異邦者との最終決戦 1
彗星を追いかけ止まることなく進み続けながら集結するシリウスら彗星攻撃艦隊。
地球へと向かう彗星と並走シリウス改を中心にシリウス、カストル、カストル改が輪を描くように並び攻撃開始の指示を待つ。
『コメット到達まで一時間三十分! メテオロイド到達まで二時間と五分!』
『光信号での通信です。一時間後コメット着弾後に彗星の巨大砲塔への集中攻撃を開始すると』
指揮権が別の船に移ったことで緊張の糸が切れて気の抜けた艦長が指示を出す。
『艦内に連絡。三十分後に戦闘配置、皆さん頑張りましょう』
コロニーと軍事基地に推進器を取り付け彗星に体当たりさせるその攻撃時間が近づいており砲撃艦隊は配置につき攻撃まで待機命令を受ける。
壁に張られたモニターには彗星の放つ霧で白くもやがかかるようにかすんでいるが、遠くで戦艦級らを引き付け戦っている第二世代、第三世代、第四世代の攻撃がちかちかと瞬いていた。
艦隊間の通信を終え攻撃時間を待っているアカツキに指揮室から連絡が来る。
『今お時間よろしいですか副艦長』
「ああ、大丈夫です。そちらで何か問題でも?」
『本部が攻撃はメテオロイドがぶつかった後と言っていましたが、彗星がメテオロイド攻撃しそれらが破壊されたら意味がないのでは? コロニーを三つも使った大質量攻撃が無駄になってしまうのでは?』
「攻撃は時間差で当たるようになっている、距離的にメテオロイドとコメットを二つを同時に破壊することはできない。それに本部はメテオロイドに向かって撃たせることでこちらの船の損失を抑えようとしているらしいな」
『なるほど、強力な一撃より第一世代の攻撃の方が重要と』
「アステロイド防衛線で彗星が撃ったとき、大きくエネルギー量の反応が低下していた。向こうも捨て身の攻撃なんだろう。現にその攻撃をした方の彗星は集中攻撃があったとはいえ破壊しているしな」
『もし彗星が砲撃を撃たなかったら?』
「ならメテオロイドとこちらの砲撃、コメットの攻撃を受けることになって今まで破壊した二つの彗星の耐久力から分析して彗星は破壊できると考えられているな。現在彗星は回避行動も見られないし、ここ数週間で攻撃が激しくなったから向こうは守りに入り彗星はまだメテオロイドの存在に気が付いてはいないと本部は言っていた。でもまぁ彗星は戦艦級らを通じてそれに気が付いてメテオロイドを撃ち落とすために砲撃の準備を始めたと考えた方が自然だろうな、何であれあの砲撃がこちらに向く可能性は低いと考えたほうがいいでしょう」
『あ、ありがとうございました』
「いいや、そちらも親の都合で押し付けられる形で艦長をやっているのは知っているよ。わからないことがあったら聞いてくれ。っと、そろそろ休み時間に行かせてもらっていいかな、空腹で攻撃前に何か腹に入れておきたい」
総攻撃を始める前の最後の休憩でアセビは指揮室を出て壁や床を蹴りながら食堂へと向かう。
戦闘の後にもかかわらず艦内は落ち着いていて、皆先ほどの戦闘のこととこれからのことを確認するように話し合っている。
アセビは食堂につくと部屋の中を見回してタイホウを探した。
「まだ、いないか。同じ時間になるとも限らないか」
「きょろきょろして誰を探してるんだ?」
「いたよ」
「誰が、俺か?」
「一緒にご飯食べようよ、指揮室で知り合った人は私と交代で仕事に戻っちゃったからこの船に知り合いがいないんだ」
「アセビのお父さんがいるだろ、さっき休憩に行ったからどこかに……」
「やだよ。最後の戦闘になるかもしれないのにお父さんの顔を見ながら、話すこともないし……いや、戦いが終わればいつでも会えるってことだからね。私は年の近いタイホウとご飯が食べたいの」
自販機で真空パックに入った食べ物と飲み物を買い金属のお盆に乗せちょうどよく空いた席に着く。
封を開け封の下から指で焼き魚を押し上げる手が汚れないようにして食べる。
「ちゃんと箸を使った食事が恋しいな」
「ジャンクフードみたいに食べやすくていいけどな」
「固形のものか粘土状が液体しか食べられないじゃない、ちゃんとした料理」
「パスタも焼き魚もラーメンもちゃんとした料理だと思うんだけどな」
「ほとんどレトルトじゃない。人の温かみを感じない」
「栄養だってちゃんとあるしおいしいし、でもまぁ言われてみればアセビが作った料理と比べたら一つ一つ袋に入った食事は味気ないか」
「でしょう、料理はおばあちゃん仕込みよ。宇宙でも疑似重力があれば料理ができるらしいけど、この船厨房とか見当たらなし地球に帰れるまで作れないんだろうなぁ」
「前に作ってくれた弁当はすごくうまかったな」
「いつのか知らないけど、ちゃんと全部食べてくれるから作り甲斐はあったよ。戦いが終わったら筋力回復期間にハイキングにでも行ってまたご馳走してあげるね」
「ああ、楽しみにしておく」
「景色がいいところがいいな、私が料理を作るからそういうとこ調べておいてね」
「わかった」




