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校舎の屋上へ



 今から向かう先、校舎の屋上は普段は解放されていない場所だ。

 整備予定はあるという話題は入学前に学園長から聞かされていたが、予算がないのか、メンテナンスする者がいない等の理由で、一般解放は難航しているという。

 今回は立ち入る許可が出ていなくても、綾先生がなんとかしてくれそうだ。


「この先が魔道工業科側の屋上になってるよ。足元には注意して」

「わかった!」


 屋外へと続く檻に掛けられた、銀色の南京錠が外されると、俺は階段を二段飛ばしで上がっていった。

 そして、勢いよく屋上へと飛び出していった。


「なんだ。この重圧は……」


 手が凍っているような感覚。

 足を動かしても、本当にちゃんと動いているのかわからない。

 瞬きすることすら許されないような魔法の結界を前にして、俺は刃向かうというのか。


 だが、それで良い。

 この学園を容易く壊されたりするのは御免だから。


 だから。

 俺は少し前進する。

 ほんの少しずつ前に、前へと着実に進んだ。


 この先に何がある。

 その真相を確かめるべく、屋上に踏み入れたのだから。


「……芽依? 芽依なのか?」


 その場で見上げた、俺の瞳に映りこむ。

 黄金色の魔法の結界。その中心部で、両目を閉じてうずくまっている芽依が、ほんのり涙を流しているのを――。


「芽依! 無事なのか!」


 俺は叫んだ。すると、急に重圧が薄まった。

 だが、芽依からの返事は当然のように返ってこない。


「芽依!」


 俺は芽依に近付いていく。

 ぎりぎりまで接近した。後者から落ちそうになる端くれに立って、手を伸ばす。


「届かない、なぁ……」


 ちょっとどころじゃない距離に阻まれていた。

 足元は崖っぷちで、中庭の緑が生い茂っている。これは空でも飛べなきゃ、芽依の元にはたどり着くことすらできないな。


 俺ひとりでは、諦める。

 空飛ぶ魔道具なんて持ち合わせていない。

 そもそも作ったことすらないか。


 ああ、俺はいったい。

 どんな夢でも見ているのだろうか。


 悪い夢? わかんない。

 ただ、現実から逃避したいだけかもしれない。


「……どうしたのですか。大智君、顔色が真っ青ですよ?」


 すずねが、俺の顔色をうかがう。

 俺と同じように崖っぷちに立っていたけど、単に急接近していただけか。


「俺は、俺は……」

「そんなの考えるまでもありませんよ」


 すずねは、ぴょんと。

 崖っぷちから離れていき、綾先生の元に近づいていった。



 綾先生の傍には、兎羽がいた。聖沙先輩と鷹子先輩、莉桜先輩もいる。七賢者の卵が全員この場に集まって、俺と芽依を心の奥底から心配していた。



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