


 減速する形で待っていた救護に訪れた艦隊と空母艦体は合流し、ゲートにも近づいたことで気を張っていた皆が安堵の息を漏らす。

 警戒をほかの艦隊へと任せオペレーターたちが指揮室内で軽食を取る。


「怪我人を医療装備の充実しているカストルへと引き渡してください。基地やコロニーに着くまで少しでもましな処置を」

「了解です」


「艦内にゲートは近く救援艦隊とも合流したと放送し、皆を落ち着かせてください。これで艦内も落ち着くでしょう、あとで少し私は指揮室を離れます。何かあれば艦長か射撃管制室の方にいる副艦長の指示を仰いでください」

「わかりました」


「ふぅ、ここを離れる前に少し寝ます。疲れました」


 フトはハーネスで体を固定し座席を倒すとスクロールデバイスを取り出し画面に娘の写真を写す。


「もうすぐ帰るからね、アセビ」

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