見た目が変わる魔法の言葉
「こっちから入って、ここがスクロールを保管している場所となります」
図書館内の受付カウンターの裏手側にある、星模様が描かれている扉がある。その扉をすずねが開けると、そのまま中に入っていった。
「お邪魔します」
俺も続いて中に入った。
中に入ると、やや狭い通路に本棚があった。
本棚は全体的にはぎっしり積んである。ところどころ、本が置かれていないスペースはあるが、収納していないというよりかは未回収か未発見だと思った。
「えっとですね。これです」
すずねは一冊の本を手に持った。
表紙に、懐中電灯のイラストが描かれているスクロール。
この数日間、何かと俺を棒のように振り回した本だ。
ただ、今回見た時に違うと思ったのは、照らしゆく偽りの写し鏡。――タイトルが刻まれていたことだ。
「それで女装できるのか……?」
「あっ、女子制服の一式はそこのタンスに入っていますので、よかったら」
といいつつ、魔法でタンスの引き出しを開けた。そのまま女子制服一式を、俺のすぐ近くにあった、本が置かれていないスペースに棚に乗せた。
遠隔操作による段取りの早さが光る。すずね、的確な魔法の使い方は否めないけど……。
「まぁ、慣れてしまえば簡単ですよ。大智君はこの本をもって、自分がなりたい姿をイメージするのですよ」
そう言って、本を渡された。
その後、すずねは俺の左手首を持った。
「こうやって、魔力をお貸しします。大智君は魔法使いの素質がないので、こうしないと魔法が使えませんことを知っておいてください」
「俺って、そうだったのか……」
「もっとも、魔法の素質がなくて他人の手を借りても魔法を使えないことも多々ありますけどね。むしろ魔力注いだら魔法が発動するほうが珍しいかと」
「ふーん。そろそろ行くか」
両目を閉じた俺は、イメージする。
――女装、というよりかは、芽依の幼馴染として、のほうが連想しやすそうだな。
俺の場合だけど。
ただ、髪色はそのままのほうが良いのかな、無理に変えると負担が大きいかもしれない。
「イメージできたら本を開けて、唱えてください」
「なんて唱えるんだ?」
「呪文の理屈はさておき、アイドゥ・レナトゥスです。ちなみに何度も練習すると上達します」
「とりあえず一回で良い」
――アイドゥ・レナトゥス。
唱えた瞬間、俺は何かが変わった気がした。
身体に若干の違和感がしながらも、目を開けた。
「……これが俺なのか?」
目をパチパチさせると、たしかに変わっていた。身長が縮んでいて、すずねとさほど変わらないくらいの身長差になっていた。
「ふふふ……まるで、うっかり魔法学園に紛れ込んだかわいい幼女のようですね」
「鏡ないのか?」
「あちらの方に鏡はあります」
すずねに指図された俺は、ちょっと肌寒さを感じた。……女子制服に着替えるか。
さっさと着替えて、鏡の立て掛けの前に立った。そこで俺は目を細める。
美しい茶髪はやや短めのロングストレート。体格も男ではなく、明らかに女の子になっていた。
被っている学校指定の黒い帽子を深く被ると、ちょっとだけボーイッシュになるかとおもいきや、そこまで甘くはなかった。より幼女っぽくみえるだけだった。
一応、尼野魔法学園の女子制服は似合っている。
これが、魔法の恐ろしき力というものか。
さっくりな感想だが、俺の見た目と手足等の感覚が変わっており、まるで別人になったように思えて仕方なかった。
「……まあいいか、成功したから。それで魔法はいつ切れるんだ?」
「この魔法が解除される目安は注いだ魔力が尽きた時です。今回は十五分ほどと短めにしていますが、長時間変身することも可能ですね。ただ、今回みたいに人間を媒体源にすると効果は最大でも二十四時間、それ以上は危険が生じるので非推奨としときましょう」
何の躊躇いもなくすらすらと答えたすずねは、俺と肩を並べて満足そうにしていた。
「そんなに嬉しいことか?」
「ふふふ……乙女心はそのうち理解してくれたらですね」
「そっち方面に期待か……」
どうやら俺は、この姿の状態で何かしてくれると期待されてしまったようだ。
だが、単純な女装より悪くないな。いつか、この姿を活かせる場面に期待して。
これにて第3.5章は終わりです。
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