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星の防波堤 7 終

破片が通路を傷つけたものとみられるが不思議なことに装甲板や設備の配線などが溶けた金属と混ざりっていた。

それらは熱で溶けたようには見えず、形状が変わった個所が草木の根がはびこるように伸びている。

流れてはいないが変形した金属部分は熱を持っているようで破断した通路の奥では溶けた鉄のような赤やオレンジ色に熱を発し発光していた。


「何これ、溶けた金属が混ざり合っているの? でもこの形、溶けた金属が流れたというより……」


足を止めキーラーは固まった金属へと歩み寄る。

発光はしなくてもまだ熱を持っているようで、壁に伸びるそれに手を伸ばすと宇宙服が高温警報を発しゆっくりと腕を引っ込めた。

ふと、通路の奥から近づいてくるライトの明かりに顔を上げ溶けた金属から離れる。


『私の声が聞こえていますか、お嬢、キーラー・リングレット艦長』


射撃管制室にいるはずの副官の声が聞こえ、目の前の宇宙服を着た誰かがライトのついた腕を振った。

声の主と目の前の人物が同じとわかるとキーラーも彼女へと歩み寄っていく。


「え、ええ、少し考え事を。どうしてここに」


磁力で足が床に吸い付き早くは走れないがそれでも彼女はキーラーのもとへと駆け寄ってきた。


『ふぅ……。お嬢、迎えに来ました。戦闘終了と被害の情報収集が落ち着いたので連絡をしようとしたら、通信ができなかったのでオペレーターに聞いたらこちらへと向かっと聞いたので』

「通信機も壊れたのかしら」


『通信の中継器が壊れたため艦内の連絡も困難になりました、それで何を見ていたんですか?』

「これは何か変よね?」


むき出しの木の根か菌糸のような異質な形状をしている金属を見てキーラーは尋ねる。

副官も壁のそれに気が付いたようでそれから距離を置くように後ずさりし説明を始めた。


『彗星の本体、高温の金属生命体。すでに冷えて活動は停止しているみたいですね。大丈夫です、この程度なら砲塔の瘤も推進器の役割を果たす傘も生み出せません。デブリの中に小型として潜んでいたのでしょう、太陽に迫るにつれエネルギーの低下する速度が伸びていますので、デブリ破壊後に最後の力を振り絞って突撃してくることもあります。最も大体は粒子化し突撃し船体内部に撃ちだす最後の砲弾になることが多いですがこれはかなり冷えて液状化のままみたいでしたね』

「これが冷えていなかったら私たちも危なかったのですわね」


『装甲だけでなく船体内部を大きく破壊されていたでしょう、この位置で爆発していたら収束した粒子が直進し、指揮室も管制室も少なくない被害が出たものと思われますね』

「幸運ね。管制室に案内してもらえる? 内部構造がぐちゃぐちゃで、もう何年と暮らしている船の中で迷子になりましたの」


『ええ、案内します。隔壁の閉鎖で通行不能な道も多くて迷宮と化していますから』

「歩きながらでいいから、状況の説明をお願いできるかしら」


『はい。戦闘は終了、この戦闘での負傷者の合計は八十二名、死者四十名。行方不明者は二十名あまり、この船でも六名行方知れずになっています』

「そのうちの一人を見かけましたわ。止められず、船外へと飛び出して行ってしまった」


『そうですか、パニックを起こし冷静な判断がつかないということはままあることです。小破三、中波六、大破及び沈んだ船はなし、この船は自力での航行が困難なため曳航の準備中です』

「そう、やはりこの船はもう無理そう?」


『艦首の一部と内部設備がいくつか、情報をまとめた限りでは大破まではいっていないのでまだ修復は可能ですね。現状この船は航行不能ではなくカメラやスラスターに問題があり不安個所が多いためだからです』

「そうなの」


『おそらくこの彗星の浸食が影響してシステムが機能しなくなったからでしょう』

「この状況を見たら他の個所もこのようなことになっているということがわかりますわね。これは本当にもう動かないと考えていいのよね」


『高温密閉状態でなければ活動が停止するらしいです。流石に生きた個体を捕まえられた事例はないですし未解明な部分が多く……と話している間に着きました。それでは艦長指揮を』

「了解よ。すぐに今後の予定について話し合わないといけないし……でもその前に少しだけパパと話がしたいわ」


廊下側の扉を開閉する。

二重扉で入ってきた扉を閉めて二つの扉に挟まれ、真空の状態から空気が供給され室内に入る準備が進む。


『はい。向こうもひどく心配しておりました。何しろ助けに来た船、それも彗星の台砲撃後の混乱で塵尻になっていた娘の乗っている船が目の前で攻撃を受けたんですから』

「音声だけでなくカメラでの通信は?」


『できます。無事な顔を見せてあげてください』


空気の調整が済んだランプが点灯すると副艦長がヘルメットを脱ぐ。

管制室側の扉が開きキーラーはヘルメットを脱ぎ通信の繋がるモニターへと近寄っていった。


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