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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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戦いをもたらすもの 6

 火星へと向かう軌道エレベーターを降りいくつかの交通機関を利用してアカツキたちが新居に着いたのは昼過ぎごろ。

 手にしていた荷物を玄関に置き、段ボール箱の積みあがるの家へと上がる。


 星の自転の影響で日は高く昇っているが、宇宙で活動していた時間が長くくたくたになっている四人。


「疲れたな、まだ日は高いのに」

「コロニーから起動エレベーター、そこから電車とバスを乗り継いで十九時間。長かったね。でも寝ようにも荷解きをしないと寝具もないし横になるスペースもないよ」


「宅配サービスが荷物をきれいに運んでおいてくれたおかげで、何とか人が通れる道はあるな」

「値は張るけど評価の良い会社を選んだからね。それにしても家のものみんな持ってきたから、なかなかの量だね母さん。荷解きが一週間じゃおわらなさそうだよ」


 四人は積まれた段ボール箱の横をすり抜けていき、電気と水が通っていることを確認して一通り新しい家の中を見て回る。

 周囲の家と比べ飾り気のない質素な二階建ての庭付き一軒家、周囲も同じくらいの住宅街が並ぶ騒がしい商店街からも離れカメラのついた街灯と巡回ドローンが犯罪を抑制している安定した環境のレベル四居住区域。


「引っ越しの際に不要なものは捨てたさ。さて、荷ほどきは息子たちに任せて私は役所にでも行ってくるかね。階級腕章は必要だし、書かなきゃいけない書類もあるしね。フトさんはアセビちゃんの部屋を使えるようにしておきな。重力があるところでアセビちゃんをずっと抱えていて疲れたでしょう」

「お願いしますお義母さん」


 そういうと母はアカツキがずっと持ち運んでいた旅行用鞄から、いくつかの小物を持ち玄関へと戻っていく。


「それじゃぁ、家のことを任せたよ。帰ってくるときには食べるところ寝るところは最低限確保しておいてほしいね」

「行ってらっしゃい母さん。まぁなんとか頑張ってみるよ、何かあったらデバイスで連絡をくれよ」


 玄関までアカツキが見送りに行き扉を閉める前に玄関から見える空を見上げる。

 空の果てに別の町が見えることのない、太陽と光量増幅用の巨大な鏡衛星の反射する光点が浮かんでいる火星の空。

空は高く軌道エレベーターの果ても、ラグランジュポイントに浮かんでいるコロニーも地上からは見えない。


 遠くからでも軌道エレベーターの影が白みながらも雲で隠れきることもなくはっきりと見えており、その周りに工業地帯と思われる場所に宇宙へと物資を送るためのマスドライバー式の巨大な大砲が工場やビルの間から高く空へと延びているのが見える。


「ん、ん……。星の空気は埃っぽくないな。太陽の日差しなんて直接浴びるのはずいぶん久しぶりだな」


 アカツキは座りっぱなしで固まった体を大きく体を伸ばすと家の中へと戻っていく。

 先に寝室の整理を始めるフトとカゼユキ、二人は分解されたベビーベッドの組み立てを始めた。


何も入っていない衣装部屋に移動ばかりで疲れ眠っているアセビを下ろす。

 自由になったアセビが未開封の荷物にいたずらしないように子供用と書かれた荷物の中からおもちゃをいくつか取り出すと、寝息を立てるアセビの周りに置く。

 そして、扉は閉めずに大きな段ボールでフトとカゼユキたちからは見守れるようにし目覚め引越しの荷物だらけの迷宮のどこかへと言ってしまわぬように閉じ込める。


「バスで眺めてましたけど、住みやすそうな町でしたね」

「すぐ近くにレベル三居住区もあるし、ある程度のお店には困らなそうだね。車とかも早めに買いに行かないといけないか、荷解きの後もこちらですることが多いね」


「そうですね。レベル四区画のお店は高級志向のブランド物が多くて少し苦手なので」

「少し治安が悪いけどレベル二居住区もさほど離れていないし。必要なものを買いに遠出することはなさそうだ」


「宇宙港から離れていますが、大丈夫なんですか? 星軍の仕事を終えて帰るときの移動時間が今日みたいに……」

「レベル四区画は標準より少し高い暮らしのできるところに多いから仕方ないよ。まぁ、騒音がなく静かでいいとプラスに考えていくよ」


「そういえば、お義父さんもまだ到着していませんね」

「連絡で今日か明日にはこっちにこれるそうだよ。危なかったね、父さんが先に帰ってたらこの荷物の山の中で途方に暮れていただろうね」


「ずっと任務で宙に上がっていたから、荷物何がどれに入っているかもわからないですものね」

「きっと僕らより疲れているだろうから、父さんと母さんの部屋も片付けておかないとね」


「なら私がここやりますので、カゼユキさんはそちらの片づけに行ってもらって大丈夫ですよ。アカツキに手伝ってもらいますし、そっちの手伝いもしてもらいましょう」


 二人が話しながら作業しているところに見送りを終えたアカツキもやってくる。


「なんか俺の名前が聞こえたな? そういえばフト、アセビは?」

「そこの衣裳部屋に臨時の子供部屋として、移動ばかりで疲れて眠ってます。あ、託児所とかって火星はどうなっているんでしょうか?」

「ちょっとわからないな。調べることも多いな、本当にしばらくはバタバタしそうだ。とりあえずこれを組み立てたら父さんたちの部屋の荷解きを進めるよ」


 合流したアカツキも加わり三人はベビーベットの組み立てを進めていく。

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