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光速の白鳥 2




「本部からです、本艦とともに任務にあたる護衛艦のリストが送られてきました」

「ん、読み上げてくれ」


「ついてくる護衛艦の数は三十六隻。第三世代アルタイル八隻、第二世代デネブ六隻、メラク一二隻、ポルックス十隻」

「んー、大型船はいないな、偵察に送るから中型船で固めてきたか。しかし種類が多いな。んー、第二世代もいるのか足並みがそろわないぞ、さすがに第一世代はいないな。さすがに護衛にはならんだろうし、コールサックくらいしか速度についてこれないだろう。んー、とはいえそれももう武装も取り外し損傷艦牽引に手いっぱいで戦闘に送り込めるものもないだろう」


「艦隊の任務開始時刻と、行き帰りの航路のデータが送られてきました。この時間内に通り抜けることで友軍の射線に入らずに移動できます」

「んー、砲弾の補給時間を縫う感じだな。急いでいる割にはご丁寧に疑似重力を作れるルートじゃないか、せめてもの良心か」


「通り抜ける時間が遅れれば友軍に撃たれることになりますね」

「んー砲撃区域を二時間以内に通過、ぎりぎりだな。攻撃を受けて速力が落ちると本当に味方からの攻撃を覚悟しないといけないじゃないか」


「艦長、指示を」

「ああ、そうだな。これより進路を変えるため船が揺れると艦内に伝えろ」


「了解」

「放送が終了次第進路を変更。面舵七度、子舵二十度、微速前進。強行偵察艦隊への合流地点へと向かう。んー、数もそれほど多くないしそれぞれの艦長と話したい。通信が繋がった船があればこちらへ通話を回してくれ、もちろんスピーカーでな」


ベガ0042は艦首の向きを変え他の船との合流地点へと進みだす。

移動のため彗星を攻撃をし続け流れるように移動していく艦隊の中をかき分けて進む映像を映すモニターをしばらく眺め、ノヴァは作戦本部からの報告をしていたオペレーターを呼ぶ。


「ネビュラくん」

「はい、なんでしょうか」


名前を呼ばれ作業の手を止めて振り返る髪の毛先を白く脱色させた女性が振り返る。


「君、他の艦に今すぐ移りなさい」

「なんでですか?」


「んーこの船はもうじき死地へと赴くことになる。帰還はほぼ絶望的だ」

「ですね。先ほどの放送を聞いてから背骨がゾワゾワとしています」


「んー、本当は誰かを特別扱いしてはいけないのだろうけど。ん―、君はまだ若いそれに賢い。彗星をもしすべて破壊し平和を取り戻したとき君のような人材は必要になると思うんだ」

「さすがにそれは言いすぎじゃないですか? とはいえ私なんかを気にかけていただき光栄です」


「すぐに君が映る船を探す。んー、まだ今なら他の船に映れるだけの時間があるだろう」

「お言葉ですが私一人この船を降りる予定はありません。配属された船ですし私も戦います」


ノヴァはチューブ飲料でのどを潤し一呼吸おいてから話を続けた。


「そうか。んーなら任務が始まる前に射撃管制室へと向かってくれないか、配属転換の届けを出すから。君にはそちらで働いてもらいたい」

「射撃管制室へ? 一応は戦闘サポートもできますが、この船の武装は……わかりました」


「では任せた。この船はそもそも前線の少し後ろで支援をすることが目的だったため副艦長も射撃管制室出指揮できるものもこの艦にはいないしな」

「私が代わりをするんですか? 私は今年の春まで訓練生で……」


「今や訓練生が訓練課程を終える前に正規の人員へと組み込まれることも多い。んー、だからこれもありなんじゃないかなって?」

「いやいくら何でも階級が飛びすぎて、私じゃない他の人の方が。他に適任が……」


「んー、ここにいるのは皆宇宙港とかで管制官や定期船のオペレーターをしていたものたちで、通信の教育を再教育させただけだから君のような星軍の正規の訓練を行っていない。すでに十年近くオペレーターをしているベテランたちだ」

「どこも人材不足ですからね。長年の戦争、経済活動の低下で星軍に入るものも多い。では正規の星軍は」


「んー、この船に正規の星軍は艦長の私と訓練生を卒業したばかりの君、あとは整備士たちと補給科、衛生科のものたちだけだろう。この船に残るのであれば協力してくれ」

「わかりました」


ネビュラは指揮室を後にする。

量産と整備のしやすさから多少の素材やデザインの改良はあるものの、部屋や通路、計器類はすべて同じ規格のものを使っているため再新鋭艦とは言ってもシリウスなど第一世代も損傷や劣化さえあれば最新の素材へと交換されるため艦の外観以外は他の船と大差はない。


「私が副艦長……。しまった私を降ろすのは代わりの人員を補給するためだったのか、言ってくださればいいものを……」


脱色させた毛先をいじりながら通路を蹴って射撃管制室へと向かう。

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