表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
34/176

迷い星 10

 シリウス艦内、演習中の砲室。


『第一射、砲弾発射を確認。弾道安定、直撃コースに乗った。訓練弾、次弾装填を』


 宇宙服のスピーカーから指揮室からの指示が飛んでくる。


『了解、ほら次弾装填だ! 急げよ!』


 キワケの指示で作業艇が二つ連結された貨車を引いて壁へと向かって行く。

 鎖を外し砲弾を作業艇に搭載されているドローンのアームでつかみ動かして、砲弾を貨車に乗せると乗せられた砲弾は磁力とベルトによって貨車の上に固定される。


 貨車にはゴム製のタイヤが付いており、二両の作業艇が出力全開でスラスターをふかして引っ張ることでタイヤが動き貨車が少しずつ進みだした。


「キワケさんこの砲弾、転がすか、無重力状態で浮かばせて運んだほうが楽なんじゃないですか」

『確かに浮かばせたりしたほうがその砲弾は運びやすいだろう。なんせアカツキが昨日遊んでいた磁力で床にくっつくようにもなっているからなちょっとやそっとじゃ動きもせん。もしこの部屋内を跳ね回るようなことがあったら、振動爆弾などは電子システムを起動させないと爆破しないにしても衝突の衝撃に床が持たんな』


「この砲弾、磁力で床に引っ張られてるってことですか?」

『砲弾だけではないな、その下の貨車もだ。床は無重力下の時に宇宙服で掴まり歩けるように当然、金属の板が入っている。砲弾も固めた石ころに金属が巻かれている。コイルガンは磁力で撃ち出すのだからな、だからその貨車で両方を引っ張り合わせている。さぁ、おしゃべりはおしまいだ、運べ!』


 作業艇は二両とも推進剤で浮かんでいるため不安定にグラグラと揺れるが、引っ張られる貨車は非常にゆっくりと動いている。

 やっとのことで運んできた砲弾を、乗せた時同様にドローンを操作し貨車から外し床の窪みへと下ろす。


『よしさっきと同じで砲弾を押し込め!』


 作業艇に乗らず指示を出していたキワケが宇宙服の大きな手袋を伸ばして壁に半分ほど埋め込まれた装置を操作で扉が開き砲弾が入る穴が開く。


 貨車をどけて開いた穴へと向かってドローンのアームで支えながら作業艇は砲弾を押す。

 貨車に乗っていないためより動かなくなる砲弾を強引に穴の奥へと押し入れていく。


『あまり時間をかけるな、推進剤を使い切るぞ!』


 砲弾を押し込み終えるとキワケ操作で閉鎖機を下ろしロックをかける。

 別の回線で話しているのかキワケの口が動いているがアカツキには何も聞こえず何かを放し終えるとキワケがアカツキの作業艇へと戻ってきて乗り込む。


『引き続き砲撃を開始します。総員、衝撃に注意してください』


 その数秒後、船体が揺れ作業艇に乗っていたアカツキの一瞬視界がぶれる。


『さぁ、次だ。もう三度目だ、俺が何も言わなくてもできるな! 俺はここで見ているからお前らたちでやって見せろ!』


 砲撃時の振動をスラスターをふかして浮遊する作業艇に乗り込み避けたキワケは、作業艇から降り再びパネルのほうへと歩いていった。


 二つの作業艇は習った通りに演習用の砲弾を貨車へと乗せ窪みの位置まで運んでいき、扉が開くとその奥へと砲弾を押し込む。

 そして扉が閉まりキワケがどこかと通信しながら作業艇へと乗り込んでくる。


『本当は同じ作業がもっと続くんだが、演習は短縮されてこれで終わるはずだ。演習終了の放送が流れたら待機室へと戻るぞ。今日の仕事は終わりだ、多分この後いつもの作業には戻らんだろう』


 船体が揺れると演習の終了のアナウンスが流れた。


『砲撃終了、戦場から撤収のため船体を元に戻します。戦闘区域からでるまで。作業の手を止め、何かに掴まってください。船体をもとの向きに直したのち加速します。演習終了後のこのまま当艦隊はコロニーの移送の手伝いのためシンギュラリティゲートへと向かいます。そのため加速が終わるまで部屋にとどまり廊下には命綱なしで出ないようお願いします。演習後は各自通常業務に戻り仕事をしてください、艦内回転シフト終業時刻に加速を止めますのでその時に食事や睡眠のための移動をお願いします』


 ゆっくりと船体の角度が変わり、作業艇は砲室を出て倉庫内を移動する。


『終わったからって早く帰って休もうなんてするな、ゆっくり帰れよ。今この船の中は艦首と艦尾が動いていて疑似重力が場所によって変わるからな。スラスターの出力を気を付けないとひっくり返るぞ』

「了解です」


『さぁ、仕事もないし戻ったら寝るかな』

「これそのうち怒られたりしないんですかね。皆が仕事中に」


『いっつもそればかり気にしているなアカツキは。仕事ができないんだから仕方ないだろう。それに俺らは宇宙空間で作業しているんだ。この艦、この船の中じゃ一番危険な場所で働いているんだ少しくらいさぼったって大丈夫だ、それにヨド船長だって俺の仕事に知っていて口は出してこない。なんたってちゃんと仕事をしているからな』


 話している間に艦内へとつながるハッチの前へとたどり着き、作業艇を止めて二人は別々のハッチの中へと入っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ