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流れ星の天蓋 13 終

『早くしろアカツキ君、時間だ。もう五分しないうちに巨大岩石と衝突するぞ』

「もう終わる。というか、そのデブリは破壊されないでここまで来たのか」


『ゲートにもどのコロニーにもぶつからないで通り過ぎていくからスルーだそうだ。そのたまたまな道がこの船の進路と被ったが』

「何かの執念だな、戦艦級として活性化していないんだろ。壊されてなお彗星は人を狙うのか。完了だ、引っ張ってくれ。こっちは接続部を一回り見てからもどる」


『了解、それじゃ中型船を牽引するよ。ケーブルを巻く、巻き込まれるなよ』


コントロールを失っていた避難船はハレーにひかれて回転を停止し進路を修正する。

周囲を見れば間近に迫ったシンギュラリティゲートが正面に見え、背後からはゆっくりと百メートル程の巨大な岩が中型船へと向かって迫っていた。


「本当にかん一発だったな」


避難船が減速し何かを察したのか飛来するデブリの盾とするために船の下に隠れていた小型船がゲートへとむけて加速しだす。

避難船が減速したがゲートが近かったからか、星軍のハレー中型船を見て逃げたのか小型船は残ったすべての推進剤を使う勢いで目と鼻の先にあるゲートを目指した。


「中型船の下に潜んでた小型船が逃げ出したな」

『ん、いや、止めないと、今出ていくと……』


小型船は中型船を追い越し出会い頭に陰で隠れて見えていなかった巨大岩石へと音もなくぶつかって一瞬の火花を散らして消えた。


『反応ロスト、気に病むなよアカツキ君。彼らが自分で選んだ選択だ』


風船が破裂するように一瞬で弾け積み荷が散らばり、その一つがアカツキの乗る作業艇に張り付く。


「なんだ、アイドルのポスターか? 乗っていた奴は相当なアイドル好きだったんだな」

『救助できそうな人は見えたりは?』


「見えないな、速度的にも生きていそうにはないが」

『了解、曳航はしっかりできている。戻ってきてくれ。中が酸欠らしいから少し急がなければならない』


デブリはハレー中型船と避難船のそばを通り過ぎ彼方へと消えていった。


回転が止まり避難船はゲートへと向かう。

しかしアナウンスもなく皆が不安で騒いだこともあり船内の空気は薄くなっていて、皆の息が浅くなりほとんど物音が聞こえなくなっていた。


「……セキショウ、無事か?」

「……何とか、意識がもうろうとしてきた。何とかして守るんでしょ私を」


ぐったりとした様子で座席に座るアセビとタイホウ。

艦内の空気が薄くなってきており、騒いでいたものたちもだんだんと元気がなくなっていく。


「空気はなぁ……、こうならないための沈静ガスだし整備もままならない船に酸素ボンベ……トイレとか行ってみれば個室だから……もしかしたらまだ空気が」

「コントロール失ってたぽかった船のトイレにかぁ、……まぁ酸欠よりかましか、体重いなぁ」


不自然な角度でわずかな疑似重力を二人は席を立つ、座席に荷物を忘れるアセビのカバンをタイホウは持って避難船の通路を進む。

すでにアセビは意識が不安定で何度か手すりをつかみ損ね体を壁にぶつけていた。


「大丈夫か?」

「なんでそんなに、タイホウは元気なのさ」


「俺だってふらふらするけど、ここで気を失うわけにはいかない」


閉じた扉を叩き助けを求めている人がいた、ただ意識が放浪としているようで掃除用具入れに何かをぶつぶつと言っている。

二人が通路を進み個室であるトイレへと向かうが、そこはすでに人がおりすべての扉にはロックがかかっていて何人かが扉を破壊して中に入ろうとしていた。


「だめ、みたいだね」

「でもこっちはまだ人の数が少ないから酸素が濃い、もう少し先に行こう」


二人は隔壁が閉じかけたまま止まっていた貨物室の手前の通路で待機し目的地への到着を待つ。


「どこを見ても酸素ボンベはないか、船外活動用の宇宙服は客室とは別の業務員用通路だしなぁ」

「その扉、開かないの?」


「ああ、内部からしか開かない作りになってるから、向こうが開けてくれない限りは……星軍の兵士が乗ってるはずなのに誰も出てこないから、どうしようもないぜ」

「そっか」


壁に寄りかかるがほとんど重力のない状態で上下もわからないまま宙を漂う。

かろうじて動いていた空調が止まり服の擦れる音すら響く静寂だがもはや誰の声も聞こえてこない。

どれだけ立ったか少しして船内に風が吹きあちこち騒がしくなる。


『おい、君たち、大丈夫か? こっちだ、二人生存者がいる! 酸素マスクを二つ!』


宇宙服を着た誰かがタイホウの目にライトを当てて反応を確かめながら仲間を呼んでいた。

タイホウ達が気を失っている間に救助が到着しており、同じように気を失ったアセビが酸素マスクをつけられ運ばれていく。


「船は」

『地球に到着した、もう安心しろ』


その言葉をきいてタイホウは安心しもう一度気を失った。


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