その場で待とう
「それで、凪原先生は何処に行ったんだ?」
部屋中にある家具をひととおり綺麗に設置し終えたことを見計らって、先輩方に尋ねる。
「綾先生の居場所ね」
俺に声に対して一番に反応したのは、莉桜という先輩。
俺のひとまわりくらい身長が小さくて、すずねより少し大きい程度。
「僕の予想でも、やっぱりお迎えじゃないのかな?」
「そうですか…………。ここにいるのが五人だから、あと二人来るということか」
「そうね。そしたらもうちょっと華やかになるかもね」
七賢者の卵がこの建物に集まるとなると、かなり賑やかそうになるのは間違いないと断言できる。それに加えて先生も入るとなると、夜も眠れなさそうだ。
それにしても、莉桜は落ち着きがある性格なのかな。
黒い一面が見え隠れするすずね、ツン全開で俺に対して好感度が低そうな聖沙、姉御肌のある鷹子先輩に、特別講師の綾先生。
どれも個性豊かなお方だ。
それに比べて、俺は個性がなんにもない気がする。
ただ、学園長からの推薦入学させてくれたというだけで、他者から見てはっきりとした特徴があるわけでもない。
「自己否定ですか?」
目の前で体育座りしている、すずねが声を掛けてきた。
「いや、そういうことは……」
「ないとは言えないっぽいですね。ここにいる女子学生が魅力的にみえる一方、俺には個性がないんだ、って」
「どうして俺の心の声が……」
直球でズバッと言われた。
まだ会って間もないすずねに言語化されてしまって、ちょっと恥ずかしい。
「大智君、それは簡単なことですよ。だって顔に出てるんですもの」
「俺の顔……?」
「顔はひとの感情が一番出るところですからね。あくまでわたし個人的偏見での解釈ですけど」
……つまり、俺の考えていることはすべてお見通しされる危険性が。
「俺の考えていることはすべてお見通しされている危険性が――わたし、そこまで野蛮なことはしませんよ?」
「そうなのか……」
いろいろツッコミたいところはあるが、ひとまず安心しておこう。と思ったが、すずねは三角座りしながらずっと携帯端末をさわっている気がする。
もしかして、何かをメモっているのか。
もしそうならば、内容次第では油断できない。
「すずねは、いま何をしてるんだ?」
「今は内緒です」
そうとだけ言って、携帯端末に集中して手を動かす。
もしも秘密にしないといけない重要な物事かだったら、すずねに気をつかうだけだし、いまはそっとしておこう。
そうこう思っているうちに、出入り口の扉が横にスライドした。




