恐怖と狼狽 3 終
中型船の操縦席。
アカツキは響いていた警報と赤や黄色の染まった画面を正常化に近づけようと奮闘していた。
「冷却液の放出止まりました、現在艦内温度二十八度。今も少しずつ上昇してますね」
「まぁ、ずっと加速し続けてるから温度はそこそこ上がっているな。それで、ナツヒさん追加の推進器を使うのに問題はありそうか?」
「いいえ問題はなさそうです、増設されたタンクにも冷却水が入っているみたいですから通常の加速ではそこまで熱は上がっていません。それでも追加の推進器を動かすと彗星の付近から離れたら一度冷却のため停止させなきゃいけないようです」
「まさか破壊された破片がまっすぐこっちに向かってくるなんて」
「さっきから何度も飛んできてはいいただろ、クリアランスで除去できる程度のサイズだったが。もう周りにあまり第二世代も第三世代もいないし細かくしてもらえなかったんだな」
ナツヒは計器をみてそれを伝えツヅミは損傷個所の状態を艦内にいるものたちに伝える。
「船体にダメージが入りました。装甲が割れて中の空気が少しもれましたがすぐに隔壁は閉鎖されて、航行に支障はないですが左舷上部のクリアランスがほとんど機能していません」
「さすがにクリアランスを修復している時間は惜しい。早く修理を終わらせて避難しないとまずいかもな。遠いところだけどまだ戦艦級の攻撃の光もちらほら見えるし」
「あの白いビーム、ずっとどこかに見えてますね。何度も聞いている気がしますがこれでも、かなり戦艦級の数は減っているんですよね?」
「こっちに来そうで怖いな。もう周りの中型船も加速して俺たちを追い抜いていきかなり減ってきているし。さっきの大きな戦艦級の破片だって他の中型船が周りにもっとあれば船体にぶつからず被害も減ったかもしれないのに」
操縦席内の他の部屋とのやり取りを行う通信用に使われていた内線が鳴り響いた。
ツヅミが受話器を取り少しのやり取りの後アカツキに報告する。
「アカツキ君点検に出ていた整備の人からだ、問題は解決したらしい。エラー個所を調べてみてくれ」
「了解、赤いランプも消えたし。なら早くここから出よう。この攻撃が成功することを祈って。ナツヒさんもう一度システムのチェックを、ツヅミさんは整備士の人らに待機室へと戻るように伝えてくれ」
ハレー艦内の人間が部屋に戻った報告を待って、追加の推進器を起動させる準備にかかった。
「まずは巡航速度を最大加速へと戻す、そこからさらに加速だ。船体揺れるだろうし最大加速にしたら」
「はい」
船体に損傷はあるものの問題なく逃げられることを確認し推進器の状態とトラブルの解決を今一度確認する。
「そうだツヅミさん、船内の負傷者の応急処置は? 終わって無ければ待たないと、加速によるGの力で骨や内臓が圧迫されて傷が広がったりする。ツヅミさん負傷者の状態を確認してくれ」
「わかった、少し待ってくれ」
すぐにツヅミは内線で艦内の別の場所と連絡をとった。
「大丈夫だ、負傷者の治療は終わっている」
「わかった。なら加速を始める。今一度艦内にアナウンスを」
報告を聞いてすぐ艦内活動用に低速させていた中型船は加速を始め、それと同時に追加の推進器を起動させる準備を始める。
「なら逃げよう、この場所から」
先を行く他の中型船たちに遅れてアカツキたちの乗った中型船も少しずつ加速を始め彗星の重力圏を離れた。
彗星へと落ちていく核爆弾、戦闘を続ける第二世代と第三世代、漂う残骸のすべてを置き去りに加速を続けていき、加速をはじめ少し遅れて接近していた戦艦級の攻撃が、さっきまで中型船のいた個所をかすめていく。
「今、今見ました! 攻撃が! 危うく」
「口閉じてないと舌噛むぞナツヒさん」
「背中にかかる力がすごいな、今までの比にならない腕も力を入れないと持ち上がらないぞ」
加速するにつれ周りの景色が勢いよく通り過ぎ始める。
彗星に背を向けて加速し周囲で攻撃を耐える第二世代、戦艦級を破壊している第三世代らを追い抜きその場を離れてハレー中型船は戦場から離れていく。
直進する彗星とその横を通り過ぎ背を向けて加速する分もあり、中型船はみるみる彗星が小さくなっていった。
更新が遅れております
なかなか執筆の時間が取れない次第
誤字脱字加筆のためまた一か月ほど(でできるか不明)?更新が止まります
そしてまた幕間を挟みます




