足場をつくろう
「集まった木の枝……莉桜先輩は水と土が得意で、綾先生はなんだろう……炎……?」
俺はじまじまと二人の顔をみていた。それに気づいていそうで、見て見ぬ振りをする綾先生と莉桜は、すずねに視線を逸らした。
「やれやれ。やはり、今年度は他に適任者がいないのですね……」
何故か気乗りがしないすずねは、聖沙に近付いていった。
「莉桜先輩は詠唱を開始して、わたしの合図で水の魔法を使ってください。わたしは凍らせるんで凍ったら土魔法で無理矢理倒して足場にしちゃいましょう」
「ええ、わかった。というか、上手くいくの?」
「偶然ポケットに持ち合わせていた氷の魔法石を使うので、大方なんとでもなると思います。授業の合間の休み時間での隙を突いて、わたしのポケットに入れたお父様には嫉妬しちゃいますが」
「学園長には感謝しないとね」
「ですです。すべて解決してからですが」
「ところで私は?」
「綾先生はなにもしなくて大丈夫です。お昼寝でもしといてください。核爆発でも起こしたいというなら、別ですが」
「ありがたく遠慮させてもらいまーす」
綾先生は、この場で見守ることを選択する。
「えっと……先生はなにもしなくて良いのか?」
「大智君、それについてですが。……そもそも学園内の安全結界が作動した時点で、綾先生の魔力なんてほとんど残ってないでしょうが……」
「そういうことー」
……本人が納得しているなら別に気にしなくても。
そういうことにしておいて、俺はすずねの指示を待った。
「水の量、どの位かしらね」
莉桜の周囲には、水の玉がぷかぷか。
いくつも浮かせていた。
「そうですね、そこまで考えていなかったですね。では五秒後に木の枝が集まっているところへ投げつけて下さい」
「わかったわ」
「では、ほいぺち」
すずねは、聖沙の手の甲に触れさせた。
「ひゃわっ。――何よ、冷たい!」
「今です!」
聖沙のことに気を掛けないで指示を出す。それに合わせて、莉桜は水の玉を投げつけた。
すると、パチパチ音を立てて弾ける。
雷のチェーンが不自然な方向に伸び始めたのだ。
「――氷河の鞭よ、我、この大地たる磯知れに導かれたまえ」
すずねが唱えると、雷のチェーンはピタリと止まった。
ひんやりしてそうなクリスタル状。まるで雷の魔法がカッチリ凍り付いたような見た目をしており、大きな枝のように伸びていた。
ここから土魔法で無理矢理倒し込んで、道にするようだ。
俺はただ、待つのみ。
視線を芽依に向けていた。
「待ってろよ!」
我ながら、かなり意気込んでいた。
芽依のことを、まだまだわかっていなかったのは反省したい。
「それじゃあ、倒すわよ」
莉桜が魔法を唱えて、今度は土の塊を作り出した。
それもひとつ。大きめのサイズだ。
一撃で倒そうというのか。
「アタシ、無事でいられるのか?」
「お口チャックしておけば、身の保証はできるかも」
「うっ……」
苦笑いする聖沙は、両目を閉じて黙り込んだ。手元が凍り付いている影響もあるのか、我慢しているようにも思えてくる。
「気を取り直して。それっ」
――莉桜は土の塊を投げた。
クリスタル状に激突させると、クリスタル状は雷のチェーンはゆっくりと倒れていき、魔法の結界に飛び込むために必要な足場が完成した。




