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星の海を仰ぐ 3

案内役の男はアセビが荷物を部屋にしまい振り返ると去っていた。


「なんだったんだ? すごい雑な……えっとじゃあ、部署に向かおうか」

「通気口からなんかいい匂いする、宇宙船は潜水艦と同じで空気が入れ替わらないから芳香剤で匂いを付けた空気を流してるって」


「なんでわざわざ匂いが付いているんだ?」

「風を吹かせると無重力で浮かんでる私らが吹き飛ばされるから微風なの。避難船の空調は壊れてたからか空気の循環はしていたみたいだけど匂いはなかったね」


他の新人たちも戸惑いながら自分の働く部署へと向かい始めスクロールデバイスを取り出し二人も白い通路を移動を始める。

もともとが六百メートルある巨船、半分は巨大コイルガンの砲身とはいえ生活スペースが三百メートルほどあり階層に分かれていて慣れないうちの移動は地図が必要だった。


「大型化しても人の入らない砲身の延長と追加の推進器。あんまり人の生活スペースは変わらないのな」

「砲身伸ばして攻撃力は上がるの? 結局のところ彗星を削らないと壊せないんでしょ。この船だけが攻撃力を上げたくらいで何か変わるの」


部屋の大きさに合わせて扉の間隔が変わり、一定の間隔で通路には隔壁がある。

二人は見慣れない地図を頼りに進路上の部屋を見て回りながら配置へと向かう。


「砲身延長されてるのはこの船だけじゃないんだけどな」

「じゃぁ、私は上だからこっちだね。指揮室だから」


タイホウと別れてアセビは上へと向かう通路へと進む。

他の部屋より頑丈そうな扉をした部屋の前で止まりアセビは深呼吸をすると、スクロールデバイスをしまって二重扉を開きアセビは指揮室へと入る。

部屋のほどんどにシート状のモニターが壁に張られた機械の多い部屋。


「オペレーター、セキショウアセビ着任しました。よろしくお願いします」

「ん、よく来た。成績や訓練校の評価は届いている。席は空いているそこで。なにぶん第四世台に人が取られて人手不足だから、即戦力であることを期待するよ。宇宙服はそこに並んでいる奴の。わからないことがあればすぐに聞くように」


「わかりました」


艦長も若くアセビより少し上くらいの年齢に見える程度、緊張の様子が見て取れ手には胃薬とチューブ飲料が握られていた。

アセビは指示された席に座りスクロールデバイスを広げ腕に巻きハーネスをつける。


「よろしくお願いします」

「よろしくアセビちゃん。あなたには艦内での通信役を任せます、フォルダー38の内容を読み上げて各方々に指示を出して」


先輩や同じく新人のオペレーターたちに挨拶をし無数のスイッチと跳ね上げ式のボタン並ぶ機材に向き合う。

戦闘の衝撃で外れないよう壁や天井にしっかりと固定された部屋を圧迫する大きな機械。

トラックボールで目の前の画面を操作し艦内通信用の画面に切り替えると咳ばらいをしてからアセビは自分の仕事を始める。


「こちらはシリウスs1001改指揮室。今から二時間後にこの船は出航、最後の戦場へと向かいます。我々の最初で最後の戦いです、この戦いに次はありません。この星を守るため頑張りましょう」



アセビの声は艦内中に響き射撃管制室にいたタイホウはその声に耳を傾けていた。


「おい聞いているかサドタイホウ?」

「あ、ああ、すみません」


「緊張するのはわかるがしっかり集中してくれよ。コイルガンの発射コンソールは君が持っている彗星への攻撃は君にかかっているんだ」


戦闘指揮室に何かトラブルがあった場合代わりに指揮を執る射撃管制室は部屋の真ん中に貨物船時代の名残である艦首コイルガンの専用の操作パネルがある。

長年戦い抜いてきた険しい顔に隈や血色の悪さが出ている副艦長がタイホウの肩を叩く。


「すみませんセキショウさん」

「今のはアセビの声だったな。結局船に乗ってしまったか、あれだけ言ったのに。上層部にもそれとなく言っていたのに」


「地球で待っているだけは嫌だと」

「知ってるよ、頻繁に連絡は取っていたんだ。少し前に喧嘩をしたが」


頭を搔きむしるとアカツキはどさりと副艦長の席に座る。


「怒ってはいませんでしたよ。向こうも言い過ぎたと反省していました」

「まぁ、戦場に着くまでにはあっておきたいな。さて説明の続きだ。砲手とはいえ君の仕事は基本的には仕事内容が一つ多いオペレーターとすることはさほど変わらない。操舵、空調や隔壁などの艦内システムの管理、艦内の通信、他の艦との通信、本部との通信とやることは多い。とはいえ新人にそこまで大きな仕事はないよ。とりあえずそこに座って君には港との物資の搬入状況の確認をしてもらおうか」


「わかりました」


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