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星の防波堤 5

救難信号を出している艦の位置を確認し端のモニターに損傷艦を映す。

艦首大型コイルガンの折れた大破したカストル数隻と第二世代のプロキオンが映っている。


『お嬢! 救難信号を送っているのはカストルk4444からです!』

「本当ですか! よかった艦長はパパは無事ですか!」


『はい! 損傷艦の指揮を執っているのはリングレット艦長のようです!』

「よかった。まだ花嫁姿も見せていないのに死んでもらっては困りますもの。そうとわかれば、あの装甲砲撃型を破壊して救助しますわよ」


損傷艦は砲撃型の射程圏内だが、どの船も推進器に大小複数のデブリが突き刺さっており自力での航行はできそうにはない状態。

彗星の防衛戦突破時に無数のデブリの雨に撃たれ行方不明とカストルとの出会いになった気を引き締めキーラーは目の前の戦艦級へと向かう。

すでにマイクロ波照射装置の設備の大半は砲撃によって細かな破片に砕かれ、砲撃型のエネルギー反応も急激に低下してきていた。


あと少しで脅威も排除し救助活動へと移行できる状態まで来る。


画面がチカッと光るとそれは画面を覆いつくし、その後は一瞬の出来事だった。

激しい衝撃と同時に暗転、轟音と亀裂や破断する音が悲鳴や警報音をかき消す。

キーラーが意識を取り戻すと加速による後方への力は消え無重力状態、電源は落ち壁に塗られた蓄光塗料と赤色灯が確認できるのみ。


「……被弾したのですね。……まだ、わたくしは生きているのよね。体中が痛い、何も見えませんわね、……戦況は、艦隊との連絡は」


かろうじて室内を見渡せるほどの光量、すぐにスクロールデバイスを探しライトをつける。

ほとんど見えない室内を照らしシート型のモニターが漂う室内の様子を確認する。

座席の固定具で艦が損傷するほどの衝撃を耐えはしたものの、胸や腹などが強く締め付けられその痛みに耐えながら声を絞り出す。


『直撃では……ありません、砲撃で……弾かれた大型デブリが接触……しました』

『強い衝撃を受けて推進器は緊急停止しました。……艦内の設備の機能も大半が焼失しスクロールデバイスで艦内の情報を収集中。負傷者多数との報告……』


同じように苦しそうな声が闇の中から帰ってきた。

壁から離れたシート型のモニターが指揮室内を漂い時折明滅している。


「ここにいる皆さんは無事ですか?」

『……ミモザ、スバル、トーラスが死亡、他私たちも腕を痛める等の負傷はしています』


オペレーターの座席は航行時の歓声を受けるため、座席すべてが艦の進行方向を向いているため後方に座るキーラーからは彼らを見ることはできない。


「そうですか……」


指揮室の警報機も壊れているのかキーラーが黙ると指揮室は静まり返る。

何人かは他の船から移動してきた者もいるがほとんどは彗星と戦う前からの付き合いや配属されてからともに戦ってきたものたちで、亡くなったと聞いてキーラーの心に鉛のように重たい気持ちが沸き上がった。

次第に漂っていたシート型モニターも壁に張り付いていく。


「戦闘はどうなったかわかりますか? 砲撃は止まっているみたいですけど」

『通信機もすべて反応なしです。電源も消失、現在指揮室は機能していません』


「損傷艦の仲間入りですね、今まで大事に使ってきたのに。そういえばクリアランスはどうなっていますか。まだデブリはぶつかってきそうですか?」

『大型デブリの直撃箇所は機能していませんが、それ以外の個所は大丈夫なようです。外のデブリの状態が見えていないから何とも言えませんが』


「射撃管制室との連絡はできますか、むこうも電源が落ちているのでしょうか」

『いいえ向こうは場所が離れていたため設備が生きているようですが、指揮室の仕事を代わりに引き継いでもらっているため現在連絡は取れません』


「なら、わたくしは管制室へ向かいます。状況を知らないと、今は艦隊を預かっているわたくしが指示を出さないと。この艦が被弾したことで皆心配しているかもしれないですし」


キーラーはヘルメットに手を伸ばして固定具を外して席を立つ。

衝撃で強く体を揺さぶられたときにあちこち痛めたようで痛みで息が漏れる。


「痛つつ……体が軋みますわね。あなたたちはここにいてください。怪我をしているのなら動かない方がいいはずですし、それに危険な廊下には出ない方がいい」

『廊下は衝撃で破断し無酸素状態です。宇宙服に異常がないかを確認してから出てください。隔壁は降りているはずですが折れている通路は無理に通行しないように、マグネット吸着を切らないようにしてください』


宇宙服に損傷がないことを確認しキーラーは出口へと向かう。


「わかりましたわ。訓練を受けたのもだいぶ昔ですけど、覚えているから大丈夫ですわよ。それじゃ、行ってきます」


部屋と通路をつなぐ二重扉。

何年も使用し見知った通路は、衝撃でいくつか照明が切れ蓄光塗料が光っていた。

空気がなくなったことで壁の布が膨らんでいて、数か所その下の粘土板がむき出しになっている個所も見える。


「これは……結構なダメージが入っていますね。それに思ったより怖い」


衝撃で歪んだ隔壁が半分閉じた状態で停止し大きく様変わりしており、まだ戦闘中なため通路には誰もおらずキーラーは一人時折点滅する証明の照らす廊下を進む。


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