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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
三章 火星絶対防衛戦線
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アステロイドベルト 2

 アカツキのいる星軍の訓練施設では大勢の整備兵が訓練を受けていて、アカツキの前を工具を持った者たちが通り過ぎていく。

 しばらく待ち訓練時刻が終わるころになってアポロが部屋から出てくるとアカツキの方へと歩いてくる。


「訓練機の修理は終わったよ、いまステラが最終確認している。午後は問題なく使えるはずさ」

「やっとか。午前中丸々修理だったな、よっぽど使われてなかったんだな。デモ直ってよかった修理をありがとうアポロさん」


「あの機械最後に整備したのはいつだったのか、埃が溜まっていてね。固まった機械油と埃が絡まっててそれがショートしたみたいだ、基盤は掃除した他のものと変えたし中の埃も取り除いた」

「焦げ臭かったのはそれが原因か、燃えなくてよかった。顔色が悪いが大丈夫か?」


「もともとこういう顔だ、元から体が弱くてね大昔に人類統合議会が定めた宇宙活動規則では未成年や体の弱いものはいかなる理由があっても宇宙活動職ができないとなっていた。それでも私は宇宙に上がることが夢だったんだ。言ってはダメなんだろうけど、人材不足で法や規則なんて言ってられなくなったこういう時代じゃないと私は宇宙に上がれなかった。そこだけはこの戦いに感謝している。いやなことにね」

「人手不足もそれだけ深刻化してきているんだな」


「誰でも宇宙に上がれるわけではないからね。宇宙船を動かすにも知識と訓練がいる。集めて乗せるだけでは動かせない。彗星との戦いで企業の持つ貨物船の所有数も減り、戦争が始まってから星軍関係者以外に新しい乗り手も生まれていないらしいし」

「タイタンとエンケラドスとかはみんな星軍に貸し出しているものな。さて、じゃあステラさんにもお礼を言ってくる。昼は本当に奢らされるのだろうか」


「彼女は居住区レベルが低いところからきている、私もよく奢らされている。彼女はグルメで高い物を狙うから覚悟をしておいた方がいい。ちょうどいい時間だから、私は先に食堂に行っているよ」

「ああ、また後で会うかも」


 あちこちパネルの開いた訓練用の操縦席で部屋の中では白衣の女性が席に座り、並んだボタンを押したり跳ね上げたりしていた。

 ボタンを操作するたびに計器を映す画面が切り替わる。


「旧型のコンソールは、バチンバチンとこのスイッチを押す感覚が好きだね。さて、モニターもスイッチも問題なく作動している。いやーしかし掃除するのに時間がかかってしまった、基盤も焼け付いていたし火事になる手前だったよ。長年放置していたものを動かすのならせめて軽くでもいいから点検くらいしてほしいね」

「ありがとう。何であれこれで午後からは訓練に戻れそうだ」


「しかし、こうなると他のシミュレーターも埃がすごそうだな。他のも掃除しないといけないかもしれないな、アカツキさんアポロを呼んできてくれ。お昼休み中に掃除しておきたい。何度も呼び出されてはかなわないからな」

「彼なら先に食堂へと向かって行ったけど」


「なに、呼び戻してくる。掃除しないと、他の機械も壊れてくる。でもまぁいいや。まずは昼食だ、先にここの掃除の件を報告しないといけないな。午後も少し使えなくなる」


 席から立ち上がるとアカツキを置いてステラは部屋から出ていき、すぐ戻ってきた彼女は手招きをした。


「ほらほら君の奢りだ、食堂に行くぞ!」

「散らかした工具は片付けなくていいのか、というかステラさんは午後の訓練には出ないのか?」


 アカツキとステラは食堂へと向かって歩いていき、まだ座学や訓練を行っている部屋の前を通り過ぎていく。


「それなら問題ない私は教官だ、授業を受ける側ではないから大丈夫。私、若いからよく生徒と間違われるんだよね。でもそうでもなければ訓練中にフラフラと歩きまわったりなんかしないさ、ああ君はふらついていたか」

「アポロさんも?」


「彼は生徒だが私の助手だ、とはいえ彼は他より早く訓練を受けていて基礎工程は終わっている、あとは体力作りが大事な段階だ。虚弱な体質故筋肉をつけるのに苦労しているようだが、電流やナノマシンまで使って体を作っているよ。宇宙では骨の強度と筋力が落ちていくからな、彼の体の弱さは一度宇宙へと上がってしまえば地上に降りた時長いリハビリを受けなければならなくなる。筋力の低下を軽減するために貴重な燃料を消費させて作る疑似重力だって戦闘中は常に出ているわけではないし、それにあくまで筋力の低下を幾分か遅らせる程度にしかならない」

「まぁ、星軍の訓練の基礎は体力造りだからな、体が動かなければどうしようもない。宇宙服だって重いし、戦闘時は壁や天井にも疑似重力が発生する振り回されてもすぐ起き上がらないといけないしな」


「私も天に上がるために体力をつけなければならない状態でね。アステロイドベルトでの戦いには動けるすべての星軍の人間が投入される。文字通りの決戦、突破されてしまえばこの星が危ういからな。それまでに集めた新人をちゃんと使えるようにしておかなければならない。とはいえまずは宇宙船が動かせないことには始まらないからな、こうして中型船のパイロット志望のものが優先されている」

「だから自分の仕事もあるだろうに船の操縦シミュレーターの修理が優先と」


「あなたを含めてこの基地に中型船のパイロット志望は五人しかいない。それに次の作戦で必要となる人材の育成だ、君らの訓練を万全にすることがこの基地での最優先事項なんだよ」

「そう聞かされると、故障したから廊下で休んでいたことが申し訳ない感じになってきたな」


「最終的に試験に合格し決戦時までに操縦できるようになってくれればいいさ。求められるのはそれだけ」


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