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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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連星 2

 艦首コイルガンからコンテナを撃ちだしシリウスs1001は他の艦艇へと物資を受け渡していく。

 管制室のモニターにはこれから運ぶのを手伝う巨大なコロニーと、艦首から吐き出されゆっくりと宇宙へと飛んでいくコンテナが映っている。


「砲室に次弾装填の合図きました、指揮室に報告後コンテナを撃ちだします」

「補給中はいちいち指揮室に報告しなくていいよ、声出しもいらない。船が揺れるほどの威力もないから艦内がどうこうなるわけでもないしね。補給は向こうとの情報のやり取りが終わった後に始まるから、合図が出たらコンテナを撃ち出していれば受取先の向こうが勝手になんとかしてくれる。戦闘中じゃないから勝手に進めてしまって。この辺は作業だよカゼユキ君」


 戦闘警戒状態のためヘルメットを手に届く位置に置いて宇宙服に身を包み作業を行うカゼユキ。


 モニターから見える限りにはコロニーに攻撃を受け破損したらしき場所は見えず、その巨大な塊はあまりにもちっぽけにも見えるシリウスとカストルに手綱を握られ悠々と暗い空間を進んでいた。


「発射の引き金になるこのボタンって、こんなポンポン押すものじゃなくてもっと一回が重たいものだと思ってました」

「全然全然、そんなことはないよ。ただ電力が足りない状態で撃ち出すと事故や故障につながるからですからねぇ。目立つ大きなボタンでうっかり押さないようにってね。カゼユキ君の仕事はこっちで代わりにやっておくからしばらくはそこでボタンを押す作業を続けてくれるかい。その作業は離れられないし退屈なんだ」


 艦首砲の射出後に少しして装填完了のランプが点灯し、カゼユキは改めてコイルガンを撃ち出すボタンを押す。

 電力が小さく砲弾も軽いコンテナのため反動も小さく、巨船は揺れることなくコンテナを宇宙へと送り出し続ける。


「補給の要請の数からおそらくは二、三十個ほどコンテナを撃ち出せば終わるから。んじゃ作業頑張ってねぇ」

「はい」


 モニターには画面いっぱいに運ばれているコロニーが映っていた。

 彗星接近により冥王星のラグランジュポイントから引き離され、回転する巨大建造物はもともと浮いていた個所からは大きく離れていく。

 デブリ衝突衝撃緩和用の装甲に覆われのっぺりとした外観に半球状の瘤が浮き出ており、瘤にはデブリ排除用のレーザー砲クリアランスのレンズが突き出ている。


「冥王星ラグランジュコロニー……」

「建造された順番に運ばれたみたいで、こいつは最後の六番だな。外から見る分には静かなものだけど、中は今はほとんどの人間が非難した後で無法地帯。とても宇宙まで進出した人類とは思えないほど荒廃しているよ。もうニュースでは映せないほどにひどい状況らしい、不安や恐怖を攻撃性に変えて発散している」


「そうなんですか……」

「外に出回らないコロニー内で支援活動をしている人間からの情報だよ、さっきほかの艦の広域通信ログを見たのさ」


「早く彗星を破壊できるといいんですけどね。早くしないと人が広げてきた生活圏が狭まっていくじゃないですか」

「予想じゃ、彗星が反撃してくることも戦艦級の出現も入っていない計算だったからねぇ。彗星は微弱ながら割れた地殻とつなぎなおす再生能力が確認されて再計算だとまだまだ破壊できる様子はないらしい」



 ――



 本体から分離し減速してヨドの率いる艦隊がコロニーを運んでいる。

 周囲の警戒用にコールサック警邏艇が点々と飛んでいてその中に数隻、まだ見慣れない新型艦第二世代の艦艇が見えた。


「あれに見えるは第二世代か?」

「はい、第二世代ディフェンス・エクストリーム・フリートのメラクですね。同型艦が二十隻ほどコロニーの周囲にいます。前回の戦闘後に駆け付け周囲の警戒を行っているようですね」


「第二世代は何種類いるんだっけか」

「主力大型艦のペテルギウス、プロキオン、補助艦艇のデネブ、メラク、ポルックス型の計五種ですね。メラク型は防御方の中でも武装増加を目的とされていてディフェンス・エクストリーム・フリートの中でも大型艦二隻の次に火力の高い船です」


 指揮室では他の艦隊からの注意事項と補給要請と戦闘についての情報が送られてきて、皆が慌ただしく動き報告と情報の整理を行う。


「船体の減速完了、コロニとの速度差ほぼなし」

「随伴艦からも報告、予定位置での減速完了」

「よし、これよりコロニーへと牽引ロープをつなげる。倉庫にいる作業艇の操縦者に連絡を付けてくれ。あとコロニーへの連結後は船内で人口重力が消え船内が常に揺れ続けるだろう。それについても艦内への報告を頼む」


 オペレータたちへと指示を出すとヨドは大型モニターに映るコロニーを眺めた。

 巨大な鉄の塊はその内部に遠心力による人口重力を生み出すためにゆっくりと回転している。


「ついたか、しかし襲われたら逃げも隠れもできない場所だな。ここでの戦闘は避けたいな」

「何もない宇宙に逃げ隠れできる場所なんてないですよ艦長」


 副艦長の言葉にヨドは確かにと軽く笑う。

 進行方向の先コロニーの奥には同じく運ばれている別のコロニーが小さな点として見え、背後には小さくなっていく冥王星が映っているのが見えた。


「了解。ならエトワールちゃん、放送をお願い。話す原稿は今書くから」

「イエス、わかりました! 準備が整い次第、艦内放送を行います」


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