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来破滅星の世界 青い星を焼き焦がすもの  作者: 七夜月 文
一章 果てより現れ戦いをもたらすもの
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流れ星 1

 暗く進んでいるのか止まっているのか静かで広く生き物の気配のない海の底のような宇宙に、艦首に巨大コイルガンを埋め込んだ巨船シリウス砲艦S1001が推進剤を大きく吹かせ全速力で進んでいた。


 随伴する同じく巨大な砲を持つカストル砲艦四隻と、小型のコールサック級巡視船四隻をひきつれ推進剤をシリウスと同じように勢いよく吹かせ暗い宇宙を進んでいた。

 九隻の艦尾から出る推進剤の濃度の高い部分が少しの間飛行機雲のような長い尾を作る。


「ヨド艦長!」

「なんだ!」


 艦隊の先頭を進むシリウスS1001、作戦指揮室。

 天井や壁面に張られたシール型のモニターがブルーライトの青白い光が部屋内を照らす巨船に見合わない狭く小さな室内で、十名前後の人間がじっと壁を埋め尽くすボタンと薄っぺらい画面を見つめていた。


「十分ほどで敵戦艦級が、射撃管制レーダー内です!」

「速度差レベル三相当、このままですと十五分ほどで追い抜きます」

「わかった。加速は十分だ、推進剤噴射停止、慣性航行に切り替えろ」


 レーダー画面と計器を交互に見ているオペレーターの報告を聞いて艦長と呼ばれた黒色の毛と白色の毛が半々ほどの髪の男、ヨドが暗い室内前方にある大型モニターに目を向ける。

 指向性のレーダー画面に映る白い点を見つめヨドは深呼吸をして、その場にいるすべてのオペレーターに聞こえるよう声を張った。


「随伴艦に戦闘準備の連絡を、観測衛星を射出させろ!」


 その一言でオペレーターたちは弾かれたように動き出す。


「射撃管制室へ、観測衛星を射出せよ! 観測衛星を射出せよ!」

「こちらS1001、観測衛星を射出します。全艦攻撃態勢。進行方向には冥王星コロニー群があります、流れ弾が向かう恐れもあり早まった行動はしないようお願いします」

「観測衛星射出に伴い艦内が揺れます、精密作業を行っているものは一度手を止めるように」


 静かに指示を待っていたオペレーターたちが一斉にキーボードとタッチパネルをたたき出す。

 ヨドが指示を出すたびにあわただしく動き出す室内でオペレーターが艦内ほかの部屋にある部署へと指示を伝え、通信先を切り替え別の部署にも指示を伝える。


「戦闘態勢だ、それと艦内の電源を切り替えろ。次弾はベトン砲弾だ。コールサックに減速を指示、俺らは攻撃後横をすり抜けてしまうからな。この斉射で仕留め損ねた場合はミサイルでの追撃をさせろ」

「総員戦闘準備、戦闘態勢から攻撃準備へ、戦闘が始まる、宇宙服に不備がないかを確認せよ。総員戦闘準備」

「シリウスS1001に随伴するコールサック全艦へ。減速を、我らが仕留めそこなった場合、核での直接攻撃を」

「管制室へ、次弾装填! 砲弾はベトン。砲弾はベトン!」

「生命維持装置及び艦内非常灯以外の電源を消灯、艦内エネルギーを主砲へと移します」


 部屋の出入り口である扉の向こうからは、電源切り替えのため空気循環装置が止まるため着こんだ宇宙服の酸素へと切り替えるようアナウンスと警報の音が漏れ聞こえてくる。


「交戦距離まで五分!」


 皆が宇宙服のヘルメットをかぶり、それぞれが酸素残量とバッテリー残量、それとその他生命維持システムを素早く確認し仕事に戻る。


「我々の作戦失敗時にカバーができるように、レーザー通信で敵の現在の位置と予測進路をコロニー防衛艦隊にも再度連絡」

「了解。通信室へ、再度、軍の秘匿回線にてコロニーへ通信を送れ」


 船の中央部から艦首へと延びる長く大きな大砲からレーダーを多く搭載した衛星が撃ち放たれ、その衝撃で船内が小さく揺れた。


「観測衛星、射出完了。レーダー起動。モニターに観測情報、移します」

「観測情報を全艦に共有」


 一番大きなモニターに映される外の映像。

 暗い宇宙に冥王星がぼんやりと浮かび上がっている。

 なおもオペレーターからの報告は続く。


「戦闘のため敵の真後ろから進路を外します。進行方向Y軸にマイナス0.002度修正、サイドスラスターX軸にコンマ五秒点火。船体回転、下部水平よし。以降指示あるまで艦首を常に敵へと向けつづけます」

「光学レンズにて視認、敵を中央モニターに移します」


 画像は拡大され画面中央に映る一つの小惑星へと寄っていく。

 艦体の速度が速いこともあり始めは小さな点だったそれは少しずつ大きくなっていく。


「全艦、攻撃準備整いました!」

「あと百二十秒で交戦距離」


 その報告を最後に、騒がしかった指揮室内は静まり返る。


「来週は孫の一歳の誕生日なんだ。早く済ませよう」






 ーーーー







 それは星系の外からやってきた。

 不自然につかず離れずの位置にあり、お互いがぶつかりあうことなく固まって動く三つの小惑星。


 巨大な岩石の塊であり星やコロニーへの被害も危ぶまれていたが、それよりも外からの訪問者に地球、火星、そして多くのラグランジュポイントに浮かぶコロニーが不可思議な動きをするそれらに興味を示し騒ぎ立った。


 小惑星の軌道が多くの居住コロニーへの被害をもたらすとして、数年の決議の果て人類統合議会は小惑星を星系外延部での破壊を決める。


 星やコロニーに宇宙を警邏する警備艇や巡視船はあるものの、その砲では小惑星を相手にするほどの火力はなく輸送船を改良し作られた巨大な砲艦。

 その砲撃で三つあるうちの先頭にある最初の小惑星を破壊する予定だった。


 小惑星を割るために改造された数千隻の砲艦による作戦時刻。

 破壊完了の結果を聞くために用意していた通信端末から聞こえてきたのは救難信号だった。


 砲艦による攻撃時に小惑星は反撃を行い作戦に参加した多くの船が予想だにしなかったことに対応できずに沈み、小惑星は星系内へと侵入しようとしていた。

 人類は今までにない脅威と戦っている。

読んでいただきありがとうございます。


物語を進めることを優先し、

推敲は章の完成時にまとめて行うため連載中は誤字脱字が多くあるかもしれません。



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