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面談前の移動



「個人面談、誰からしますか? 先に魔道工業科の方から終わらせておいたら、魔法科の皆さんは準備万端になってスムーズに事が運ぶと思いますが……」


「その提案、もらった! 遠慮なくそうさせてもらおうかな」


 綾先生は俺と顔を合わせていた。


「それじゃあ、個人面談のトップバッターは大智君から行かせてもらうよ」


「まさかの俺指名ですか……」

「遠慮はいらないって!」


 悪意なき微笑みを見せつけてくる。


 ……変に身構えてもどうしようもなさそう。ここは潔く諦めて、個人面談に一番乗りするしかなさそうだった。


「わかったよ……」

 俺はそう言うと、さっさとやってほしいオーラを顔に出した。


「乗ってくれるのね。それならよかった」

「大智くん、ほんとうに大丈夫?」

「ああ……」


 芽依に心配されたが、実際たいしたことない。むしろ自分のことを心配してほしいまである。

 やはり気になるのは課題と補習内容だ。


「ところで、魔法演説は体育館に移動するのかな?」

「うむ。芽依さんの言っている通り、体育館で行います。なので今から場所を移します」


 綾先生がやや面倒くさそうに、出入り口のドアを開けると、移動が始まった。

 体育館で魔法演説。そして、魔法演説の合間を使って個人面談が行われる。


 入学式があった日なのに、もう授業が始まっている感覚だ。

 歩き始めた俺たちは二列に並んでいた。最後尾には莉桜がひとりで歩いているが、特に気にしている様子はなかった。


「そういえば、気になるんだけど。大智くんはもし遅刻してなかったら、どこから学校に通う予定だったの?」


 質問をしてきた芽依は、俺のことが気になっていた。


「ひとつ隣の町にある、駅周辺に立っているオンボロアパートだったかな……」

「へえー。つまり……大智くんは遅刻した結果、住まいが少し豪華になっちゃったといううこと?」

「言い方はもう少し考えて欲しいところだったが、ざっくり捉えるとだいたい合ってる」

「ふーん……」

「まぁ、家具まで考慮すると、あっちはレンタルとはいえ先輩方が用意していた家具の方が何倍も便利そうではあったかな」


 素直な感想を述べる俺は、歩きながら少しずつ目線を逸らした。

 そして、目線を少し逸らしたことによって、立派に立っている桜の木がピンク色の花びらが目に映りはじめていた。

 その花びらがヒラヒラと浮遊して、浮遊したひとつが俺の鼻の上にのった。でも、すぐに風が吹いて花びらは舞い上がる。

 こうして飛ばされていく花びらを、いつまでも目で追うのは止めていた。


「花びら追いかけて、酔ったりすると大変だろうな……」

「そう? 大智君は若いんだから、もっとはしゃいでも良いのでは?」


 俺の前方、列の一番前で誘導役を担っていた綾先生がこちらに振り向く。


「そうすると、後ろの視線が怖いんですけど……」

「えっ、そんなもんなの?」

「そうですよ!」


 俺のすぐ後ろにはすずねがいる。下手なことをしなくても、何かしら弱みを握られてしまいそうだった。

 そんな心配ごとをしているうちに、体育館の出入り口についた。



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