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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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戦いをもたらすもの 9

 


 マーズアメリカコロニー基地。

 火星を照らす太陽光増幅集光パネル、マイクロ波送電基地、コロニー間レーザー光通信基地局とともに浮かぶ火星周辺にあるラグランジュポイントの一つに浮かぶ最古のコロニーの一つ。


 初期のゲートの出入り口として選ばれたアステロイドベルトとカイパーベルトでの資源採掘領域戦争を経て宇宙開発競争時に建造された巨大なシリンダー型の居住コロニー。

 火星開拓までの観測と物資輸送の中継地点として使われ、その後は火星へと工業製品を卸す一大工業都市が広がっている。


 バスを乗り継ぎ紙の書類で届いた地図を頼りに召集のかかった星軍の基地へと向かう。

 宇宙港へと続く大きな道から少し離れた個所にある、工業地帯の真ん中に空いた高い壁で囲われた開けた敷地。


 軍基地の周りに周囲の建物を使って、さまざまな言語で書かれたポスターや横断幕が張られているのをしり目に基地の入り口を目指す。

 アカツキとカゼユキ、それと同じように召集を受けて集まった星軍の隊員たちは目の前に見える横断幕など見えていないかのように立っている警備員に星軍の登録IDを見せて敷地内へと入った。


「外のあれなんだ? スターズアーミーがなんだって?」

「星軍の排斥運動だよ、利なることは書いてないし見ないほうがいい」


「なんだよそれ。彗星の襲来で毎日誰かしらが最前線で命がけで戦ってるってのに」

「個人でもしている人はいたはずだけど、この運動している大きな集団は天空教かなシンボルのマークは書いてないか。宇宙は神の領域としてそこを好き勝手荒らす者に天罰だの言うやつ。いつの時代にも出てくる人たちさ」


「ん? そいつらこのシェルターにいるんだよな……このコロニー宇宙に浮かんでるってこと知らないんじゃないのか?」

「地球からコロニー建造や惑星開拓で来た人らが地球に帰りたくて作った宗教だからね。今は最初の教えもどこかに行って、コロニーで暮らす自分たちには関係のない宇宙開拓のための高い税金を撤廃しろって騒ぐ人たち。戦争が始まっての増税で一気に入信者が増え力を付けたんだったかな」


「だからって、基地の目の前で好き勝手させてるのか?」

「彗星の排除で星軍の人手はほとんど冥王星より外側に向かって行ってるからね、落書きとか集会とかでけが人も出てないし設備が壊されたわけでもない。この基地も閑散としてるだろ。コロニーの警察も犯罪行為じゃないと取り締まれないし、嫌がらせをしているわけでもないし。基地の周りの建物は天空教が買い占めているんじゃないかな」


「文字もばらばらで、この国だけじゃなくてほかの国からも来てるんじゃないの?」

「かもね、自分が嫌なものを批判と排除をするのに国境なんてないんじゃないか?」


「そのエネルギーを彗星に向けてくれないのかね。あ、そういや、トロヤ・エウレカ開拓史博物館、この宙域だっけか?」

「小さいころに学校の行事で行ったね、小惑星に作られた歴史博物館。アカツキは宇宙遊泳ができなかったからほかの子と一緒に籠に入れられて先生に押されたね」


「笑うなよ、隣の奴が宇宙酔いで吐いて大惨事だったんだからな」


 施設の更衣室を借りて制服である宇宙行動服へと袖を通す。

 上下黒いタイツ、背中に星軍を示す太陽と錨をかたどった灰色の刺繍の入った雪のように白い水兵服に似たシャツに白いズボン。


 同じく白色のベルトを締め、手袋と上履きのようなデッキシューズを履き全身白づくめとなると袖にオレンジ色の所属を表す腕章をつける。


「下がスースーするよな、生地が薄いんだ」

「アカツキ、上着がずれてるよ普通の生活に慣れてたるんでるんじゃないか? 上官にどやされても知らないぞ」


「マジックテープはめんどくさいな、ベルトまでマジックテープにすることはないんだよ。……ああ引っ付く!」

「先に行くぞアカツキ」


 服装の乱れを直しアカツキはカゼユキの背中を追いかける。

 もともと宇宙で活動するのが星軍、基地内にあるのは講義を受ける部屋と体力作り用の道具しかない建物だけが並ぶ場所。


「建物は違うけど、設備は冥王星の基地と一緒か」

「僕らは砲艦での仕事が主だから、本当に最小限の設備しかないよ」


 集合場所を探しながらアカツキが覗いた部屋は、ボタンやスイッチで囲まれた机が壁沿いに並ぶ砲艦の指揮所を模した訓練室。


「ほ~ん。しっかり作りこんであるんだな……計器がせり出てて狭いな。本物もこんな狭いところで指揮を執るのか」

「アカツキは実物見たことないだろ? この部屋は指導員が訓練生の様子を見るために広く作られてて実際はもっと狭いよ」


「これより狭いって、デパートのトイレのほうが広いんじゃないのかよ?」

「座って計器を見られればいい部屋だから、間違っちゃいないけど他に言い方ないの」


「冥王星の基地にこんな部屋あったか?」

「あったけど、向こうは別の建物の中だったね」


 集まったそれぞれに集合場所が違い一緒に更衣室で着替えた何人かは別の部屋へと向かって行く。

 案内に従いついたのは机の片付けられた大部屋、アカツキたちの入ったその部屋には数十人ほどいたが見知った顔はない。


「結構いるが知ってるやつはいないな、他の部屋かなカゼユキ?」

「冥王星コロニーに避難した人がいれば誰かとは思ったんだけどね。ラグランジュポイントに浮かぶコロニーはここだけじゃないし別の場所に集まったのかもね」


 部屋に入って集合時間まで待っていると背後から二人は誰かに肩を叩かれる。

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