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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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戦いをもたらすもの 3

 民間マケマケ223は港へと引き返していたが、突然叩きつけるような強い衝撃が襲ってきた。

 轟音の後に電灯が点滅し部屋全体が揺れでぶれて見える。


 目の前のすべてのものが大きな力を前に人も物も木っ端のように吹き飛び、誰もが悲鳴すら上げる時間なく部屋の中を転がされた。

 遅れて聞こえてくる何らかの危険を知らせる警報と誰かの重なる悲鳴。


「フト、アセビは!」

「無事です。最初の変な音でみんなが守ってくれたから……」


 アカツキ、カゼユキ、母に抱かれ、アセビを抱えたフトが答える。

 急な衝撃にアセビは泣き出し始めたため照明が消え暗い中フトの胸の中であやす。


「何が起きた」


 警報と悲鳴、泣きわめく声がまじりあい混沌とする暗い室内。

 衝突の影響で船体は回転しているようで、意図しない遠心力で生まれる不自然な力がただでさえうまく動けない無重力化の移動を困難にしている。


「フトさん、アセビちゃんは!」

「無事ですお義母さん。お義母さんは?」


「無事だよ奇跡的にね」


 船全体を揺るがす衝撃が収まりカゼユキとアカツキはあたりを見回す。

 モニターや照明は消えうっすらとともる赤色灯を頼りに非常口には人が殺到し、船からのアナウンスはない。

 原因がわからないことで今の衝撃が一度で終わりなのか、この後も同じように激しく揺れるのかわからず暗い船内はパニックが起きていた。


「移動するかカゼユキ?」

「何が起きたかわかるまでこの暗い中を移動するのはかえって危険だよアカツキ、母さんもアセビちゃんもいるし」


 少し待ち押し合いへし合いのパニックを起こした客たちが船の奥へと避難していくのを待ち、非常口周りが開いたことでようやく赤子を抱えたアカツキたちも避難を開始する。


「カゼユキ、これ何が起きたと思う?」

「ほかの船との衝突事故か、あるいはデブリとかの衝突?」


「回避した様子がなかったから後者かも、民間船同士ならレーダーにだいぶ前から映るはずだし通常の航行速度なら他の船との衝突はさすがにぶつかるまで気が付かないことはないはず」

「とにかく母さんたち三人を安全な場所に移したいよな。民間船の耐久がどれほどかわからないけどここにはいられない、脱出ポットの場所はどこだ」


 避難通路に出る。

 普段が民間船の乗組員がつかうためのもので、非常時のため大きく作られてはいたが普段使う多くの荷物が事故の衝撃で留め具から離れ通路内を漂っていた。


「すごいゴミの量だな、破片や刃物がその辺平気で浮かんでる」

「掃除用具から、食器、その他のものまですごい散らばっているね。母さんとフトさんは僕とアカツキの後に続いてついてきてください」


 船の損傷は大きく船内は不気味な音を立てて軋みを上げており、破損個所から空気の漏洩を防ぐため通路のあちこちが閉鎖され迷路のようになっている。

 閉ざされた隔壁の向こうは空気が薄いか無い、少しだけ開けて無効に移動するなんてことはできず道が途切れていた場合は迂回するしかない。

アカツキたちも通路を進み時折聞こえてくる船体が軋む音と謎の揺れに戸惑う。


「変に回転しているから進みづらいね、非常時の宇宙遊泳は訓練受けてても人がいると動きづらいね。乗客は千人くらい乗れる船だよ、殺到する人ごみに押しつぶされないよう少し離れて進もうアカツキ」

「いつまで回ってるんだ船の姿勢制御はどうしたんだ、止まる様子がないってことは制御系が壊れたのか?」


「衝突の影響の回転してるが、破損個所から船体が裂けたりしないだろうか? 宇宙服も着ていないから外に放り出されたら終わりだ。エンジンなんかも損傷していないか、不安なことが多すぎる。アナウンスはなぜない?」

「あの閉ざされた扉の向こうはおそらく空気がない、その先にも乗客はいたはず……。どこも隔壁が降りて迷路みたいになっているけど、脱出ポットまでたどり着けるか?」


「装備もない今の俺らにできることはないよアカツキ」

「人を守るために星軍に入ったっていうのに、こういう非常時に何もできないのか」


「専用の装備がないと僕らにできることはないよ。おとなしく母さんとフトさん、アセビちゃんを避難させよう」

「……わかった」


 負傷した乗務員が脱出ポットへと案内していて、案内に従い薄暗い非常灯の明かりを頼りに進む人影の後に続きアカツキたちは搭乗員と壁に描かれた案内板に従って脱出ポットのある格納庫を目指す。


 壁に描かれた発光塗料の指示に従い通路をすすむが、船体に空いた穴の影響であちこち通路の隔壁が閉まり行き止まりに当たるたびに迂回しあみだくじのようになった通路を進む。


 どのくらいかかったか、やっとのことでついた格納庫。

 明るく非常電源で格納庫内すべての電灯がついており、怪我をして赤黒い色に染まった人たちが救急箱を持って無重力化を飛び回る乗務員によって手当てを受けている。


「混んでいるな、脱出ポットの周りは人が殺到しててアセビちゃんが危ない」

「派手に船体が揺れたから怪我人が多いな、人手が足りてない。手当ならできるし俺らも手伝おう」


「そこにいてくれアカツキ。今どうなっているか聞いてくる、母さんたちを守っててくれ」


 カゼユキは乗務員の一人に話しかけに行きすぐに戻ってくる。


「なんだって?」

「まだ船の周りに破片が散らばっているかもしれないから今は脱出できないと」


「脱出して破片にぶつかればおしまいだからか」

「小型船は最低限の強度しかないからね、それに脱出ポットは救難信号を発して漂うだけで自分で動けないから。脱出して不安定に動く船体にぶつかる可能性もあるし」


「ならここで待つのか?」

「船の回転が止まるまでは無理かな、ポットの中に入れるはずだからその中にいるのが安全だろうね、殺到していた人もだいぶ避難が進んで減ってきた」


 ポットは複数個あり乗れるのは一つに着き十人程度。

 入り口は一つしかなく、小さな入り口から一人ずつ順にカプセル型の長細いのポットの中に入り込んでいく。

 我先にと殺到しているポットの周りから少し離れた場所で待つ。


「アカツキ、この脱出ポットってのは人数分あるのかい?」

「それは大丈夫だよ母さん、怪我人や病人を密集させて載せないように多めに用意されていて。多分乗るのは最後のほうになるかもだけど、ポットの空きは多いよ」


 待っていると乗務員がカゼユキたちを見て手を振り呼ぶ。


「そちらの子連れの方、こちらへ」


 乗務員に呼ばれフトたちがカプセルへと近寄る。


「中に入ったらシートベルトをしっかりとしめてください。閉所、密閉空間などでパニックを起こしやすい方は胸が苦しくなったら大きく深呼吸をしてください」


 人一人が通れる程度のマンホールのような丸い入り口から中へと入る。

 奥には青いライトが光る白い座席が並んでいて奥から順に人が座っていてフトたちは入り口近くの座席に腰掛ける。

 カゼユキたちが乗り込むとカプセル内は満員になり扉が閉ざされた。


「何か匂いがしないかい? 変なじゃなくて香水みたいな」

「精神を落ち着かせるガスだね、パニックを抑えて酸素の無駄の消費を抑える」


 船からの現状を知らせるアナウンスがなく外の様子がわからないため、不用意にカプセルは船から射出されることはなく狭い空間で静かな時間が過ぎていく。

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