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鉄塊乱舞 4

 

 コロニーを離れ先を進むゲートへと進み始めて二時間あまりしてオペレーターたちが慌ただしく動き出す。

 巨船の隅々まで警報が響き渡る。


『艦隊への接近中の物質反応あり、付近のコールサックが確認中』

「戦闘配置、第二世代亀甲陣形! 損傷艦には俵陣形! 随伴艦にも損傷艦の防護陣形を取るように。砲撃型を警戒しないとな」


 艦内に放送を流し各部屋に個別に通信を送るオペレータたち。

 何らかの反応をとらえたコールサックに、より精度の高いレーダーで接近中の何かを調べに行向かわせミヅラたちはその情報を静かに待つ。


『警戒中のコールサックc6677が彗星片の反応をキャッチ、現在大きさと数、速度差を確認中。同艦隊の付近のコールサックが応援に向かいます』

「砲撃型はいるかが心配だな。いなければ訓練通りに戦えば無傷で終わるはずだが」


『レーダーの反応を解析しました。速度差レベル二、数四十、そのうち五つが砲撃型。一つが未確認の個体』

「未確認とはなんだ」


『今まで確認されていた戦艦級よりはるかに大きな塊とのこと』


 考えるために無意識に髪に手を伸ばそうとするが、宇宙服のヘルメットに阻まれる。

 戦闘を求めていた自分が焦っていることに一人から笑いをしミヅラは隣に座る副艦長に意見を求めた。


「どう見る副艦長?」

『今までに確認されていた戦艦級の大きさは約六百メートルから約千メートルの間でした。報告ではサイズが言われていませんでしたが、彗星に成長するための最初の核かもしれません』


「核、ということは成長し今迫っている彗星ほどのサイズになるというのか?」

『あくまで予想です。熱源が分散しているため必要に応じて分裂するか、新たな型の砲撃型かもしれません。ただ大きいとだけだと何とも、画像が送られてくるまで待ちましょう』


「そうだな。少し急いてしまった」

『ここにきて新たな型が増えてきましたね。発見は彗星が三つのみ、カイパーベルトでは彗星の周りに初めて戦艦級が確認されました。そしてここにきて砲撃型と分裂型と今回の大型、何かが種類を増やさせているのか』


「分析は星やコロニーの学者に任せよう。今はこれから始まる戦闘について思考を傾けるべきだ」

『そうですね。観測衛星はないですが広域に広がったコールサックが周囲の偵察網を形成しています。いくつかの艦隊は周囲の警戒のために動かせませんが、遊撃用に待機させていたコールサックの艦隊を攻撃に回します』


「接近すればミサイルで破壊できるはず。外付けのミサイルコンテナは戦闘前に使い切るんだったか?」

『はい。射的距離に入る前に撃ち切っておかないとこちらの砲撃で撃ち落としてしまったり、敵攻撃の被弾時に誘爆します。ミサイルよりレールガンの方が何倍も速いですから』


「よし、とりあえず戦艦級だとわかった戦闘を始めよう」

『ですね。では、これより戦闘を始めます。護衛対象の艦隊に連絡を、偵察しているコールサックにそのまま偵察のみを指示、損失艦を出さないよう注意が向かったらすぐに逃げるように伝えてください』


「推進器停止、慣性航行……」

『砲塔を敵の方へ、観測衛星のない戦闘です命中性能が落ちますが手数で戦いましょう。未確認の大型に注意を、送られてくる情報を逐一報告お願いします』


「ミサイルコ……」

『外部着脱式科学誘導弾の一番から四番までのハッチ開放、船体を傾け敵の進路先へとばらまきます。戦闘配置、宇宙服着用の警告後、艦内すべての通路及び室内の空気を抜いてください。訓練ではありません、生きて家族に会いたければ自分の出しうるすべての能力を発揮してください。なにか?』


「副艦長が優秀だと私がすることがないな。日々完成していく新型艦のための艦長の育成が急務とはいえ、君が着任一か月で戦闘指揮ができるのは成長が早くないか? 最新のナノブレインインプラントの性能は素晴らしいな、一世代ごとに何倍もの性能が強化されているな」

『もともとの私が優秀ですから』


 警報が止み船体がゆっくりと動く。

 艦内のいたるところで船体移動によっての微弱な疑似重力が生まれては消える。

 波を超える船のような揺らぎを得て艦隊は陣形を取った。


 第二世代大型艦は旗艦プロキオンP1020を中心に接近する彗星の破片らに向けて船体の上面を見せ平面的に密集した陣形を作る。

 その一枚の壁となった第二世代の下方に艦首を敵方向へ向けて同じく密集し合い、ボーリングのピンの要並ぶ。


『艦首、敵進路に向きました』

「一番、二番、ミサイル点火! 撃ち尽くした後コンテナ廃棄、三番四番を続けて発射。すべてばらまけ!」


『一番コンテナ、二番コンテナ、ミサイル点火』


 船体の全周囲を映すモニターには飛んでいく無数のミサイルが映っている。

 先端に爆発物のついた長細く白い塊。

 多量のミサイルの発射でも巨船は揺れることはなく、淡々とコンテナから吐き出されミサイルは黒い世界へと消えていく。


「噴煙とかはないんだな」

『燃料の問題で初めから推進器を吹かして飛ぶわけではありません。バネの力で発射後そのまま慣性で飛んでいきます。コールサックの核機雷の投射と同じです、違う点は追尾機能があることとそのために爆発の威力が低いこと。弾頭を小さく威力が低くしそれでも姿勢制御、追尾、加速の燃料はあまり多くはありません』


「そんなミサイルに意味はあるのか?」

『はい、効果はあります。弾頭は浸透弾頭で小惑星の中から炸裂します、ミヅラ艦長は昔のダイナマイトによる掘削をご存じで? 戦艦級は岩の内側が真空空間に晒されると蒸発し消滅し始めることは知っていますよね。小惑星を修復できない程度に割れさえすれば勝ちなんです』


「そうだな」

『レーダー範囲外でもかなりの命中率があることは前線でも確認されています。今のコールサックの主武装たる核ミサイルと違い製造コストが安く、取り付けも容易で第二世代が間に合っていない砲艦の近接防御にも使えます』


 モニターには最後のミサイルが消えていくところが映っていてその後、何事もなかったかのように船体の一部と暗い宇宙を映し続ける。

 コールサックから送られてくる情報をモニターに映す。


「この情報を送り続けているコールサックは狙われていないのか。レーダーに捉えられる距離だとすると砲撃型の射程圏内なんだろう?」

『そうですね。こちらから電波を放ってそれが跳ね返ってくるのを待っているだけではありません。向こうが発する熱や残留物、こちらを探す電磁波を静かにとらえるのも補助艦艇であるコールサック警邏艇の役割です』


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