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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
二章 先人の後に続くもの
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月のない夜 1

 その後少し話したのち老人は去っていく。

 老人がホールを去るとアナウンスが入り集められた兵士たちはそれぞれの出口からホールを出ていく。


「召集のたびにやるこの挨拶って何か意味あるの? もう向こうもさっさと切り上げてしまうし、さっさと船に乗ってしまうべきだと思うのだけど。さて、じゃぁこれで船に乗って移動するのね」


 スクロールデバイスを手にしエノグは移動する人の波をみる。

 大勢が集まっていたため磁力で床に足を付け歩いて出ていく。

 何人か歩きなれていないようで宙に放り出されそうにふわふわした歩き方の者を見ながらエノグの疑問にカゼユキが答えた。


「カメラや身分証での招集をかけた人数の確認とマナーや態度がなっていない不良兵士を探しているんだよ。星軍は急速な拡大のために民間船を徴用して改造その乗組員もそのまま雇われた、軍人としての心得のない人も多かったんだよ。最初の方は両者の間に喧嘩なんかも起きてたっていうし」

「なるほど、星軍の基地での訓練も運動と座学がほとんどで帰ろうとすれば家にも帰れるものだしね。天に上がっての訓練はあるけど、艦内の生活がメインで戦闘訓練なんてあまり行われていなかったよね。あれも親睦を深めるためだったか、あまり他の部署の人とは話さなかったけど」


「専門職に先鋭化した部署が一堂に集まるからね、それぞれ分かれてしてきたことをひとつの船に集めてうまく機能させられるかを試すのが主だから。砲撃は僕らが実際に手にして撃つわけではなく、情報をもとに船を動かして行うことだから戦闘シミュレーションでも代替できるし」

「学校みたいだね、艦長は数百人を束ねなきゃならんけど」


「艦隊指揮官に任命されれば数隻から百隻程度の艦隊を任されることもある。今回の僕らは従う側だけど、新造艦が増え続け日々新人が入隊しているから下から押し上げられる形で今まで通り僕らは出世する。今はこう話してられるけど数年後には艦長とかじゃなくて艦隊の指揮官なっているかもだよ」

「仕事に見合ったお給金さえもらえれば何でもいいさ、生きていくにはお金がたくさん必要なんだから。良い家に住み、良いものを食べ、子供を良い学校に通わす。早く戦闘終わらして息子のところに帰らなきゃ。そんじゃね、さすがに初日から遅刻ギリギリに到着だなんてみっともない」


 移動のため手を振り別れようとするエノグにフトが訪ねる。


「そういえばエノグ先輩の旦那さんは? ここに一緒にいないってことはすでに戦場に出ている船の中?」

「う~ん、一応は星軍、でも宇宙生活の適正がなくてコロニーで基地の警備やら物資の搬入やらやってるよ。最近だと天空教のデモが過激化してきたからそれの鎮圧もしているみたい。でも前線に出ると出ないとじゃ給料が違うからさ、今の生活は私が支えているみたいなものだよ。さて、今度こそじゃあねフト、時間があれば個人通信でも出来たらいいね」


 それを最後にエノグは人の波に紛れホールを出ていった。


「さて僕らもいこうか、僕らもみんな違う艦艇だここでお別れだね。二人とも気を付けて」

「はい、行ってらっしゃいカゼユキさん。みんなで無事に帰りましょう、アセビもお義母さんもいますし。アカツキはほんとお願いだから帰ってきてよ、アセビが悲しむんだから」

「おう。じゃあな、カゼユキ」


 カゼユキとも別れフトとアカツキはそろってホールから出る。

 ここへ来るとき来た道を引き返すように移動しいくつもの桟橋に停泊している戦闘艦に乗り込む桟橋へと向かった。


 装甲版の一部が延長された一隻のシリウスが停泊していた。

 その装甲版には白線が引かれ、一定の間隔で電飾が埋め込まれており装甲版の真ん中に昇降機が見える。


「シリウス空母か、訓練では普通のシリウスを使っていたから実物を見るのは初めてだな」

「元が貨物船だからかな。艦内にもともと積み荷を置くスペースもあるし、なるべくしてなったって感じもするね。久々に見ると大きいねシリウスも」


 基地とシリウスとの間に太く大きなチューブのようなものが伸び艦体の上部構造物へとくっついておりそこを滑るように乗組員たちが通っていく。


「でもシリウスも他の船も、戦闘中でも補給や脱出がしやすいように艦の後部に倉庫と搬入口がある設計の基礎は一緒なんだろ?」

「何百年とかけて研究された宇宙船の製造ノウハウですからね、そうそう変わらないですよ。でもほかの艦は最低限の荷物を積み込む分の幅しかないらしいですよ。第二世代には乗ったことないから久々に会った友達からまた聞きした情報だけども。それでも避難用の艦艇としてベテルギウスが第二世代の中では比較的倉庫が大きいんでしたっけ」


「シリウスの次に空母化するならそれか?」

「今回のは彗星に対しての攻撃に空母の必要性を検証する作戦だから」


 細長いチューブのような通路を通りシリウスへと乗艦する。


 チューブ内は一方方向に風が流れており掃除機に吸われるゴミのように、細い通路を流れていき老朽艦へと乗船。

 シリウスに限らず第一世代はそのほとんどがコロニー間や小惑星帯での物資輸送に使われていてきれいに掃除されたり改装されたりしても艦内はどこか年季を感じる。


「さて、気を引き締めていきますか」


 シリウスに乗艦するとフトは軍帽を取り出し頭にかぶった。


「ようこそ、シリウス改空母S0110へ。まだ偶発的な戦艦級との戦闘記録しかない、新兵科戦闘機乗りという大変な立場ですけど今作戦の主役です。それでは、アカツキ君の活躍を期待するよ」

「ご期待にそえるよう頑張りますフト副艦長」

年末に近づくにつれ

時間だけでなく投稿日も不定期になるかもしれません

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