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いざ、芽衣の元へ



「芽依、待ってろ!」


 俺は氷の上に乗り、全力で駆け走る。

 芽依が閉じ籠もっている魔法の結界はすぐそこだ。


「兎羽っ――今だ!」


 声を立てて指示を出すと。


「はい。あたし行きます!」

 ――風の槍が俺の頭上を通り抜けて、そよ風が吹いた。


「芽依!」


 俺は右手を懸命に伸ばす。

 目と鼻の先には、芽依がいる。芽依は魔法服を着装していて、両目は閉じていた。


「……うん?」


 ほんの少し、芽依の目が開く。

 その時だ。風の槍が魔法の結界にぶち当たり、丸い穴が開いた。


「そこだっ!」

 気合いで足を踏み込んだ。


「うおおおおー」


 華麗なる飛び込みジャンプ!

 結果は――入れた。少しでも遅れたら危うかったかもしれない。そのまま勢いよく丸い穴飛び込んだ俺は、前方にでんぐり返しする。


 これくらい、何ともない。


「よいしょ!」

 その場で起き上がって振り向く。

 直ちに穴は塞がり、後戻りは出来なくなった。


「芽依……」


 とにかく無事なのか。それが第一の不安要素であったが、芽依が俺の顔をみて、ため息を吐いた。


「えへへ……。珍しく大失敗しちゃた」


 何事もなく立ち上がると、俺の元に近づいてきた。


「でも……大智君が来てくれたから、今度は成功するかも?」

「成功って……これは魔法か? そもそも芽依は何をしようとしていたんだよ」


「それは……」

 芽依は少し困った顔をする。


 いや、困られても俺が困るだけだよ。空の色は黄金のままだし、魔法の結界はまだ解除に至って無いし、どこからどうしたら良いのか。


「……ごめんなさいでしゅ。とあるスクロールを試験的に試したいことがあって、気が付いたこうなってたの」


 芽依は頭を下げる。

 反省はしてそうだった。


「スクロールのお試しか……」

「そうでしゅ」

「どんな内容なんだ?」


「それはでしゅね……」


 芽依は少し口を紡ぐ。


「どうしたんだ?」

「えっと、大丈夫。自分がスクロールを試したのは、お母様に認められたかったから、なのでしゅ」


 俺はその言葉を聞いた途端、芽依の家族が見せた態度を思い返す。


「まだ認められてない……のか……?」

「そうでしゅ。実の家族と音信不通とはいかないよう、知り合いさんにお願いはしていたとはいえ、相変わらず態度を変えずに」

「そっか……それで、どうするつもりだったんだ?」


 芽依の目的が分かった途端、なんとなく察していた。


 先日、俺とすずねがみつけたスクロールなら、偽物とはいえ理想の母親を生み出すのはそれほど難しくないと思える。

 重士郎コレクションのひとつということもあって、芽依はスクロールの使用に失敗したのだと思われる。



「事情は理解した。だが、俺に黙ってやるな」


「ほんと、ごめんなさいでしゅ……」


 芽依の涙腺は崩壊しかけていた。俺はそっと芽依を抱きしめた。



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