午後の授業
何故そう言い切れるかというと、スクロールの認識も魔法科にしかわからないこと、魔道工学科にしかわからないこと、それぞれありそうだから。もしその通りだとして、この認識の違いを探るのは、綾先生に尋ねたほうが手っ取り早そうであるからだ。
教室で待っているとチャイムが鳴り、一限目と同じように綾先生が教室に入ってきた。
着席していた俺は、教科書を机の前に出していた。
科目は錬金座学。錬金術の基礎について書かれている。
錬金術は魔道工学の起源になっており、錬金術が発展して魔道工学という分野になったと捉えるべきか。
綾先生が黒板に書き込みを行わないで、ひたすら教科書を読み続けていた。
若干、退屈なように思えるがただの気のせい。俺は小さなあくびを抑えつつ、綾先生が重要と述べた言葉に赤線を引っ張っていった。
チャイムが鳴ると、小休憩を挟む。
結局、この時間は綾先生がチョークを握ることはなかった。
次の授業は、機械工学だ。魔道工学は一般的な工学分野についても触れる。小手先の内容だったが知っていても復習には繋がる。
そして、本日最後の授業となるのが魔道工学だ。一番俺が受けたい授業内容である。
体感としては、錬金術と機械工学の中間を取ったような感じだったが、初日から歯ごたえを感じた。
いずれの科目は綾先生とは違う、男性の先生が担当した。
こうして一日六限ある授業を終えると、俺は背筋を伸ばした。
「ふぅ……おわった!」
授業に集中してたので、非常に疲れた。合宿所に戻ってひと休みしたいところだ。
心の中でぼやきながら、俺は立ち上がると、何やら教室の出入り口が騒がしくなっていたことに気づく。
「……すみません、九蛾君はいらっしゃいませんか?」
「お嬢ちゃん、そいつはたぶんあっちのほうだぜ」
「ありがとうございます」
お礼しながら戯れる生徒を避けて、俺の元に近づいてきたのは、すずねだった。
「どうして魔道工学科の教室に?」
「うーん、ここにもいないか。ほんと何処に行ったのでしょうか」
すずねは非常に焦っていた。
「誰かいなくなったのか?」
「その……芽依さんが午後の時間ずっといなかったものでして」
「芽依が……!!?」
「わたしと兎羽が同じクラスメイトであるのに、すみません。小休憩の時間も使って芽依さんが行きそうな場所には総当たりしたのですが、どこにもいなくて」
「どこにもいないって、ことは……」
芽依は何処に行ったんだ?
その答えを見つけないと、発見は難しそう。
足元に置いていた学校指定のカバンに教科書をしまい込み、俺は直ちに廊下へと飛び出していった。
廊下には下校しようとしている生徒の面影があった。




