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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
三章 火星絶対防衛戦線
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戦いの足音 4

 モニターに映された映像は彗星とアステロイドベルトが大雑把に描かれた小略図として移される。


『過去に彗星を破壊したクイッククアッシュクエーサーでは、作業艇を改造して作られた攻撃機スターレギオンの防御性能の低さゆえ未帰還者が多かった。今回は生存性能を上げるために中型船を使った。動く一万七千隻の第一世代の砲撃と十五のコロニーで電力を使ったプラズマ砲、無線電力供給用のマイクロ波衛星ニ十基、六十の採掘基地として使われ砲撃管制中継基地として武装化された小惑星には急造建造したシリウス、カストルと同じコイルガンが装備され。これらが戦艦級と彗星の気を引く。君らには防御の薄くなったところから突撃してもらい彗星を破壊してもらう』


 まだ改造途中で撮影されたであろうコロニーの様子と集合し待機している大型艦の群れが映った。

 そして最後にあちこちから集められたシンギュラリティゲートが同じ方向を向いて並ぶ姿。

 画面は小略図に戻りアステロイドベルト側から彗星の方へと線で矢印が描かれる。


『先ほど見た図の通り、中型船にはクリアランス以外の武装はない。すべてに武装する時間と砲がなかったからだ。そして装甲によって重量が増え追加のブースターによってかなり機動性が悪い、すなわち速やかに攻撃し反撃を受ける前に撤退するということだ。ゲートの配置の都合で本作戦は交差圧縮作戦のような挟み撃ちではない、攻撃を正面に受け彗星へと向かってもらう。攻撃後はそのまま突き抜け彗星の後方で待機しているゲートを目指してもらう』


 画面が消されると皆の視線は浅黒い肌の星軍の将校へと集まる。


『繰り返すが今回の作戦が失敗した場合、戦闘にも人類にも未来はない。話は以上だ。解散し船に乗り込むように』


 話が終わるとアカツキたちは基地を移動し話の間にスクロールデバイスに送られたそれぞれに割り振られた中型船へと乗り込む。

 中型船には操縦し三名、整備兵二十名あまり、そして貨物室から核爆弾を出すための作業員が五名ほど乗り込んだ。


「ガラガラじゃないか。中型船には千人ほどが乗れるんだけどな、船を動かす最低限のクルーしかいないのか」

「これから死地に行くのにお客乗せてどうするんだ。代わりに積み荷がいっぱい乗せてあるだろ、積載重量めいいっぱいに」

「中型船の貨物船って、大型船のコイルガンで撃ち出せない繊細な美術品とか放射線に当てられない食品とかを運ぶんですよね」


「ああ、コロニーに陶芸品とかガラス細工とかの工業製品を運んでいた。クリスマス前は一日中貨物室いっぱいにおもちゃを乗せて往復していたこともあったな」

「専用のコンテナがあれば食料や水も運べる。つってももっぱらコイルガンで撃ちだすのは採掘した鉱石とか氷塊とかだから間違ってはいないが」

「そうなんですね」


 途中の部屋にステラの姿が見え彼女もアカツキに気が付きチューブ飲料を飲みながら壁を蹴ってやってくる。


「やあ、アカツキ君。同じ船だったね、アポロ君も向こうにいるよ作戦開始が近づいてきてストレスで頭を掻きむしっていた。それでいま今追加されたエンジンの最終確認をしているところ。しっかりシステムと連動しているかね、整備不良があれば私たちの生存確率も減るし」

「ああ、ステラさんそっちはよろしく頼む。こっちも気を付けて操縦する」


「私たちからは外の状態がわからない、こっちはアカツキ君たちを信じてエンジンと推進器の調子を見てあげることしかできないよ」

「とにかく頑張ろう」


 客室はほとんどが施錠、溶接され開かないようになっており長い廊下を通って操縦席へと到着した。

 見慣れた操縦席を見てアカツキたちは呟きながら席に着く。


「改造されても廊下には変更はありませんね、増設されたクリアランスを操作するのも別の部屋で行っているみたいですね」

「指揮室もなく艦長もなく本当に決められたルートを進むだけの船なんだな。やることも変わらないし、ただ大きくなった作業艇じゃないか」

「中型船って二百メートル以上あるし結構大きいだろ、他の船に守られながらたどり着けるのか? 俺は中型船の操縦しかしたことないけど、前の作戦はどうだったんだ?」


「星軍の発表を聞いてないのか?」

「大体ほぼ毎日同じ内容ですし、天空教は星軍のニュースを聞かないように言っています。進展があるまでもうほとんど関心を持たれていませんよ、うちの家族もほとんど星軍の話題を出しません」

「俺はその何年かレベルゼロ居住区で世話になっていたから……。冥王星コロニーの定期船で非難する妻と娘が俺と同じ船に乗っていて、彗星との戦闘に巻き込まれて死んだんだ」


 各自のスクロールデバイスに出航時間と航行ルートなどの指示が送られ、皆それを確認し座席に座り直しハーネスをつける。

 スクロールデバイスの待ち受け画面にはアカツキ、ナツヒ、ツヅミはそれぞれ家族の写真。


「俺らの出発は?」

「三十分後、基地から四時の方向にあるゲートを目指せと、艦隊は四十三番隊ですね」

「六つの個所のゲートから出撃するのか、でも船はたくさんあるんだろ六つ程度で足りるのか予定時間までにみんな潜り抜けられるのか?」


「アステロイドベルトで輸送船の移動用に使っていたゲートだったか、いや六ケ所から出撃するだけでゲートは複数あるようだ」

「ですね。アステロイドベルト中から集めたのなら二十以上のゲートがあるはずですし、冥王星、海王星、土星、木星からもコロニーの移動や物流の流れの整理で使わないゲートを彗星の追撃に追わせています。今彗星破壊のために動いているゲートは六十以上あるはず」

「なるほどな、俺は星軍のことも戦争のこともよくわかってないから変なこと聞いたな。じゃぁ、確認作業を始めようか。推進剤満タン、前部から順にスラスター確認」


 準備が整うとみなスクロールデバイスの待ち受け画面を見て時を待つ。


「緊張感で胸が苦しいです」

「深呼吸して待つしかない」


 そして予定されていた時間が来てアカツキが乗った中型船は港を離れる。

 他の港を出た中型船とともに船の周囲を映すモニターでアカツキは進行方向以外を見た。


 離れたところに見える火星を名残惜しく見つめ、進行方向には戦場へと向かうゲートが近づいてきており大きく息を吸いため息にも似た息を吐くと、その大きな輪に視線を向ける。


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