戦いをもたらすもの 7
ベビーベットも完成しそこに床に寝かせていたアセビを抱き上げて寝かしつけると各々別々の場所で片づけを始める。
アカツキはカゼユキが片づけを行っている一階にある父と母の部屋へと向かう。
カゼユキは真空パックに収められた布団を開いて、ベッドへと敷いていてアカツキの足音に気が付き振り返った。
「おや、フトさんは? さっきから見えないけど、夕飯の買い物?」
「眠そうだったから寝るように言ってきた、移動だけで十時間以上かけてるから限界だったんだろ。アセビの世話で星軍を離れて長いし長時間の行動は厳しかったんだろ。まだ寝る場所がないから置く場所のないベビーベットを置いた衣裳部屋だけど。今、アセビと一緒に上で寝てるよ」
「もう衣裳部屋が仮眠室になってるね、ところでアカツキそっちはどう?」
「リビング周りはな、それなりに。これで夕食は食べられる場所はできたよ。これから台所周りだよ、たくさんある食器棚の整理整頓だ。俺らの部屋もあるし本当に夜までにある程度何とかしないとみんなで川の字だ、父さんと母さんの部屋ははどんな感じだ?」
「見てくれアカツキ、なんとか父さんたちの部屋がきれいにはなってきただろ! そこの段ボールから昔のアルバムとか出てきたぞ、母さんと父さんの若いころの写真見るか?」
「んなもの見てたら日が暮れちまうぞ」
「わかってるけど、こういうのってつい見ちゃうよね」
「わかるけど、今は片付けないと」
二人が話していると玄関が開く音がする。
「なんだ、片づけは全然進んでいないじゃないか」
玄関から声が聞こえてきて荷ほどきをしていたアカツキとカゼユキが振り返り、部屋から顔だけを出し廊下の奥から玄関の様子をうかがう。
「皆無事だったか」
黒髪と白髪が半分くらいの分量の初老の男性、ヨドが荷物を背負って靴を脱ぎ家に上がっていた。
部屋から顔を出し玄関のほうを見るカゼツキが声を張る。
「お帰り父さん、迷子にならず来られてよかった。ちょうど今日のお昼ごろに今僕らも帰ってきたところですよ。母さんは役所にいろいろ書類を出しに、フトさんとアセビちゃんは疲れて二階で寝てます。僕らで片づけをしますんで父さんは座っててください」
「ここに帰ってくる途中のバスの中で見たニュースでやっていたぞ、まさかあの船に乗っていたとは思わなかった。後で知って肝が冷えた」
「ぶつかった破片が五十センチ以上の大きさだったら船体を貫通する大穴が開いてたかもって。あとで知ってこわくなったよ。生きてることに感謝しないとね」
「戦闘区域に民間船なんていないつもりでいたから驚いたぞ。ニュースで見たがコロニー側の連絡ミスらしいな、戻ってくる貨物店の誘導で手が足りなくなって連絡が遅れたとかなんとか」
「父さんあの時戦ってたシリウスに乗ってたのか。どんなに技術が進んでもヒューマンエラーはなくならないね」
壁に手をつきドスドスと足音を立てて父親が、リビングとアカツキたちのいる自分の寝室となる部屋へと進んできて出迎えに立ち上がった二人を強く抱きしめた。
抱きしめた二人を放し父親は改めて家を見渡す。
「いい家だな。買ってよかったよかった。しかし荷物が多いな、ははは」
「そうだね、家のもののほとんどを持ってきたからね。映像でしか見てなかったからどうかなと思ってたけど、レベル三と二の居住区画の商店街も近いし住みやすそうだよ。アセビの学校とかこれからのことも色々調べないといけないけど」
「今日中にどうにかなる量の荷物じゃないな。前の家こんなに荷物あったのか」
「父さんは休んでいて。仕事帰りで重力がつらいでしょ」
「そんなやわな体じゃない。それに船内の人口重力で骨も筋力も鍛えられる、元が長期滞在用の生活居住できる輸送船というのが大きいな。そうだな、おまえたちも乗艦先は第一世代がいい、第二世代のなんていったか過剰防衛艦。間違ってもあれに乗ろうとするなよ、命を落とすことは許さん」
話を聞いていたアカツキは隣にいるカゼユキのほうを見る。
「新しいほうが生存性が高いと思うんだけど、違うのかカゼユキ? 俺と違って出世コースのカゼユキなら詳しい情報あるだろ?」
「第二世代は第一世代の生存性を上げるために計画された盾となる宇宙船で、そうだなシールドシップとでもいうのかな、注意を引いてその身に攻撃を受けるスタイルなんだ。敵の戦艦級の攻撃を耐えうる装甲を持っているはずだけど、何発も食らって無事というわけでもない。ダメージコントロールを間違えれば数発、うまくいったとしてそれでも受け続ければいつかは沈む、そういう船だよ」
カゼユキの説明の途中で、ただの雑談として話していたヨドの雰囲気が変わり張り詰めた空気に二人は背筋を伸ばし姿勢を正す。
「お前たちも今の休暇が終わり今年中には戦線に出るんだろ」
「基本訓練を終え、宇宙慣れし筋力が弱っているだろうから鍛えなおすための休暇で」
「そのあとは初戦闘が待ってる」
「宇宙での戦闘、やることは単調だが待つは地獄だ覚悟しろ」
「了解」「了解だよ父さん」
それだけ言うと張り詰めた空気は解けヨドは部屋に荷物を置きに行く。
「俺も長旅で少し疲れた、布団を用意してくれてありがとう少し休むよ」
「お休み、夕飯食べるかわからないけど起こすよ父さん」




