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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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戦いをもたらすもの 5

 数日後事故の事情聴取を終えたアカツキたちは、別の民間船に乗って軌道エレベーターへと向かっていた。


 船は星の周りをまわる遊覧船で、分厚いガラスの向こうに人の住めるように氷塊を隕石として落とし長い年月をかけて調整された火星の姿が見えている。

 同じく離れたところではあるが白く巨大な輪は、シンギュラリティゲートは六百メートルサイズのシリウス砲艦や五百メートルサイズのカストル砲艦の姿が小さく見えた。


「長く足止めされられちまったな、何日たった?」

「大きな事故だったからね、仕方ないさ。でも僕らみんな怪我がなくてよかったよ」


「なぁ、カゼユキ。あれ、第二世代の戦艦だよな! 見たことない船だ」

「ああ、あれが第二世代宇宙艦艇か。シリウスと同じくらいの大きさだ」


 アカツキたちの乗る民間船の先に数隻の巨大な宇宙船が浮かんでいた。

 マーズアメリカコロニーへと入港するようで、曳航用の小型艦船が集まってきている。


「シリウスとはまただいぶ形が違うな、艦首砲が消えて戦艦って感じになった。装甲も分厚そうだしこれなら攻撃を耐えられるんじゃないか?」

「シリウスとカストルは輸送船の改造だからね。とにかく数と破壊力が必要と考えられたオールブレイクキャリアー。アカツキの言う通り攻撃を受け止めるためのディフェンスエクストリームフリート、戦艦級の出現で考案された生存性能を上げた宇宙船だったはず」


「強いんだよな」

「火力では以前砲艦のほうが強い。第二世代の役目は小口径砲弾をばらまき戦艦級から守ることだったはず、増えてきた戦艦級の対処だよ。当時はまばらに確認できてた程度だったけど量産も間に合いそうだね」


 シリウス砲艦とカストル砲艦と違う箇所は部分的な装甲化ではなく船体全体の装甲の強化としっかりとした兵器が乗せられ、大きな船体に大型と小型の砲塔をいくつも載せている第二世代。


「カゼユキ、あの船の名前何だっけ。デバイスで何度か読んだはずなんだけどな」

「星系中で思案されて量産化された型は大型二隻と小型三隻いたはず。でもこの大きさならベテルギウスかプロキオンだと思うね。ここにいるってことはゲートを通って冥王星コロニーの避難を手伝うのかな」


 新型の宇宙船を見てスクロールデバイスのカメラ機能で写真を撮るもの手を振るもの皆一様に窓のほうへと集まる。


「でかいな、クリアランスも多く搭載されてるな。でも後部格納庫入り口はあるし設計はあまり変わってないのか」

「設備とかはシリウスとかと変わらないはずだけど、装甲や武装の配置で幅が大きいね。後部格納庫は正面から飛んでくるデブリから安全に出入りができるようにだよ」


 巨船らとすれ違いを終え代わりにだんだんと近づいてくる火星からまっすぐ伸びている軌道エレベーター。

 船内にアナウンスが時期の火星の軌道エレベーター宇宙港へと到着することを告げ荷物をまとめ始めた。


「死者は三百人と少し、やっぱり大きな事故だったみたいだね。私らは奇跡的に飛んできた破片の当たった個所とは反対側の無事な席のある部屋にいたんだね、別の席だったと考えるとぞっとするね。それにしても船の機長さん……かわいそうだったね」


脱出ポットとともに回収され港で搬送されていく遺体の回収袋。

彼らは通常のルートで運ばれていくことはなく、移動中の通路で客船の制服を着た男性が泣き崩れる姿をアカツキたちは移動中に見た。


「一緒に乗っていた母と娘さんを失って一人残されて、すごく泣いていらして……聞いていてつらかったです」


 沈んだ声でフトは窓の外を眺め、抱き上げている火星へと手を伸ばすアセビの頬に頬ずりする。


「とりあえず、新しい家に着いたら荷ほどき進めよう」

「ご飯食べられる程度にはしたいね。最低でもリビングは使えるようにしよう」

「もうお弁当は勘弁してほしいね、私は割りばしも割るのが下手なのさ」

「家からお店までの道も見ておきますね」


 同じように事故にあったマケマケ223に乗っていた乗客やその他のコロニー観光客らとともに火星の軌道エレベーターの宇宙港へと入った。

 コロニー同様、動くバーにつかまり建物内を移動すると奥に見えたカウンターで荷物を預けて簡易的な入国手続きを済ませるとアカツキたちは火星へと降下するエレベーター乗り場へと誘導される。


 観覧車のようにいくつものゴンドラが上っては下りていく軌道エレベーター。

 ドアの開け閉めは自動だが誘導員がいて速やかに十名前後の人間が降りては入れ替わりに人が乗っていき、ひと時も止まることなくゆっくりと動いていくゴンドラに順に乗り込みエレベーターは星へと降下する。


「コロニーと違ってすぐにはつかないから休んでいて母さん」

「宇宙はもうこりごりだよ」


 順番が来てカゼユキと母が先にゴンドラへと入った。

 エレベーターに窓はなく二層に分かれたすり鉢状の空間に座席が並んでいるだけ。


 事故にあったマケマケ223に似ている外の見えない密封区間に恐れを抱くも、ぐっと腕に力を入れて座席のほうへとふわりと飛んでいく。

 荷物を持つアカツキより先にアセビを抱えたフトを先に遠しゴンドラの中へと向かう。


「フト、アセビは」

「うんおとなしいよ、宇宙が面白くて楽しいみたい」


「無重力なんて初体験だもんな」

「この子が大きくなるころにはこの戦いが終わってるといいんだけどね」


 目に映るものすべてが新しく何かをつかもうと小さな手のひらをあちこちに向けるアセビ。

 二人がゴンドラの中へと入りアカツキもゴンドラの中へと入ると分厚い扉を閉めゴンドラは火星へとむけて降下を始める。

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