戦いの足音 1
学校の授業の合間にスクロールデバイスでメールを打つアセビ。
すべての学校がオンラインで授業を一括に受けるため教師がいない。
そのため教卓はなく、大勢の生徒の座る席と正面にある大型モニターだけが設置されている白く清潔に保たれた教室。
休み時間ということもあり教室には
光を取り入れる大きな窓のそばの座席に座るアセビのもとへとヨタカがやってきて尋ねる。
「今日もお父さんとメール? アセビはお父さんと仲がいいよね」
「うん、もう宇宙に上がって船を動かしてるって」
「すごいね、船長さんか。でっかい船を操縦できるってなんかかっこいいよね。昔はすごくお給料高かったんだよね。今はコロニー間の移動も減ってあんまり仕事募集していないけど」
「詳しいねヨタカ」
「そりゃうちのいくつかの工場で中型船用の内装を作ってたから、デザイン科にも通ってるし家を継ぐ気はあるんだけど。ここ何年かですごくうちの仕事が減って大変なんだよ。今は星軍の船の改装する仕事で何とかなってるけど、生き残っている老朽艦の改装も限りがあるし、そもそも内装を撤去する作業でデザインをする発注は来ないから早く彗星を破壊してくれないと、うちの家計が先に崩壊する。従業員も使用人も減らし始めて生活を切り詰め始めてるんだから」
「星軍の発表だと再来月には決戦らしいね。あちこちのコロニーから動かせる船を集めてるって、速く彗星壊して元の生活に戻るといいね」
「今度こそだよ、私が小さいころにも彗星を破壊する決戦があったけど、彗星を一つしか破壊できなかった。本当に今度こそ壊せるのかな、また一つだけしか壊せないんじゃ」
「彗星はお互いの重力を使った潮汐力でなんとかして生きてるみたいなことを言っていた気がするから。次一つでも壊せれば、彗星は生きていけないみたいなことを言っていたよ」
「そうなんだ。なら大丈夫か、速く終わらないかなー戦争」
戦争という単語を聞き隣の席に座っていたタイホウが興味を持つ。
「なんだ、次の星軍の決戦の話か?」
「そうだよ、タイホウ君は何か知ってる?」
「いいや、親父が星軍だけど、うちは星内でも勤務だから空での話はあまり入ってこない。母さんのことでうちではあまり仕事もしないし。家ではあんまり星軍のニュースも見ない。まぁ自分で調べてるんだけど」
「そうなんだ。お父さんが乗る中型船がどんなのかわかる? 次の作戦でパイロットとして出撃するんだけど、調べた感じなんも出てこない補給船とかじゃないらしいんだけど」
「ああ、中型船か。なんか星軍が新型船を用意しているってのは知ってるけど、どんなのか全然情報がないんだよな。土星に移設された工場で改修工事されてるみたいだけど、そっちからの情報は遮断されているみたいで何も入ってこない」
「土星なんだ、クラスに誰か土星に詳しい人いなかったっけ? ヨタカみたいに宇宙に会社ある人」
「いない、かな。去年かなんかに他の星のコロニーにつてがある人はみんな帰っちゃったから」
「次の決戦が敗北したらこの星が危ないんだからそれもそうか。いや勝し」
「どうだか、今お金のある資産家はみんな地球に逃げているみたいだけど」
「逃げるならコロニーじゃないの? 彗星の目的は火星の次は地球なんでしょ?」
「住みやすいコロニーは人がいっぱいで、工業系コロニーも贅沢な暮らしはできないから。彗星が地球に来るのはまだ何年も先だしやばくなってもゲートでコロニーに逃げれる。だから少し土臭くても星が人気らしい、低い居住区レベルでも広い家に住めるから。やっぱり庭にプールやゴルフ場がないとだめなんじゃないのか」
「はー、大変なんだねお金持ちも」
「それと不確かな情報だけど、アステロイドベルトでの戦いが失敗したら星軍の家族も地球に避難させられるらしい」
「星軍の家族だけ? 他の人は置いてきぼりなの? コロニーとかにいる人は別なの?」
「他はお金さえ払えば避難できるから大丈夫じゃないか? お金がなくても星軍入隊すれば星にある星軍の寮に住めて家族を守れるから、入隊率が下がってるからこの特別報酬で人を集めようとしているんじゃないかな? 何かでつらないともう人が集まらないんじゃないか? 他のコロニーはわからない火星での入隊特典しか調べてないから」
「そっか、まぁもう再来月には決戦だし今から入隊してもって話か。ニュースでもあんまり特集されないし実感ないなぁ」
「星軍が何かしら発表すればすぐに天空教が騒ぎ始めるから。前の天空教が起こしたデモで宇宙へ物を運ぶ物資輸送路である大通りや鉄道が何か所も破壊されて、それで他の場所まで被害を受けて経済に影響が出たじゃないか。工場直轄の巨大コイルガンのマスドライバー砲の損傷暴発事件、もう記事が消されて読めなくなってたけどあれも天空教の仕業だったとか」
「もう完全にテロリストでは?」




