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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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迷い星 2

 作業艇は壁を離れナキリの荒っぽい操縦で移動させるコンテナのほうへと降りていく。


『作業ドローンの操作はできるな?』

「いや、できません。コロニーで作業用のクレーンとかなら操縦を習いましたけど、作業艇に乗ること自体初めてです」


『なら覚えろ、さほど変わらん。そこにある座席に座り画面を見ながらペダルを踏みアームを引き寄せろ。そしたらコンテナをつかんで移動させればいい』

「これって資格とか必要な奴じゃ」


『こんなのに資格なんているかよ、子供のおもちゃでも似たようなものが売ってるぞ。とりあえず使え、そうすりゃわかる』

「わかりました」


 いわれるがままに座席に座りアカツキは背もたれから延びるアームを手元へと引き寄せる。

 席の前には小さな画面があり、作業艇の後ろについている作業ドローンの手先が映っていた。

 アームの先にグローブが付いておりグローブをはめると、作業艇の作業アームと動きが連動して動き出しペダルを踏むとドローンが前進し目の前のコンテナへと向かう。


『まだコンテナの接続を解除しとらん、コンテナの向こうは空気の入った倉庫だ人もいる。俺の合図があるまでコンテナをつかむな』

「わかりました」


 かくしてアカツキたち新兵たちは各部署に振り分けられ出航までの間新たな仕事を任される。




―――




 休憩時間が終わり指揮室は仕事モードに入ったオペレーターたちが、目の前に並ぶ複数の計器のチェックをし所狭しと並ぶボタンをバチンバチンと跳ね上げていく。

 スクロールデバイスで時間を確認するとシリウスS1001の艦長ヨドは大きな伸びをする。


「ふぁ~あ、体がなまっちまうな。それでは時間だな、出航する」


 オペレーターが港へと連絡を取り、別のオペレーターが別の部屋に連絡を取り始めた。


「了解。これよりシリウスs1001は抜錨! 港を離れ演習宙域へと向かう」

「港へと連絡しました。これから曳航され港の外まで運ばれます」




 ゴウンという重たい音がどこからか響き船が揺れた。


 船体から離れ宙に浮かぶ作業艇に乗って宇宙服を着て作業していたアカツキには音は聞こえなかったが、視界の先が振動でぶれた。

 艦内にマイクのハウリングが鳴り作業をしているアカツキたちにも艦長の声が響くと、皆作業の手を止め耳を傾ける。


『さて、皆仕事になじんできたころ合いだろう。我々はここから木星行きゲートへと向かい、木星からさらにゲートを通り前線に近い海王星コロニー群付近のゲート出口から出て演習を行う宙域へと向かう。演習の終了までこの船は港に戻ることはなく、途中何度か士官とマスメディアの視察が行われる。今日から働く新兵たちはただの訓練だと気を抜かないように、第二世代が主役だろうがだからと言って手を抜けばばれる。前コロニーに恥をさらしたくなければ真面目に働くように』


 艦内放送が終わるとアカツキたち以外のコンテナ整理をしていた作業艇たちは搭乗ハッチのある場所へと戻っていく。


『今日の仕事は終わりだ。加速が安定するまでこれ以上仕事はできないからな。推進剤を無駄遣いできん』

「わかりました」


 ナキリの操縦する作業艇も荒い操縦で壁へと向かう。


 作業艇はハッチ前に止めると長細い船体を装甲内の停泊所に固定し、ナキリは作業艇のエンジンを切りハッチの中へと入っていく。

 後に続いて別のハッチへと入ろうとしアカツキは強い揺れにふらついた。


「何の揺れだ!?」


 ハッチへと向かう足を止め何か事故かと作業艇の窓から倉庫を見渡す。

 シリウスは曳航されて港の外へと運ばれて行く途中、船尾の搬入口から離れていく港が見え船が動き出した揺れだとわかり胸をなでおろす。


『アカツキさんどうかしましたか? 回収の準備はできていますどうぞハッチへ』

「え、あっ、いやなんでもないです。今行きます」


 ぼーっと外を眺めていたアカツキは慌ててハッチへと飛び込む。

 来た時と同じ小さな部屋の中、頑丈そうな扉で閉ざされ少し待たされる。


『お疲れさまでした。どうでしたか初日は?』

「いきなりでびっくりしましたが、何とかできそうです」


『厳しいようならば他の職場を紹介できます。とはいっても空きができた部署で人員の交換となりますけど』

「ありがとうございます、でも何とか続けて行けそうです」


 話している間に入り口だった上のハッチが開く。

 ハッチの中に降りてきて一人では外せないようにできているヘルメットを外し、同じく背中のファスナーを下げてもらう。

 空調を伝って艦内全体に流れる香りにアカツキは大きく深呼吸した。


「軍用の宇宙服を使うのは初めてですか?」

「ふぅ、普通の宇宙服と違って動きに癖があって。強化外骨格の重さも」


「この船に乗った以上慣れる必要のある装備ですから。後片付けはやっておきますので、上に上がって休んでいてください」


 床を蹴ってハッチの上へと上がり。

 宇宙服で顔がよく見えなかったがキワケと思われる大男がチューブ飲料を飲みながら近寄ってくる。


「お疲れ新入り、名前なんだっけか。加速が安定したらまた作業に戻るからな」

「わかりました。セキショウ・アカツキです」


「船長……艦長と同じ苗字か覚えやすいな」

「息子です」


「おお! そうか、息子か! そうかそうか、そういえば見たことのある顔だな! そういえば二人ほど子供がいたな、長男か」

「兄はカゼユキです。別の場所で働いていると思います」


「間違ったか、すまんな!」


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