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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
35/176

連星 1

 演習用に決められていた戦闘区域を抜けたと放送がありカゼユキは交代で宇宙服を脱ぐ。


 閉鎖感と圧迫感のあるヘルメットから解放されたことで大きく深呼吸し、重たい宇宙服をもとあった位置へと戻しに向かう。

 宇宙服を指定の位置に戻し、ロッカーから白い上着に袖を通していると、同じく宇宙服を片付けに来たオオガマがカゼユキの肩を叩く。


「お疲れ~、疲れただろうから少し休むといいよ」

「いえ、大丈夫です。すぐ仕事に戻りますよ、演習で彗星からの攻撃はなくて損傷個所はないとしても船体のチェックはここの仕事ですから」


「働くねぇ……、これからコロニー移送の手伝いだ。艦内はしばらくピリピリし続けることになるだろうから、今のうちに休んでおくようにと」

「そうでしたか、ならもう少しだけせめて自分のまかされている居住区付近の確認だけしたら休ませてもらいます」


「そうかい。まぁ、この後は演習なんかじゃない戦闘があるかもしれないから、こんな平和な時に気張りすぎないようにね。ここでの仕事は首と目が疲れるから」

「はい、ほどほどに頑張ります」


 アナログなボタンに囲まれた指揮室とは違い、射撃管制室はタッチパネルと大小さまざまなモニターがタイルのように壁に張り付いているブルーライトに照らされた明るい部屋。

 モニターには指揮室や船内各所から送られてくる情報が映し出され無数の文字と数字が流れていく。

 席に戻るとタッチパネルをスクロールさせ映っている画面を切り替える。


「着替えて戻りました。ええっと、現在艦内温度二十八点七度」

「演習終了で融合炉も低電力発電に切り替わった、冷却水が冷えはじめ上がっていた船内の温度も下がり始めるだろう、すぐに過ごしやすい温度になる」


「戦闘時はだいぶ船内の温度が上がるんですね、もっと緩やかに温まっていくものかと」

「ああ、放熱板の冷却能力に問題はないらしいが、さすがに発電機二基は温度の上昇が半端ない。だから本番の戦闘は蒸し焼きになる前に予定された砲弾を撃ち切ったらさっさと引き上げるのさ」


「なるほど」

「汗、かいたならちゃんとシャワーを浴びて寝ろよ、また船内の温度が冷たくなって汗が冷えて風邪をひくからな。俺も宇宙服を脱いでくる、すまないがカゼユキ君ヘルメットの留め具とファスナを下げてくれ」


 隣にいた白髪の先輩が席を立ち大きく伸びをしたのちカゼユキと同様に宇宙服を脱ぎに向かう。

 老人と居れ代わりに老婆がやってきて画面をスクロールさせているカゼユキの背中を叩く。


「よう坊ちゃん、大砲の撃ち心地はどうだったね? 船の主武装、彗星を破壊する唯一の武器だ」

「緊張はしましたけど、思ったよりって感じでした。指揮室からもらった情報でここではボタンを押すだけですから」


「まぁ、兵器って言っても民間の貨物船に取り付けられている、採掘した氷や鉱石を乗せたコンテナを撃ち出す装置だからね。側を直して軍艦だって言ったって私らにゃぁ、長年暮らしてきたボロ船にしか見えないよ」

「というか、撃ったそのあとの皆さんの拍手が恥ずかしかったです」


 カゼユキの座っている座席にだけで艦首コイルガンを発射させる引き金となるつまみのついた大きな赤いボタンが取り付けられている。


 艦首砲の発射を任されカゼユキは部屋にいた皆に囲まれ見守られながらコイルガンの発射ボタンを押したときのことを思い出し赤面した。


「しっかりで来たならほめてあげないとね、ほらコーヒーは嫌いかな? もう演習は終わってこれ飲んでゆっくりしてな」

「子供じゃないんですから、坊ちゃんというのもやめていただけると……。コーヒーありがとうございます、いただきます」


「子供扱いするなって? 何言ってんだい、あんたは私らの半分も生きていないんだから、子供みたいなものじゃないか、なぁに言ってんだい」

「二度も言わなくても。年齢はどうしようもないことですけど、それでも大人として扱ってもらえると」


 カゼユキをからかい老婆は元気に笑って自分の席へと戻っていく。

 周りが静かになり小さくため息をつくとカゼユキは改めて船体各部の映像へと意識を向けた。


「キール及び装甲板に損傷なし、居住区画及び船内にアラート箇所なし。せ、船体に異常なし」

「古株の婆様にからかわれて動揺しているな。いかなることがあっても平常心だ、動揺はミスを誘う」


 白髪の老人が戻ってきてカゼユキの隣で作業に戻る。


「艦内の状態をファイルにまとめたら指揮室へと遅れ。それで俺らの仕事は終わりだ」

「はい、ファイルを指揮室に送ります」


「提出が終わったら先に上がっていいぞカゼユキ君。もう今日はここですることはない。元気があるなら部屋の掃除をしてくれ」

「了解です、なら掃除して上がらせていただきます」


 席を立ったカゼユキはふと思った疑問を投げかける。


「そういえば戦闘指揮室と射撃管制室って役割っておんなじじゃないんですか?」

「ああ一緒だ、指揮室でも艦首コイルガンは撃てるし、ここで指揮も取れるぞ。ここは砲艦に改装されたときに後付けされたハイテク設備の第二指揮室だったんだが。星軍のお偉いさんが最新設備が詰まったここを何かあったときの予備の第二指揮室扱いされるのを嫌がったのと」


「ならなぜ、二つに分けたんですか?」

「軍艦ってこともあっても霜に備えてってこともそうだが、砲艦にしてレーダーや、動力炉、船体損傷の検知システムなど増設された影響で指揮室での業務が増えて、部屋に人数が入りきらなくなったからだな。指揮室は他の艦とのやり取りと戦闘に集中、外の仕事だな。ここは艦内所情報の整理、船内でのやり取りっていう分担作業が今の役割だな」


「答えていただきありがとうございました」

「おお、風邪ひくなよ」

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