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魔法を成功させるためには



「それで、これの後始末はどうするんだよ」


 俺は芽依の元にたどり着いたとはいえ、魔法で造られた結界の中に閉じ込められていて、どうしようもなさそうな状況だった。

 しかも、芽依が魔法解除の意志を示していない。


 そして持続時間が切れたのか、俺が走って来た氷の足場はもうなくなっているし、ここからどうしたものか。


「……まさかと思うが、本当に何かやらせるつもりなのか?」

「でしゅ!」


 俺の体温でやや吹っ切れた芽依は、少し距離をとって背筋を伸ばした。


「やっぱり元の媒体がいけないんだと思ったのでしゅ。不確定な記憶じゃなくて、もっとしっかりと結び付けできる……」

「なんかの物語がかかれた本とか?」

「そう、それでしゅ。大智君はもう気づいちゃっていると思うけど、自分が持ち出したこのスクロールは、偽りを実体化させる魔法なのでしゅ」


 芽依は透明化の魔法で俺の視界から隠していた本を実体化させる。

 表紙に、懐中電灯が描かれた本を。


「偽りの実体化……」


 俺は頷く。とても興味深い。

 そして、理屈も捉えることができそうだ。そう言い切れる根本的な要因は、今回の使用者である芽依自身が身体をもって味わったから。


 あと、先日すずねと訪れたスクロール開発施設の影響もありそうだ。

 そこで懐中電灯が描かれた本を回収したのだが、何故俺の手で回収できたのかは到底理解することは出来ないでいる。


 あの時、どんなことを思ったのか。

 ただただ、本を押さえつけていた記憶しかない。


「それで、その……駄目、でしゅか?」

「ああ、実験かな。もしやりたいなら、あまり他人に迷惑が掛からなさそうな物語にしないとな」

「そうでしゅね。どんなのが良いかな?」

「うーん、綺麗な流れ星が降るやつとか……」


 ちょっとロマンティックな発想になってしまった。が、芽依はピンと来たのか、大きく縦に頷いた。


「それならひとつ、よく知っているお話があるのでしゅ」

「どんなのだ?」

「魔法を成功させる為にも、自分がしっかりと語りましょう、でしゅ」


 芽依はその場で正座した。

 俺も足を崩して、あぐらをかく。


「自分の通っていた魔法高校の図書室にしかないと聞いていたから、たぶん大智君は知らないと思うよ」

「おお、期待しようか」

「過剰にならなければ、でしゅね」


 芽依は深呼吸し、落ち着いて口を動かしはじめた。



 ――それは、墓守が神様として認知されていたひとつの物語である。


 世界規模で何度か行われた、魔法戦争の末期。

 大地は荒れ果てて、生きる者は死んでいき、希望を持った死者が生きる者を食らいつくす物騒な舞台設定。


 親は行方不明。

 村人も死に絶えていく。

 それでも、主人公の墓守は、懸命に生き続ける。


 最後まで希望を捨てずに。


 いいえ、希望というよりかは、絶望を理解していない。

 そう思わせぶりのような発言や行動をしていた。



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