異邦者との最終決戦 4
彗星の予想外の行動に月面にある作戦本部、各世代の艦隊の指揮官、各船の艦長など各所で彗星を追うのか残された岩盤から生まれる戦艦級の対処をするのかの混乱が起きた。
追撃を行なおうとしている艦艇は、武装は無事だが推進器が損傷した船が武装が破損した船から推進器の提供を求める呼びかけが行われている。
それらは短距離通信で彗星を追いかけ離れるにつれ、慌ただしい通信も数が減っていく。
彗星を追いかけている船の推進器から延びる白い尾が延びて、何千もの白い帯がまっすぐと光り輝く塊を追いかけていた。
岩石の殻から這い出た彗星の本体はまっすぐ地球へと向かっていて、それを阻止すべく全速力で星軍艦艇は追いかけている。
『加速に付き現在艦内疑似重力4Gを計測中』
皆座席に座り背もたれに押し倒される力を感じながら歯を食いしばって腕を伸ばし仕事をこなす。
『大丈夫アセビ』
「はい、訓練は受けてきましたけど……こう長く続くと指先に血が回らなくなって辛いですね」
『宇宙服の圧迫でも毛細血管まで血が届いてないからね、適度に腕を降ろして血を回さないと血が止まって壊死するからしびれたらすぐ作業を止めて』
「はい」
今はもう粒子の霧もなく船体は安定した状態で推進器にも問題はない。
しかし砲身の延長や追加の装甲など改良したことからただでさえ重たく遅い第一世代のシリウスは、改装前のシリウスやカストルに追い抜かれていき艦隊後方を追っている状態。
取り残された船を数えるとシリウス改の残存数は四十隻ほど、何らかの損傷は受けながらも最大加速で彗星を追いかけている。
『後方よりコールサックが来ます』
彗星の放つ粒子の霧の中を進めず作戦領域外から通信の中継や補給船の誘導を行っていたコールサックが追いついてきた。
高速戦闘で戦艦級らを排除できるようになった第三世代ができてから修理や整備を後回しにされ何年も前の傷が装甲版に残っているような彗星との戦争初期から活躍してきた船たち。
現在はミサイルコンテナもなく戦場から離れ重量軽減のために唯一あった小さな砲塔もなくなったただの高速艇。
身軽で軽量な分あっという間に追いつき、加速を続けているシリウス改たちと速度を合わせる。
『これより曳航のため牽引ロープとつなぐ作業にかかります』
『一時加速を緩めます。それでも加速しながらの作業です、気を付けて』
三隻のコールサックが加速の補助のため巨船に鋼鉄のロープをつなぐ。
その作業の間、強かった疑似重力は弱まり座席に固定されていたオペレーターたちは順番に席を立ち体操などをして偏った血を全身に巡らせる。
『現在艦内は1G前後をキープ』
『後方から第三世代が来ます、こちらを避けて向かっているようで衝突の恐れはないです』
高速戦闘型である第三世代、最初に中型のアルタイルが先を行き、あとから大型のカノープス、アルビレオがシリウスを追い抜いていく。
数百メートルの巨船も何百何千キロと離れてしまえばカメラの望遠機能を使っても視認することも難しく小さな点の集合体にしか見えない。
第三世代らが残す推進器から出る残留物が飛行機雲のように残り、広く散ってしまう前にシリウス改への牽引ロープをつなぐ作業が終わる。
『牽引ロープ、接続終わりました』
『十五分後に加速を開始するので推進器の出力を合わせてほしいと』
その情報は艦内に流されて短い休息は終わり、休んでいたものたちは持ち場へと戻っていった。
再び船にかかる疑似重力が大きくなっていき、コールサックによる加速の補助で先ほどより強い力がアセビ達にかかる。
戦闘もなく再びただ疑似重力に耐える時間が続く。
後方から鈍重だが大型の推進器が他艦艇より多く積まれている第二世代が追いついて来た。
『先を行った第三世代がもうじき交戦を開始するそうです』
『第一世代も追い抜いたか、やっぱり早いな。戦闘状況の画面の共有はできるのか?』
『8番モニターに表示します』
壁に張られたモニターの一枚に別の船の映像が映される。
迫ったとはいえ小さくなった彗星と長い射程距離から画面いっぱいに彗星が映るということはなく、画面中央で小さく光り輝く塊が自らの揮発させて推進力を生み出し地球へと向かっていた。
『彗星の核は大陸ほどのサイズになっているようですね、輝いているのと徐々に小さくなっているせいで正確なサイズはまだ出ていないようですが』
『た、大陸程度の大きさなら数千隻の攻撃を受ければ壊せそうですね』
『観測衛星からの情報だと放電現象の確認と電磁波などが放出されていて接近しすぎるとシステムに影響が出るようです』
威力が低いが多数の砲塔を持つ第三世代。
電磁波の影響で照準が合わなくても手数で当てに行く。
残存した第三世代は攻撃準備が整った順に集まり艦隊を組む、彗星自体が攻撃してこないこともあり第三世代と先を行った第一世代が艦隊に合流する。




