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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
三章 火星絶対防衛戦線
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アステロイドベルト 8

 第三世代と並ぶ数隻のシリウスをみて呟く。


「あのシリウスは量産できないのでしょうか?」

「量産はしているけど知っての通り工場は第三世代を作っているし、シリウスの改造にも人手がいる。あの感じを見るとゲートの警備が最優先らしいな、今までコロニーを守っていた第三世代も次の作戦ですべて投入されるって聞いたから。ほんとにすべてなのかは知らないけどな」


「砲弾を撃つよりビームの方が威力と速度速いんですよね」

「レーザーだクリアランスの強化版、岩も金属も溶かす奴。大昔に星に巨大な隕石が落ちるってなったときに作られたやつの設計図をシリウスに乗せられるように設計し直したらしい。あの改造シリウスが攻撃するところを一回だけ見たことがある。戦艦級に効果はあったが数を相当数揃えてもサイズ的に彗星には難しいだろうな、あくまで戦艦級は相出にできるって程度だ」


「さすがに彗星本体、月の三分の一のサイズは破壊できないんですか。でもなら彗星を守る大量の戦艦級たちを一掃とかなら……」

「それに大量の電力を使うらしくて一発撃つとしばらく充電のために連射はできないらしい、それに何よりシリウスだ耐久性も機動力もないし方針がそのままレーザー砲になっているから観測衛星とかを撃ち出すこともできない。ただ大きいだけの鈍重な老朽艦」


「熟練の船長が自分の船から離れないせいで新しく作られたシリウスには新人艦長が乗って正しく運用できず、老朽艦の方が生存率高いっていう。第三世代とかに守られているはずなのにどうしてこうも変わってしまうのでしょうかね」

「咄嗟の判断や戦ってきた感とかがあるんだろ。それに貨物船時代から使っているならどんな巨体でも手足のように扱えるんだろう」


 その後しばらくして火星ラグランジュポイントに到達する、同じようにつぶれた休憩の基地へと向かい基地の指示に従って港に停泊した。

 船が港に到着すると一緒に来ていた一隻がトラブルで遅れて到着するのをモニターで見ながら教官は席から立ち上がり荷物を持って部屋を出ていこうとする。


「よしアカツキは問題なく操縦はできるな、特にいうこともなさそうだ。次はナツヒとツヅミの二人だな、こちらの所要がすんだら元の基地に引き返す。休んでおくように」

「ツヅミさんって言うんだな、この人」

「数か月、ずっとシミュレーターを使っていましたからね」


 アカツキたちも席を立ち体を伸ばすと航行中ずっと酔い眠ったままの男を見た。


「この男、ツヅミはしばらく操縦していなかったから確認程度にしか見ないがな。元は十年以上中型船を扱ってきたベテランだ。家族を失った衝撃で精神に異常をきたし謹慎を受けていた」

「そんな男を星軍の船に乗せて大丈夫なのか? 彗星にそのまま突撃しかねないぞ?」

「今もだいぶ酔っているみたいですが?」


「アルコール分解用のナノマシンは注入してある。もう抜けているころだ、ナツヒとともに操縦席に座ってもらう。戻ってくる前に起こしておくように、俺は定期連絡だ少し廊下に出ている」


 そういって荷物を持った教官は操縦席を出ていく。


「俺らも休むか、と言っても仮眠室は夜の部の連中が寝ているし。外に自販機が置いてあったはずだ何か買うか」

「そうですね、ここは飲食禁止だからこの間に船の中でも探索してみようと思います」


 船を停止して休憩をもらったアカツキとナツヒは操縦席を出て通路を進む。

 アカツキはスクロールデバイスを広げニュースを見るとナツヒが画面をのぞき込んだ。


「何か大きなニュースはありますか?」

「とくにはなさそうだ。星軍からの発表からも時間がたっているし、コロニー圏内チャンネルも太陽系内チャンネルもいつも通りのニュースをしている。戦場に動きがない限りはもう星軍のニュースもないだろうな」


「良いニュースはないですし、流れるニュースは悪いニュースしかないですからね。どのチャンネルも天空教の入信勧誘CMくらいしか流れてませんね」

「うんざりだよ、特にこの数年は頻繁に流れるようになった。娘も怖い目にあってから天空教の施設の近くによるのを避けている。アステロイド防衛線での決戦を前にして反戦デモも増えているらしいし。星軍の基地でテロも起きてる、もううんざりだ」


「この間バラエティー番組で行っていました、いつかに備えた備蓄より明日の生活の方が大事と。居住区レベル一の人々とを対象にした調査でしたが、今の世界は貧しい人々が大半です、上がっていく税金に夢も希望もなく生きていく人々。戦争が終わってもすぐに暮らしがよくなるわけでもなく、宇宙人と和解して戦争を終わらせるべきだと」

「宇宙人なんていない、彗星は宇宙生物であってもいかなるコミュニケーションも受け付けない。二つになったデカい親玉と無数の子分がいるだけ、いつになったらわかってくれるんだ」


「わかってます。この長い戦争で皆彗星が脅威と知っているんです。星やコロニーの人も知ってはいてもいつまでたっても終わらないこの地獄にうんざりしているんですよ。それでも人類の存亡なんた大きなものより自分の幸せの方が優先されるんです」

「……悪かった、つい熱が入ってしまった。何か奢るよナツヒさん」


 自販機の前で立ち止まり二人はスクロールデバイスの画面から商品のラインナップを見ていると、別の通路からやってきたものたちに声を掛けられた。


「なら我々にも何か奢ってもらいましょうか、たかり屋なので。なぁ、アポロ君」

「自覚はあるんですねステラさん」


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