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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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連星 3

 倉庫とつながった砲室。

 二台の作業艇が巨大な砲弾を引っ張り出し貨車へと乗せてコイルガンの前まで運ぶ。

 キワケは作業艇を降り大砲の前にあるパネルの前で指示を出していた。


『上から急かされてるぞ!』

「すぐ持っていきます」


 貨車は人口重力と磁力で床に貨車を引っ張って砲弾を込める床の窪みを目指す。

 砲室にいる者たちには戦闘の状況はわからず放たれた砲弾が当たったのか外れたのかもわからない状態で、アカツキたちは指示が来るまま巨大な砲弾をひたすらにコイルガンへと送り込んでいく。


「さっき一度姿勢変更があったってことは第二波の敵を倒したんですよね? その後の進路変更は何だったんですか?」

『しらん、俺らは言われるがまま砲弾を運ぶだけでいい。こちらには何も情報は入ってこない、ただ砲弾を運べばいい』


 砲弾がはなたれ装填のため新たな砲弾を運んでいると、唐突に船体が今までになく大きく揺れる。

 揺れは激しく作業艇が床にぶつかり一度宙へと舞い上がりスラスターでバランスを取り床への衝突を防ぐ。


「なんだ、この揺れ!? 砲撃の揺れじゃない!?」

『お前たち、今すぐそこから離れろ!!』


 キワケの大きな声に耳が痛くなるが船体が揺れた衝撃で運んでいた砲弾が、貨車ごと床を跳ね制御を失い宙でゆっくりと回転している。

 強力な磁力で固定し引っ張りまわすその砲弾を、磁力で吸い付く床から強引に剥ぎ取り跳ね飛ばすほどの威力の揺れ。


「離れろって、砲弾運搬中に床から離れたら……」


 時計の秒針より遅く非常にゆっくり回転をしている砲弾。

 すぐに貨車との連結を解きアカツキの乗る作業艇は言われたとおりにその場から距離を取る。


 しかし同じように貨車を引いていたもう一台の作業艇は貨車の連結部が振動で変形し外れなくなっており、作業艇はなんとか推進剤をふかしてその場を離れようともがいている。


『急げ、離れろ!! 人口重力がすぐに戻る、それまで離れたところに退避……!』


 キワケの言葉の途中で人口重力が戻り、宙に浮いた砲弾と作業艇が床にたたきつけられ作業艇は砲弾の下敷きになる。

 真空状態でそれに音はなく、作業艇は推進剤をあちこちから吹き出しながら踏まれた紙コップのように金属のフレームの硬さ丈夫さを感じくことなくあっけなく潰れた。


 人命を失う事故が目の前で起きアカツキは動揺し息が上がる。

 宇宙空間でのパニックは自他ともに危険なため、精神を落ち着かせるためのガスが宇宙服内に満たされていく。


『アカツキ。アカツキ!! お前も、早くその場から離れろ!』


 事故は一瞬の出来事でアカツキにできることはなく、ガスを吸いわずかに冷静さを取り戻しキワケが怒鳴る声でひとまず我に返る。


『聞こえているのか!』

「はっはい!」


 作業艇を動かし安全な場所まで離れ砲弾へと振り返った。

 コロンと人口重力下で床に落ちた砲弾が、作業艇のひしゃげた残骸を平らに慣らしながら転がり始める。


『今、向こうにも連絡を送ったすぐに代わりの作業艇が来る。それまで砲弾に触れるな』

「でも早く装填しないと」


 次弾装填のために別の歌手で作業していた作業艇が船内の揺れが収まると同時に向かってくる。


『一台で安全に運べたら、二台で運んだりしない! 静かに待ってろ、砲艦は俺たちの乗ってるこれ一隻じゃない……が』

「どうかしたんですか?」


 途中で言いよどむキワケにアカツキが訪ねた。


『指揮室からの指示がない、事故があった報告にも応答がない……。いや、ああ、そうだ、……そうか。わかったそちらに任せる』


 通信が繋がったらしく事故があったことを報告をするキワケ。

 アカツキは別の作業艇と合流し壁に立てて固定されていた新しい貨車を使って事故をおこした砲弾を回収し新たな貨車へと乗せる。


 ドローンを使って砲弾を貨車へと引き上げるとともに下敷きになった作業艇があらわになりアカツキは死者を見る勇気がなくなるべくつぶれた作業艇を見ないようにして砲弾を運んだ。


「砲弾、運び終わりました」

『ああ、いい。戦闘は終了した。敵はすべて破壊、終わりだ。砲弾を取り出し元の位置へと戻せ、また、事故が起きるからな。掃除は……俺たちがやる。コールサックが周囲を見回りすべて破壊したのを確認したら仕事は終わりだ、戦闘態勢が解除されたら休憩室へ戻れ』


 数センチ程度までにつぶされた作業艇は人口重力と床の磁石に引っ付いている。

 戦闘終了とともに磁力を切り人口重力のみとなったところで、回収へとやってきた作業艇が砲弾につぶされた作業艇を貨車へと乗せて砲室を去っていく。


『演習を早く切り上げたから最低限のことしか教えられなかった、仕事を早く切り上げもっと戦闘について教えるべきだったのかもな。敵の攻撃なんか当たらない、今までがそうだったからそうどこかで思っていたんだろう』


 声に覇気がなくキワケが事故のあった凹んだ床を見てつぶやいた。

 砲身に込めた砲弾を取り出し、もとあった場所へと戻し固定しに向かう作業艇の中でアカツキが話しかける。


「いや、本来ならまだ演習をしているころだったわけでしたし」

『死んだ奴にそれが言えるか? ふぅ……、休み明けで俺もボケちまったか』


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