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異邦者との最終決戦 5


『先を行った第三世代らが攻撃開始』

『後方より第四世代接近、向こうの方が早いですが速度差があまりないので追い抜くのには時間がかかりそうです』


加速で生まれている強い疑似重力で座席に押し付けられるのを耐えながら皆がモニターを見る。

推進器の取り換えなどで遅れた後続が時折シリウスを追い抜かし彗星を追いかけ、それらを待たず一斉に放たれる砲弾。

すぐに宇宙の黒い背景に消えて見えなくなるが第一世代のコイルガンの砲弾には発信機が付いているためレーダー上に光点が映る。


『砲弾、彗星命中まで三十分』

『お、追いながら撃ち出して威力はあるの?』

『……核ですのでその心配はありません』


彗星の一部がねじ切れるようにして分離し小さいほうが後方に残る。


『彗星の一部が分離』

『ふた、二手に分かれる気? 向こうも生き残るために必死って感じだ。……今追うのでさえ手一杯なのに、私たちは足の遅いほうを追わないと追いつけない』


艦内での問題はなく手の空いているアセビはモニターをながめ攻撃が当たるのを祈る。


『月司令本部から、高出力クリアランス搭載型シリウスと月周辺に集めた太陽光増幅集光パネル、マイクロ波送電基地によるエネルギー兵器の射程に入り次第攻撃を行うため接近しすぎに注意との警告』

『もう最終防衛ラインが近いの!? 攻撃はどうなったの』


チカッとモニター越しに残された彗星の破片が眩く光る。

補正で光量の強い光は自動で暗い色に置き換えられ、遅れて外を映すモニターが眩い白に覆われた。


『な、何の光です!?』

『後方に残された破片が爆発、彗星さらに加速!』

『余波が前線艦隊を飲み込みます!』


カメラの映像が乱れ、味方の位置を示すレーダーの光点が一斉に消えていく。

前線の映像が途切れ望遠レンズのカメラに皆の視線が動く。

彗星のいた個所を中心に白い球体が大きくなって艦隊を飲み込み追いかけているシリウスに迫っていた。


『前線の艦隊と連絡が取れません』

『まもなく余波、来ます!』

『衝撃に備えるように伝えて!』


彗星が放っていた霧と同じような白い粒子が全方位へと巨大な球体の様に広がり彗星を追いかける艦艇を正面から飲み込んでいった。

軽量なコールサックは衝撃で大きく破損し、シリウスの艦内の通路や装甲版の層んしょうを知らせるセンサーも一瞬でオレンジや赤に切り替わる。

シリウスも激しい揺れに襲われコールサックと繋がれていたケーブルが切れ。


『放熱板、すべて破断しました冷却システムに深刻なダメージ』『衝撃で融合炉緊急停止!』『レーダー及び外部カメラの八割の機能消失』


砂嵐まみれで映らなくなったカメラの画像は動けるオペレータたちによって切り替えられていく。

コールサックは衝撃で大きく潰れ装甲版に大きな亀裂が走っている。

緊急時の動力炉の停止で推進器は停止しており、呼びかけても返事はなくシリウスから離れていく。


『どのコールサックからの応答なし……』

『管制室から、彗星を追えと連絡が来ています』

『わかりました、動力炉の再稼働までにケーブルを外してください』


彗星の爆発の余波は後続にも被害を出し復帰し前線に向かっていた多くの艦艇が再び行動不能に陥る。

前線に追いついていた第二世代を中心に艦隊が組み直され彗星を追う。


自身の一部を切り離して爆破させて以降、彗星は加速せずにまっすぐ地球へと向かっていた。

月にある指令本部からの指示で集められたマイクロ波送電網らの攻撃が始まる。

それ一つで大陸一つ分、複数のコロニーに電力を供給する太陽付近の大量の太陽光パネルによる莫大な電力を生み出しそれをお太陽系中に送り出す巨大装置。

もう一つは太陽から離れその光の弱まりを解消するために光を反射させ火星や小惑星などに小型コロニーを作って暮らすものらへの居住環境に気温の安定をもたらせる何百枚もの巨大鏡。


もともとは最後の戦いでも止めきれずその場合の小惑星だった頃の殻を破壊するために要していたものだったが、現在の彗星自体が膨大の熱を持ち白く輝いているため効果は不明でデブリ破壊用に備えていたクリアランス搭載型のシリウスもまた同じ。


『月本部周辺で攻撃が開始されました……ですが効果は微々たるものと』

『いそげ、いそげ、月が地球が、火星みたいになる』

『現在艦内温度43度、冷却装置十分な機能せず』


『艦長、射撃管制室からの通信です。直接つないでくれと』

『わかりました、こちらにつないで』


加速の疑似重力で破損個所の修復にも行けずアセビはただ、ダメージを受けて赤やオレンジ色に光る画面を眺めるだけ。

再編成された複数の世代が混じった艦体も百にも満たない小規模なものが4つ、どれも万全の状態ではなくこのシリウス改良型も装甲版の亀裂と放熱板を失っている状態。


少しして艦長は皆に伝える。


『このままだとおそらく攻撃ができる機会は一度だけ、戦艦級が生み出されておらず艦隊間の交信も最低限。加速も十分で戦闘には姿勢制御だけ注意すればいい、そのためほとんどの人員はこの船に不要となるため避難できる今のうちに最低限の人員を残し本艦から離脱してもらいたい。艦隊は密集陣形ではあるが船の数は少なく避難ポットが抜けられるスペースは十分にある。ということで、余っている人材はすぐに格納庫へと向かい避難を始めてほしい』

『現在艦内は損傷個所が多いです、危険波とは通らず遠回りしても安全な道を進んでください』


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