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光速の白鳥 3


もとより後方からの支援をするため搭載されている装備は使う予定がなく、射撃管制室には誰もおらず無人だった。

移動のため加速していて体が多少後ろに体が引っ張られる感覚によろける。


「誰もいない。戦闘する予定がないから皆指揮室に集められていたのか。この船、最少人数で動かしてるんだったっけ」


無人の部屋に明かりをつけて空いている席の一つに座ると、ネビュラは指揮室へと連絡をとった。


「ノヴァ艦長、射撃管制室に到着しました」

『了解、知っていると思うがこちらの通信機器は調子が悪い、あまり大きな声を出さなくてもいいよ。手が空いたタイミングでこちらから数名オペレーターを送る。んー、こちらで操舵と指揮、他艦との連絡、君には索敵と攻撃を任せるから。大丈夫、学校で習ったことをそのままやればいいだけだから』


「了解です。それくらいならできます」

『ではまた後で』


通信が切れネビュラは席に深く腰掛けなおす。


「大丈夫、そう学校で習ったことをそのままやればいいだけ。少ないけど随伴艦もいる。生きて帰る」


一度目を強く目を瞑りスクロールデバイスを広げた。


「もう一度読み返しておかないと」


彗星表面で起きている以上を調べに行く艦艇たちが集まる。


第四世代ベガ0042と三十六隻の艦艇はすぐに艦隊として陣形を組み速力を上げた。

ベガ以外すべての船が過去の戦いで多かれ少なかれ損傷し、装甲版を張り直し修復個所に塗り直した塗装が迷彩模様のようになっている。


『これが第四世代か、ジャガーノート・カルマ・リベレイト。とても攻撃力がある船だとは思えないが?』

「んー、低コスト素材で組み上がるか、装備が適切に機能するか、装甲等の配置は適切で船体のバランスに異常はないか、テスト用に作られた初期生産、先行量産型だ性能は期待しないでくれ」


『そうなのか? その船には何ができる』

「囮と通信の中継、それだけだ。攻撃も防御もそちらに頼ることになる」


『ともあれ旗艦を任された新鋭艦。任務のないようにも目を通した、指揮はすべて任せるぞ。俺は自分の船と仲間……いや、艦と艦隊以外に命令を出したことがない』

「了解した。他と同じでこちらですべての船の指揮を執る、それでは無事に任務が完遂されるよう頑張ろう」


ノヴァは外との通信を切り艦内へと通信をつなぐ。


「どうやら集められた船は荒れもの揃いのようだ、ネビュラくん」

『こちらにいただいた、他の船の艦長の資料に目を通している最中ですがその様ですね。遭遇戦や防衛戦、撤退船のさなかに出会った戦艦級を返り討ちにした、それも少数で』


「んー、その手の話で私が知っているのは彗星との戦闘が始まって数年たったころ。冥王星付近で損傷した第一世代を戦艦級から守りながら第二世代が奮闘した話を思い出すな。あの時のあいつの腹立つ」

『なんですその話?』


「話せば長くなる。作戦が無事終わったとき時間があるときに話すとでもしよう」

『へぇ、なら聞けそうにないですね。前線での動きが変わったみたいです、悪いほうに』


通信が切れるとネビュラは今一度部屋を見渡す。

戦闘指揮室と同じ複数のモニターと複数のコンソールとオペレーター席。

違いは艦長席がなく砲台を動かすための専用の座席があり大きな箱型の机が床に厳重に固定されている。

その砲主席の一つにネビュラは座っていた。


「第一世代はここがコンテナ排出射出用のコントロールルームなんだっけ、設計は変わらないから機材が違うだけでこの部屋と同じ大きさか」


オペレーターたちが到着するまでネビュラはスクロールデバイスを操作する。

集めた彗星の情報、繁栄を極めていた人類を追い詰めている白い怪物。


「これ以上は進まれないようにアステロイド防衛線で破壊しないと、コロニーは移動できても星は移動させられない。ここで止めないと、そのために彗星で起きていることを調べないといけない」


オペレーターたちが射撃管制室へとやってくると立ち上がり磁力で床に足をくっつけて姿勢を正して挨拶をする。


「臨時で副館長を務めることになったネビュラ・バルカンです。新参者で経験不足ですがよろしくお願いします」

「さっきまで一緒に働いていたじゃないか」

「光速で出世したね、何段飛びしたんだい?」


「流れ星のように落ちないよう頑張ります」

「頑張りなよ、さてじゃあ時間もないし仕事を始めようかね」

「そうだね、他に指示を飛ばす作業がなくなってやっと休めるよ」


皆が配置につきネビュラはあたりを見渡せる砲手の席に座って始まるのを待つ。

艦隊がそろい作戦開始時刻となり偵察部隊の加速が始まり、急激な加速が続き皆が座席の背もたれに押し付けられる。


大型艦のいない三十六隻の随伴艦と最前線で戦うには心もとない数の艦船とともに彗星へと向かう。

砲手席には大砲の射撃用の計器がついていて、ゲームセンターなどに置いてあるゲーム機みたいなどと思いながらそのモニターを眺める。


「あと三十分ほどで最初の味方射線内!」

「皆さん、ヘルメットを着用してください、友軍からの誤射の可能性があります」


予定通りに艦隊からの攻撃は止みついさっきまで目の前を無数の砲弾が飛んでいった空間ははじめから何もなかったかのように何もない空間が広がっていた。


「砲撃止まりました」

「良かった、時間通りですね」

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