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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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そらの彼方へ 6

 食堂を出てあちこちでサインをもらい続けてどのくらいたったか、三人はシリウスの船体の下方まで来ていた。


「はいお疲れ様、あと少し頑張ってね」

「なんかここいい匂いしますね? 薬のにおいじゃなくて」


「宇宙船ってのは大きな密室だからね、消毒や抗菌してても人の臭いはこもる。艦内の空調を使ってアロマの香りを全体に送っているんですよ、汗臭い臭いで充満した場所で働くの嫌でしょう」

「なるほど」


 医務室を出て何人はデバイスに書いてもらったスタンプラリーのサインの数を確認する。


「あと一か所か?」

「なんか疲れてきたよ」

「久々に上がった宇宙に体が慣れていないんだ。ふぅ、もう一息だ頑張ろう」


 船内各所をまわり最後となる第二の核融合炉へとたどり付き、厳重な扉の前でアカツキたち三人はサインをもらう。


「ほぉ、ここで最後か。よく頑張ったな、上に戻って居住区画で出航まで休むといい。展望室から外が見えるぞ」

「ありがとうございます」


 サインを受け取りスクロールデバイスを受け取りポケットにしまうとアカツキは大きく息を吐き体を伸ばす。

 その横で扉を見ていたエトワールが自分のスクロールデバイスにサインを書いているものに訪ねる。


「なんで、砲艦って核融合炉を二つも載せているんですか? どちらかが壊れた時の保険ですか?」

「ああ、いや。増設されたのは砲艦に改装された時で、もともとは上部の一基のみだったんだよ。大きな船体を動かすための電力を生む核融合炉だけで、もともとは艦首コイルガンを使うときは推進器を止めすべての電力をそちらに回していたからね。移動しながらのコンテナ……今は砲弾の発射は、砲艦に改装されてから行われるようになったからね。どちらにも電力を送り続けるには一基じゃ発電できる電力が足りなかったんだ。宇宙船に乗せるためのサイズの小さい融合炉だから、電力はそれほど大きな電力を発電できなかったんだよ」


「そうだったんですね」

「それに一基でも艦首のコイルガンを攻撃用に使うには必要な威力になるまでの電力が足りなかったんだ。そのための追加の核融合炉をこの下に増設したってのがこの下層の核融合炉だ」


「質問に答えていただいてありがとうございます」

「うい、これからしっかり頼むぞ若いの」


 スタンプラリーが終わり三人は来た道を戻り始める。

 歩く必要はなく壁や床を蹴って通路を漂う。


「ふぅ、やっと終わるのか」

「大きい船だったね。集合は上の食堂か、来た道を考えると距離が遠いな」


「装甲の下がスカスカとはいえ、上部構造物が三階、中央は広い筒状の空間、下層が二階建て」

「シリウスの長さは六百メートル、高さは百メートル少しだった気がするね。何度も言うけどこうして中を隅々まで移動して本当に大きな船だと再確認できたよ」


「こりゃ作業より移動が大変そうだ。しっかし無重力も楽じゃないな、手すりがないから掴まるものもないし、壁に手をついて床を蹴らないといけない。しかも無重力でしばらくするとどっちが上だかわからなくなる」

「出航までの辛抱だよ、出航すれば慣性で疑似重力が生まれる。人口の重力さえ埋まれば床を歩くこともできるから。ところでエト、自分の力で進んでくれないかな」


 カゼユキの肩に掴まりぶら下がるように無重力化を移動するエトワール。


「硬いこと言わないでよ、これが楽だからそれに道に広がると他の人の邪魔になるでしょ」


 アカツキたちとすれ違うように他の新兵が核融合炉前へと向かって行く。


「通路も広いけど、何人も横並びで移動できる幅じゃないしね。誰かに引っ張っていってもらう、これが無重力下で一番邪魔にならないクールな移動方法だよ」

「いい感じに言いくるめられたなカゼユキ」


 食堂へと戻ってくるとオオガマはスクロールデバイスを広げ机に肘をついて動画を見てスタンプラリーへと向かった新人が帰ってくるまれ時間をつぶしていた。


「戻りました」

「お、おお~。お疲れさま、君らが一番だ。んじゃぁ、確認を取るからスクロールデバイスをこちらへ」


 スクロールデバイスに書かれたサインを先輩の船員へと見せ確認を取ってもらう。


「はい、おつかれぇ、スタンプラリーこれにて終了だデータも転送したしこの船のクルーとの必要な限りの顔合わせも済んだ。あとは君らが前もって希望しておいた役職に就けるかそれとも人材不足のところに補填されるか運しだいってところをまぁ祈ってくれ。これ、ロッカーの鍵ねなくさないようにね」


 スタンプラリーで集めたサインの情報を自分のスクロールデバイスに記録すると、どこかへと転送して画面をたたみスクロールデバイスを三人へと返す。

 返却される三人のスクロールデバイスとゴムひものついた金属の鍵。


「それじゃあ、言われていた課題は一週間に一度出されるので次の課題が出される前に提出すること」


「課題、エトワールの奴か」

「忘れてたね」


 食堂を出て寝所のあるシリウスの船体上部構造物の端へと向かう。


 今はみんな持ち場の近くにいるためそこは人の気配がなく空調の音以外は静寂。

 男女別の寝所でアカツキたちはエトワールと別れ奥へと進む。


「ロッカーの数少ないな、全部で三十くらいしかないぞ?」

「大きな船だし寝所もいくつかの場所に分かれているんじゃないのかな? そもそも、改装前は民間船だし部屋の数は多いはず、ここだけにみんなが集まるってものおかしな話でしょアカツキ」


 壁に埋め込まれたベットとその横に同じく埋め込まれたロッカーが、個人ごとに一つずつありアカツキとカゼユキは自分の別途を探した。

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