興味ある?
「どうですか、どうですかね?」
「感想は言わない……」
「つまり、それなりに良かったということですね」
すずねはほっとしていた。
その顔を見た俺は、静かに息を呑む。
記事の出来栄えは否定できないけど、過剰な誉め言葉は流石にいえないというさじ加減なのは確かなのだが……。
「うん、それじゃあ俺は読書しますので」
「……ところで大智君は、女装に興味はありませんか?」
今度は何だよ――!
絶対悪さすることしか考えていなさそうなすずねに対して、今すぐとんずらしたい。
「しないよ」
――と言った俺はこの場から立ち去ろうとした。
「そうですか……来週の球技大会、どうしましょうか。また魔法を暴走しちゃったら参加者全員が保健室送りに鳴っちゃうかもしれませんね……」
――!!??
明らかに演技なのだが、すずねの演技から芽依のことを心配する様子が伺えた。
たしかに芽依が球技大会で暴走して参加者に怪我でもさせたら、より面倒なことになりそうなのは目に見えている。
いやいや、おかしい。尼野魔法学園に球技大会という行事は存在していないはずだ。可能性があるとしたら、綾先生の補修で突如球技大会が設立されるくらいしかない。
「えっとだ……まだ未熟な面がありそうな芽依はほっとけないが、女装に興味はない!」
そう口にした俺。やっぱり逃げよう。
さっき本棚から持ち出した本を強く握りしめると、一刻も早く椅子に座りたかった。
「あらら……ちっぽけな嘘も見破られるし、ほんと残念ですね……」
すずねは俺についてきた。
でも、図書館だから静かにされていた。――が。
「お隣失礼しますね」
俺が椅子に座った直後、すずねにひと声かけられた。
ほんと、どこまでもついてきそうな小悪魔だ。そう思うしかない。
「俺にどんな期待をしているんだっていうの……」
「そうですね。先日大智君と回収したスクロールを完全に解明する為の手段を考えているのですよ」
「ふーん……で、なんで女装なんだ?」
「本音を言っちゃえば、ひとつ屋根の下で住んでいるとはいえ、聖沙先輩がちょっと大智君と距離があるように思えます」
「聖沙先輩……か。それは別に問題ないのでは?」
「今は問題なくとも、いずれそうとも言い切れません」
「どういうことだろ……」
「単純に、聖沙先輩の個別課題が大智君必須という状況です。個別課題はのちに本人から話してもらったほうが早いにしても、対策を打っておかないと聖沙先輩が卒業できない、なんて事態も予測できてしまいますので」
「なるほど……早めの対策というわけか……」
それで女装に繋がるのは理解できないが、あの男発言っぷりは耳から離れないのも事実無根である。
やはり、この手の問題はすずねの手を借りる事になりそうだ。
「やっと気乗りになってくれましたか?」
「う、うん……対策案だけ聞いておこうかな……」
「ずばり、どっちかですね。大智君の偽物を作りだして誤魔化すか、大智君自身が女装して仲を深めるか。スクロールを使うのは確かなんですけど」
「どっちも女装なのか……というか、俺が女装する必要あるのか?」
「女装じゃなくて幼女化でも大丈夫ですよー。まぁ……わたしが、心の闇をひとつやふたつを見て見ぬふりをしているだけですが」
「……幼女化でもオーケーということって、もはや意味が分からない」
俺はその場で立ち上がった。
読んでいた本は閉じて机の上に置いた。
「……仕方ないか。ちょっとだけだぞ」
「大智君――ありがとうございます。早速なのですが、スクロールを保管している区域へと場所を変えましょうか」
「ほーい」
好きにしろ。と言いたいところだったが、スクロールの保管区域か。
ちょっと気になるし、これで場所の説明が入るのが確実だから、学校生活が何かと充実そうだ。
すずねが立ち上がって、歩き始める。俺は黙ってすずねのあとについて行った。




