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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
三章 火星絶対防衛戦線
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戦いの足音 2

 区画と区画を仕切る白い壁、その中にある国が管理している第ゼロ居住区画。

 市役所、学校、病院、ライフライン、介護施設などの公共施設は政府に管理され、政府によって運用されている各居住区に隣接している小さな区画。


 そんな第ゼロ区画の市役所でモニターに向かってキーボードを打ち働くミホ。

 すべてがモニター越しのやり取りができるため施設内に人の気配はなく、どこの部署からもキーボードを叩く音とテレビ通話の個室へと施設を移動する誰かの足音が響いている。


 休憩のチャイムが鳴り一段落したミホの仕事仲間が手を休め雑談を始めた。


「ちょっと聞きました? 今度の星軍の作戦、中型船に爆弾をとにかく沢山乗せて彗星に突撃するんですってよ」

「あら、私は中型船に火星に住む星軍の関係者を乗せてコロニーへと逃げると聞きましたわよ」

「聞いたわよ、強力な電波? とかやらで彗星を引き付けて進行ルートを変えるってうちのかわいい息子がいっていましたわ」

「いろいろ言われているようだけどもうじきわかることだろうね」


 休憩時間になったとたんにラジオを付けたかのようにミホと年の近い老齢の女性たちが顔を向き合わせよく通り渡る声で一斉に話を始める。


「何十年と戦って勝てないだなんて全く情けない、うちの旦那も無能な指揮官の船に乗ったばっかりに死んじまって。まとめで雑な葬式を挙げられて、その後もとにかく大変で悲しむ暇なんて中ってのに」

「聞いたよ聞いたよ、大方集めた税金で少しでも長く遊んで暮らすためだろうね、当時の星軍の軍人はもう年だし後は引退するだけだから。責任は誰かに押し付けて消えるだけなんだろうね」

「やれやれ、私らは結局長年高い税金を払い続けて終わりか。十年前に星軍に入ったうちの兄さんたちも使い捨てにされてみんな死んでしまったし。はやく天空教が実権を握ってくれないかな、通院費もばかにならないし早く税金を下げてほしいよ。孫を塾にも行かせられない」

「星のように大きな塊と戦っているんだ、時間がかかっても彗星を一つ壊している。もう相手を破壊することが可能だってわかっているし、次の戦いできっと勝ってくれるさ」


 星軍の話題でミホの方へと注目が向く。


「ミホさんの息子さん星軍なんだって、何か聞いてないの?」

「そうよそうよ、何かないの?」

「いいえ、メールで話はするけどそういった話は外に漏れないように秘密だから」


「だめねぇ、そういうのは誰にも言わないからと。今は情報社会よ、少しでも多く引き出しておかないと」

「彗星は人の言葉なんてわからないんだから、隠す必要なんかないのにねぇ」

「何か発表すれば天空教が批判するからじゃないからじゃないかね」


 ミホを取り囲む周囲の胸元に天空教のバッチが輝いており、ミホの話に誰も賛同はしない。


「何言っているの天空教は正しいことしか言わないじゃない」

「そうよ、天空教は正しいわ。とにかく天空教の言葉に従っていればいいの」

「税金も下げてくれるし、公共施設の負担も減らしてくれるって言ってる。でも星軍が邪魔するせいで実現ができないって」


 話題はすぐに変わり家族のこと、近くの商業施設での出来事、ご近所トラブルのことと目まぐるしく話題が変わっていく。

 さらに一人手を激しくふりながら小走で向かってくる。


「ねえねえねえねえ、ちょっとちょっと、聞いたぁ~! 今近くにが来ているってスティーブンソン君が来てるって! さっき隣の児童福祉課の子が言ってたの」

「大スターじゃない!」「本当!会いたいわ、とにかく会いたい!」「どこどこどこどこ~!」


 わいわいと騒ぎながら盛り上がる中、話題に一人残されキョトンとするミホ。


「最近のテレビには詳しくなくってね、それでスティーブンって誰だい?」

「天空教発信のアイドルグループ蝶巨聖のリーダーの子、イケメンで顔とルックスとスタイルが完璧でとにかく今すごく大人気なのよ。スペクトルウエーブとかガンマラインとか聞いたことない? うちの娘もお熱で近くにいるならサインとかもらえないかしら。そろそろお昼休みよね、少し早いけど時間をもらえないかしら」


「へぇ? そんなにいうのかい」

「いま仕事中だからロッカーにしまっちゃってるけど手元にスクロールデバイスがないから見せられないけど。今度ドラマの主演をするから、ぜひ見てね。あなたも彼のプロモーションを見れば見れば人気の理由は一目でわかる、だからミホさんも見なさいな」


 休憩時間を知らせるチャイムが鳴ると彼女らはバネに弾かれたように席を立ちバタバタと小走で去っていく。

 彼女らが部屋を出ていく姿を見ながらミホはつぶやいた。


「やれやれ私とそんなに年齢も変わらないってのにみんなエネルギッシュねぇ、少しばかり分けてほしいくらい。さて、アカツキからお昼の連絡は来ているかねぇ」


 ミホも席を立ちロッカーのある休憩室へと向かって部屋を出ていく。

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