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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
二章 先人の後に続くもの
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総火力 7

 襲い掛かる戦艦級がまるで騎兵のように艦隊の間をすり抜け、そのすり抜けざまに砲撃を当てていき方向転換し再度同じように攻撃を行っている。

 艦首砲しか持たない第一世代は艦隊の間をすり抜けていくその動きに対応できず、望みの第三世代も大きく数を減らされ艦隊の全滅が迫っていた。


「おいおいおいおい……壊滅状態じゃないか! 護衛の第三世代、再新鋭艦だろ!  フトは!? あいつの乗る空母のシリウスはどれだ!?」

『まだ戦っている! 俺らにできることはないのか!』

『いま近づくのは、危険だ。戦闘が終わるまで、ここで様子を見る、しかないか』


 艦隊はまだ四十隻以上残っているがほとんどがシリウスの改造空母型で第二世代の姿はない。

 生き残ったシリウスたちの艦首コイルガンを避けるような位置取りをする戦艦級が七つ。


 戦艦級の攻撃は第三世代を優先されている様で、無傷なシリウス空母がいる中で第三世代だけひどく装甲が大きく抉れている。

 シリウスも戦闘に参加しようと船体下面の方向転換用の推進剤を勢い良く吹くのもむなしく砲の正面に捉えることはできない。

 広範囲に広がる損傷艦や無数のデブリを避けて艦隊に近づくと、すでに発見されているためか空母艦体から注意を向けるための囮か隠す気のない艦隊間の交信用通信を拾う。


『死ねない、まだ死ねない! 作業艇、コンテナ、何でもいいから撃ち出せ! 全出力をコイルガンに! 砲艦の改装型、リミッターを外せば撃ち出せる! 当てろ! 我々が生き残るために!』

『カノープス2000! 艦隊から離れすぎだ! 集中砲火を受けているぞ!』

『主砲塔への電源喪失、こちらの残った二基の武装は動かなくなった。おとりとして行動するこちらに気を取られているうちに……』


 戦艦級に交じっていた小型が分裂して向きを変え体当たりを行い、第三世代が進行方向と違う方向へと動いて船体がくの字に折れる。

 凄まじい光景だったが宇宙では衝突時の轟音は響かず、音のない映像のような景色に見えてしまう。


『全滅も時間の問題か……』

「クルックス、後ろの作業艇に移ってくれ」


『どうした? 何か策を思いついたのか?』

「あいつらの近くによって通信を行えば、電波をキャッチして少しだけ戦艦級の動きが鈍ると思うんだ」


『やめておけ、確かな確証はないし、成功しても効果は一瞬だけだろうし、狙われるぞ。助からない』

「でもやらないよりか、やってみる価値はあるだろ! 戦艦級は後六、まだ第三世代も生きているのがいるし何とかなる」


『だが、見る限り、ミサイルコンテナは空、機能していない砲とレーダーをむしられた船体、まだ沈んでいないのは、熟練した乗組員たちの根性、のおかげだろうな』

「ああ、だが、その代わりシリウスには訓練生あがりが多い。他の船と違って、動きが荒く味方艦にぶつからないかひやひやするくらいだ。クルックス、移動してくれ。無数のデブリをよけるような細かい操舵はできないが、普通に移動させるくらいならできる」


 アカツキの説得をあきらめクルックスはダンゴたちの乗る後ろの作業艇へと移る。


『なら、健闘を祈る。救ってこい』

「ああ、行ってくる」


 連結を切り離し残り少ない推進剤を惜しみなく吹き出し、作業艇は攻撃を受けている艦隊へとむけて動き出す。

 急加速で後方へと引っ張れる力の中でもまっすぐ艦隊へと進む。

 ダンゴたちが巻き込まれないように距離を取ってから通信範囲を最大に設定した通信ボタンに手をかけた。


「こちらは彗星攻撃隊! 貨物の投下を済ませ帰還した! 頼む、助けられるきっかけくらいにはなってくれ」


 宇宙服の無線を作業艇が増幅し周囲へと飛ばす。

 その瞬間、残った七つすべてが騎兵のように艦隊へと突撃しようとしていた戦艦級たちは磁石が反発を起こしたかのようにすべてが違う方向へとむけて進路を変えた。


「なんだ、この作業艇を観測衛星かミサイルとでも勘違いしたか? ハハっ、やって正解だったな」


 急な進路変更にシリウスの射線に入った戦艦級が三つ砕かれ、一つが攻撃で受けた亀裂から二つに折れて自壊した。

 ばらばらに動いた戦艦級の表面に生える砲塔がアカツキを狙う。


 劣勢な状況から四つの戦艦級が減り、思いの戦果にアカツキは思わず笑いそして攻撃が飛んでくるのを覚悟する。

 戦艦級の主砲の瘤が膨らむ。


 攻撃が逸れて作業艇のすぐ横を白い壁が通り過ぎていく。


「……こうげきが、それた?」


 通信中ということも忘れ呟いたアカツキの言葉に返事が返ってくる。


『ああ、そうだ。戦艦級は電波を頼りにこちらを見つけ狙っている。攻撃の直前に、目標が急に増えたら狙いもぶれるってもんだろ! つっても、お前が成功したのを見てからやっただけで、失敗してたら知らんぷりはする気だったんだけどな』


 アカツキが振り返れば艦隊を見つけ迫っていた多くの作業艇の姿があった。


 混線するほどの無数の声が聞こえアカツキを真似て通信範囲を最大にした作業艇たちが報告やら戦艦級を挑発するような言葉や愚痴やら雑談やらをしながら艦隊へと向かっている。

 気が付くと残った戦艦級の破壊されていた。

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